記事

「オッパイ揉む」「女買いたい」なぜ政治家が“下品力”を競う時代になったのか 佐藤優×片山杜秀“知の巨人”対談 - 佐藤 優, 片山 杜秀

1/2

「タンカー攻撃、真犯人はイランでもアメリカでもない!?」元外務省・佐藤優の推理とは から続く

 元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者の片山杜秀氏は立て続けに『平成史』『現代に生きるファシズム』という対談書籍を出版。

 その“知の巨人”2人が丸山穂高議員の「戦争で取り返すことは賛成ですか?」発言を振り返り、政治家から失われてしまったもの、そしてそれが日本にもたらしうる悲劇について語る。(全2回の2回目/#1より続く)

元外務省主任分析官の佐藤優氏(左)と思想史研究者の片山杜秀氏

◆◆◆

「オッパイ揉む」発言でも……3回当選している丸山氏

片山 日本政治の劣化について、佐藤さんとの共著『平成史』でさんざんお話ししてきました。最近も、耳を疑いたくなるような失言が相次いでいます。北方領土・国後島にビザなし交流訪問に参加中に、衝撃発言をした丸山穂高氏には、驚きました。

 酩酊しながら、「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか?反対ですか?」「戦争しないとどうしようもなくないですか?」と語ったと報じられています。日本維新の会から除名されても、逆に居直ったのか、いまだに国会議員を続けている。

佐藤 私は彼を、松下政経塾で教えているはずなんですよ。彼が政経塾で学んでいるときに講師として行っているから。

片山 あ、そうなんですか。ご記憶はないですか?

佐藤 なんとなくはあるんです。礼儀正しくてよい青年だったと思います。

片山 彼は、東大から経産省に入り、その後、維新から大阪で出馬し、当選した政治家です。つまりはエリート官僚です。下品な言葉を平気で発するような人間には見えない。表と裏がすごくあるというわけでしょうか。

佐藤 いや、私の仮説を言います。彼は、定向進化(生物の進化は一定の方向性をもっているという考え)を遂げたんだと思います。そういう意味で、彼はすごく優秀ですよ。

彼は、「オッパイ揉む」だとか「女買いたい」だとか、そうした言葉をどうも四島でも言ったらしいけど、そうした言葉を言えば気さくな政治家だと思われると、どこかで学んでいったんだと思うんです。実際、それで3回当選したという成功体験もあります。

「ガルージン・ロシア大使が鈴木宗男さんに電話してきた」

片山 その手の発言は、彼を支持するような限られたコミュニティでは間違いなくウケていたということですね。日常的な発言だったからこそ、国後でも発してしまったということですか。

佐藤 はい。でも、これには困ってしまいました。当然、ロシア側が反応しますから。彼らはまず丸山氏の経歴を調べた。とくに小選挙区で3回も当選しているでしょう。つまりは民意の一定の支持を受けている。それから北方四島に行く代表団は政府が選んでいますから、事実上、日本政府のクリアランスも経ています。

 彼らとしては、これは酩酊したふりをしてロシアを挑発して、現在の日露関係の交渉を停滞させようとしている、日本の特殊な勢力による謀略じゃないか、というわけです。実際に、ガルージン駐日ロシア大使が鈴木宗男さんに電話してきたそうです。

片山 一体、どういう背景があるのかと探りを入れたわけですね。

佐藤 はい、でも鈴木さん、「助かったべ」と言っていた。普通なら説明しても理解してくれない。だから鈴木さんは、丸山氏は数年前に飲み屋で喧嘩をして、人の手を噛んだことがあると伝えたそうです。

片山 ああ、そういう報道を見ました。酒に酔った勢いで一般男性と口論になったうえ、この男性の手に噛みついて警察に任意で事情聴取されたという話でした。

佐藤 それです。鈴木さんが、丸山氏は一般人に噛みついたと言ったら、ロシア側は、そんなに激しい論戦をしたんですか、と勘違いした。そうではなくて物理的に手に噛みついたと説明すると、ようやく彼らも理解した。丸山氏は、正常な大人の行動範囲からかなり外れている男性だ、と。

片山 なるほど丸山氏のケースは特異で、政治的な背景は何もないことがわかったんですね。

佐藤 はい。見ず知らずの人と口論して居酒屋で噛みついた菊の紋章の国会議員のバッジつけた人間は、なかなかいない。憲政史上初めてじゃないかな。だから、ロシアを説得できた。

片山 レトリックとしての「噛みつく」はあっても、本当に噛みついた政治家なり、思想家なりは記憶にありません。でも、今回は大事にならなかったといっても、そういう人間が少なくとも3度は選挙で選ばれたわけでしょう。

 平成初期に小選挙区制度を導入して二大政党制を夢見たわけだけど、結局、それが上手くいかないことがわかってきました。日本だけでなく、モデルとなったイギリスでも、機能しなくなっている。

 日本では二大政党制が崩れていって、小さな党がたくさんできつつある。そうした政治風土から、限られた人たちを相手にしてウケるような形で、特異な政治家が輩出しているという見方もできます。

あわせて読みたい

「丸山穂高」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    小島慶子氏の旭日旗批判は筋違い

    和田政宗

  2. 2

    iPhone8~11 今買うべきはどれか

    S-MAX

  3. 3

    竹本氏にIT大臣ムリ 投資家断言

    内藤忍

  4. 4

    中国の無人コンビニが失敗した訳

    文春オンライン

  5. 5

    北の日本製レーダー 韓国に疑念

    NEWSポストセブン

  6. 6

    安倍政権下での改憲反対は言い訳

    小林よしのり

  7. 7

    日本車が変えたスリランカ象文化

    にしゃんた

  8. 8

    進次郎氏の美辞麗句で小池氏想起

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    宮城県が安重根記念碑の看板撤去

    和田政宗

  10. 10

    日韓関係悪化は日本のチャンス

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。