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世界で稼ぐエリートが教養を学ぶ真の意味

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■国際社会で必要な教養とは

ビジネスで海外の人とやりとりするときには、ある程度の教養が必要だということはよくいわれます。

「自国の歴史については知っておくべきだ」
「世界的に話題になった映画くらいは見ておくべきだ」

こんなアドバイスを見聞きしたことがある人は少なくないでしょう。

このようなアドバイスは、「バックグラウンドが異なる人同士がスムーズにコミュニケーションをとるために」活用できる知識があるとよい、というところに真意があるはずです。

たとえば、絵画の知識をたくさん身につけて「この絵はピカソの『青の時代』の作品だ」ということがわかるようになっても、その知識を介して他者とコミュニケーションを深めることができないのであれば、「教養」という観点ではあまり意味がないといえるでしょう。

逆にいえば、さほど詳しい知識がなくても、関心を示す態度や、意識的にコミュニケーションをとって関係性を深めるというスタンスがあれば問題ないとも考えられます。

■日本人同士で群れてしまうのはもったいない

これに関連してもう一つ、筆者(柳川)がF1レースの関係者の方から聞いた話も紹介したいと思います。

彼は、「日本企業はF1でスポンサーになることの意味を正しく理解できていない」と強く主張していました。

みなさんは、日本企業がF1のスポンサーになる意味はどんな点にあると思いますか?

「車体にロゴが貼りつけられれば宣伝になる」
「ブランドイメージが上がる」

多くの人が想像するのは、こういったメリットではないかと思います。

しかし、本当に重要なメリットは、まったく別のところにあるのだそうです。

F1のスポンサーになると、現地でイベントを開催したりブースを持ったりでき、それらのイベントやブースには、世界中の企業から人が集まります。そこでさまざまな出会いがあり、多くのビジネスチャンスが生まれるのです。

そして海外企業がF1のスポンサーになる理由は、まさに「ビジネスチャンスを作ること」なのだといいます。

しかしF1スポンサーとなった日本企業には、ブースの中で日本人同士が集まっている姿ばかりが見られることも多かったようです。

「せっかくのチャンスを生かせず、多くのスポンサーが非常にもったいないことをしている」という話を聞いて、なるほどと思ったものです。

■オープンイノベーションに必要な力

ヨーロッパはもともと地続きで異なる民族が共生する社会であり、異文化の人同士が会話することを前提として、社会が組み立てられてきた面があります。

アートを使ってコミュニケーションをとるという考え方や、F1のスポンサーになることが世界中の企業とのコミュニケーションのチャンスだという捉え方は、ヨーロッパ社会が培ってきた仕掛けや工夫が背景にあるのかもしれません。

最近では「オープンイノベーション」という言葉が企業の重要な戦略として使われることが多くなりました。自社内で閉じた形で開発を行って、イノベーションを起こそうとするのではなく、社外の人や企業と積極的に交流してイノベーションを起こそうという考え方です。

ヨーロッパに見られる姿勢や文化は、オープンイノベーションを実現させていくうえで大きな強みになりうるものです。

この点、日本は同質性が高い社会ということもあり、異文化の人とコミュニケーションする重要性やそのための工夫に対して、比較的無頓着なところがあったように思います。

専門を異にする人と協働し、建設的な議論をし、オープンイノベーションを拡大させていくためにも、その「一つ手前」の話として、異文化の人とコミュニケーションするための工夫について考えてみることも大切ではないかと思います。

(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授 藤垣 裕子、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 柳川 範之 写真=iStock.com)

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