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【緊急企画】教育虐待への予防接種としての『中学受験「必笑法」』一部公開

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いま「教育虐待」という言葉が注目されています。現在名古屋地裁では、教育熱心な父親が中学受験生の息子を刺し殺してしまった事件の公判が開かれていることもあり、いま特に中学受験における教育虐待が話題になっているようです。さきほどまで私も傍聴していました。いたたまれない気持ちになります。

7月12日に新刊『ルポ教育虐待』が出ることもあり、私も連日のように各種メディアからの取材を受けています。そこでよく聞かれるのが「どうやったら教育虐待は防げるのでしょうか」という問いです。そこで拙著『中学受験「必笑法」』の一部をここに公開することにしました。

はっきり言ってしまえば、教育虐待と中学受験について長年取材してきた経験から、中学受験で教育虐待の悲劇を起こさないための「予防接種」として書いた本です。もしかしたら、中学受験当事者にとっては読んでいてちょっぴりチクッと心が痛く感じることがあるかもしれません。予防接種ですから。でも親がその痛みと向き合わないと、子供がもっと痛い思いをするかもしれません。

少しでも役に立つと感じたら、少しでも悲劇を減らすために、シェアをお願いします。

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中学受験をやめたほうがいい親の特徴

 中学受験は両刃の剣。やり方を間違えると親子を壊す凶器にもなります。

 中学受験の最悪のシナリオとは、全滅することではありません。途中で子供や親が壊れてしまうことです。

 親子を壊すいちばんの原因となるのが、「全滅したらすべてが水の泡」だとか「第一志望に合格しなければ意味がない」というような「ゼロか百か思考」です。

 ちょっとでもつまずいたとたんに不安に振り回されるようになり、冷静な判断ができなくなるのです。気付いたときには親も子もボロボロ。そこまでのリスクを冒して中学受験をする意味はどこにもありません。

「うちの子は中学受験に向いていなかった」「これ以上やっても苦しめてしまうだけかと思って」と、中学受験を途中離脱する家庭もあります。熟慮のうえのことならば、それもきっと正しい選択です。

 ただ、ひとつだけひっかかります。右記のような表現だと、「子供が中学受験に耐えられなかった」というニュアンスが強く感じられます。でも実際は、心が折れてしまったのは子供ではなくて親のほうではないかと思うケースが、圧倒的に多いのです。

 塾に通い、家でも毎日何時間も勉強し、週末にはテストを受け、その容赦のない結果が送りつけられるという生活に最初から慣れている子供などいるわけがありません。

 ふがいないわが子を見て、多くの親は胸を焦がします。がんばってほしいという応援の気持ちとは裏腹に、口を突いて出る言葉は罵声だったりします。そんな自分に嫌気がさして、「もうやめたい」と思うのではないでしょうか。

 それを子供のせいにしてはいけません。

 子供の心が折れてしまいそうなら、本人とよく話し合い、中学受験をやめるという選択も大いにありです。でも親が勝手に戦線離脱してしまったとしたら、子供に与える傷の深さは計り知れません。

 世間一般にある「中学受験残酷物語」のイメージは、このような親子から生まれたのではないかと思います。でも実際は中学受験が悪いのではなく、やり方が悪いのです。

「中学受験必笑法」の奥義は、極端な言い方をすれば、「たとえ全滅しても『やって良かった』と思える境地」に至ることです。

 それができれば逆に、全滅のリスクは限りなくゼロに近づけることができますし、「納得できる合格」を手にしてその学校に堂々と通い、「この学校に来られて本当に良かった」と思うことができるようになるはずです。そうすればその中学受験は大成功です。

 ではここで、中学受験を大成功で終えるために重要な、親の心構えを5つ紹介しましょう。

●中学受験生の親がもつべき心構え(1)

努力が報われないこともあるという現実を受け入れる

 どんなに優秀な子がどんなに努力したって必ず第一志望に合格できるとは言い切れないのが中学受験。その現実を受け入れる覚悟をまず親自身がもつこと。それが中学受験を志す子の親が最初にすべきことです。

 実際、中学受験において、第一志望に合格できるのは3割にも満たないといわれています。さらにその前提として、小4、小5、小6と学年が上がり、模試を経験するなかで、当初思い描いていた超難関校をそっとあきらめ、現実的に手の届く可能性のある学校を実際の第一志望にするケースは膨大にあるはずです。

 ある私立中高一貫校の教員は、ため息交じりに教えてくれました。

「入学するなり、本校に対する不満ばかり言う保護者がいました。どうもうちが第一志望ではなかったらしいんですね。親がそうなら子もそうなる。親子で散々本校の悪口を言った挙げ句、5月には地元の公立中学に転校してしまいました」

 親が悪口を言う学校に毎日通わなければならない子供の気持ちを想像してみてください。胸の痛みを紛らわすために、親といっしょになってせっかく合格した学校を否定したのではないでしょうか。転校すればその傷は癒えるのでしょうか。だといいのですが……。

 これを「第二志望でも納得できないという病」と呼びます。

 思春期前のこの時期には、子供は自分の価値観よりも親の価値観を通して世の中を見ています。それが絶対的な価値観であると信じて疑いません。自分の努力の結果が親を落胆させるものだったとしたら、子供の自己肯定感は下がります。それが中学受験の大きなリスクのひとつです。

 逆に言えば、親が、子の努力を評価し、どんな結果であろうとたたえることができれば、子供の自己肯定感の低下は阻止できます。

 結果がどうであれ、中学受験という経験を「大変だったけれど良い経験」として心に刻むか、「つらいだけの残酷な経験」として心に刻むかは、親の心構え次第なのです。

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