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フードバンク山梨訪問記 ~配達先ファイルと自己責任論~

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2019年7月3日、認定NPO法人「フードバンク山梨」を訪問しました。「フードバンク山梨」は、第6回エクセレントNPO大賞「課題解決力賞」を受賞されました。今回は、同賞に協賛してくださっている日本生命、野村HD、SCSK、そして共催の毎日新聞社の総勢10名が参加しました。

参加者は、「フードバンク山梨」の活動や貧困問題について勉強した後、近くの倉庫で、食品の仕分けと箱詰めのボランティアを体験しました。箱詰めの際に、配達先の家庭のプロフィールを見ながら、それぞれの家庭に合う食糧を詰めてゆきました。各家庭の事情に驚きながら作業をしましたが、時間が経つのも忘れ作業に没頭されていました。皆さん気持ちの良い汗をかいたと思います。

1. 「フードバンク山梨」とは ~一人ボランティアから始まった~

「フードバンク山梨」は、企業や市民などから、賞味期限内でまだ安全に食べられるのに、箱が壊れた・印字が薄くなった等で販売できない食品や消費しきれない食品の寄贈を受け、生活困窮者や施設・団体などに無償で配布しています。

行政機関との連携により食料支援が必要な生活困窮者へ定期的に食品を届ける「食のセーフティネット事業」を中心に、最近では、子どもの貧困、乳幼児の貧困問題に着手すべく、活動を展開しています。

「フードバンク山梨」の活動は、代表の米山けい子さんの“一人ボランティア”から始まりました。前職を退職後、何かできることがないかと模索し、賞味期限内で、安全なのに破棄されてしまう食品を集め、自宅を倉庫代わりにして、地域の福祉施設に送る活動が最初だったそうです。

そして、活動を続ける中で、様々な問題が見えてきたそうです。ひとつは、食品ロス問題です。防災品、中身には問題がないが包装に破損がある食品、贈答品など年間646トンの食品が、未だ食べられるのに、捨てられていることでした。

そして、もうひとつは貧困問題でした。ある日、米山さんに連絡が入りました。明日の食事を確保するのも大変で、助けて欲しいというものでした。訪問すると二階建ての家で、車もあります。ですが事情はそうした外見とは異なりました。

依頼主の方は、妻の介護のために自営業を休業したのですが、年齢的に再開が困難になり、生活困窮に陥っていました。電気も止められる中、寒い部屋の中で、コンロでおかゆを焚いていたそうです。一見、普通に見える家ですが、実は困窮に陥っている家庭は、他にもあるのではないかと思い、開始したのが、貧困に直面する家庭に食品を配達する活動でした。

2. 子供の貧困問題へ

活動を進めてゆく中で、さらに見えてきた課題が「子どもの貧困」でした。最近でこそ「子どもの貧困」問題がメディアで取り上げられるようになっていますが、まだまだ社会的な認識は薄いようです。しかし、現実には、280万人、すなわち7人に1人の子どもが貧困に直面し、満足に食事ができない状況に陥っています。

山梨県も例外ではなかったそうです。シングルマザーの家庭で、お母さんは介護やスーパーの仕事で朝から晩まで働き続け、子ども手当をもらっても、家賃や食費を賄いきることができず、困窮状態に陥っていたそうです。そうした家庭に、フードバンクの車ではなく、宅配便で、そっと食品の入った箱を届けます。2019年現在、657世帯、1366人が「こども支援プロジェクト」のサービスを受けています。

また、無料学習塾も始めました。ここでは、勉強した後に、暖かいご飯も提供され、皆で食卓を囲みます。

また、乳幼児のための支援活動も始めました。これは、家庭や専門家へのヒアリングから生まれた活動です。乳児を抱えた母親が、相談相手もなく、途方にくれている状況が明らかになりました。そこで、この問題に対応するために「乳児応援プロジェクト」を開始しました。ミルクやおむつの無料配布に加え、医師相談、歯科検診、弁護士相談サービスを提供し、育児と生活を支えるための支援をしています。

3. 活動を支える仕組み

「フードバンク山梨」の活動を支えるためには、多くの関係者との連携とそれを効果的に機能させるための仕組みが必要になります。

「多様な主体との連携」

山梨県内の自治体、社会福祉協議会、ソーシャルワーカー、学校、企業と連携を組んでおり、その輪は確実に広がっています。

例えば、子どもたちや各家庭の状況を把握したり、食事を届けるためには、行政、社会福祉協議会、学校の協力が必要になります。必要な家庭に、法律や条例に触ることなく、適切に食品を届けるためにはこうした公的機関との連携が不可欠なのです。

また、学校にアンケート調査を行い、現場の情報を収集・分析しています。こうした調査や情報収集を丁寧に行うことで、「子ども支援プロジェクト」や「乳幼児応援プロジェクト」が生まれ、日々、改善が加えられています。

「フードドライブ集荷拠点」

また、食品を企業や各家庭から集めるための拠点も必要になります。あまり遠方では届けることも難しくなります。そこで、県内の市役所や社会福祉協議会、学校の協力を得て、45か所に集荷拠点を作りました。

「企業、市民の参加」

地域の企業や市民の皆さんに、食品の寄付だけでなく、仕分けや箱詰めのボランティア、子ども食堂やバーベキューなどへの参加を通じて子どもと接する機会を積極的に作っています。こうして、フードバンクの存在や身近なところに潜む貧困問題に関心を持ち、共に考え、参加してもらう機会を作っています。それは、子どもたちだけでなく、参加した人々の成長にも通じることでしょう。

「政策提言活動」

また、フードロス、貧困問題は全国に広がる社会問題です。また、この活動を次世代にもつなげてゆくためには、全国的な仕組みを作る必要があると、米山さんは考えました。そこで、作られたのが全国フードバンク推進協議会です。現在、全国28の団体が加盟し、議会に対する政策提言活動などを行っています。食品ロスに対する認識を高め、より多くの企業や個人が参加しやすい制度的な環境作り、フードバンクの活動環境の整備など、制度的課題は山積されています。

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