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子が従わないから刺し殺す51歳父の愛情 "子供のため"暴力振るう親の言い分

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子どもを自分の思い通りにしたいという支配欲求

 佐竹被告の「受験勉強で言うことを聞かないから刺した」という供述からは、子どもを自分の思い通りにしたいという支配欲求がうかがえる。

 このような支配欲求を親が抱く理由として、利得、自己愛、「攻撃者との同一視」の3つが考えられる。

 まず、利得だが、これは非常にわかりやすい。多いのは、子どもに将来の高収入を期待する親である。わが子が「いい学校」「いい会社」に入ることを望むのも、それによって高収入が得られるはずと思っているからだろう。

 親の自己愛、とくに傷ついた自己愛も、親が支配欲求を抱く重要な動機になる。なぜかといえば、傷ついた自己愛、そしてそれによる敗北感を抱えている親ほど、子どもを利用して、自分の果たせなかった夢をかなえようとするからだ。

 佐竹被告も、その1人のように見える。高校卒業後は大学に進学せず、飲食店などに勤務し、逮捕当時はトラックの運転手として働いていたということなので、中高一貫の有名進学校に入ったものの、その後の学歴についてはコンプレックスにさいなまれていたのではないか。

人生の敗北・劣等感を子どもにぶつける毒親たち

 このように傷ついた自己愛と敗北感を抱えている親ほど、その反動で自分がかなえられなかった夢を子どもに実現させようとする。

 これは、親が自分の人生で味わった敗北感を子どもの成功によって払拭し、傷ついた自己愛を修復するためだろう。いわば敗者復活のために子どもに代理戦争を戦わせるわけだが、親が子供の希望や適性を無視して自分の夢を子どもに押しつけると、不幸な結果を招きかねない。

 親が支配欲求を抱く3つ目の動機として、「攻撃者との同一視」を挙げておきたい。これは、自分の胸中に不安や恐怖などをかき立てた人物の攻撃を模倣して、自らの屈辱的な体験を乗り越えようとする防衛メカニズムであり、フロイトの娘、アンナ・フロイトが見いだした(『自我と防衛』)。

 このメカニズムは、さまざまな場面で働く。たとえば、学校の運動部で「鍛えるため」という名目で先輩からいじめに近いしごきを受けた人が、自分が先輩の立場になった途端、今度は後輩に同じことを繰り返す。

 「攻撃者との同一視」は、親子の間でも起こりうる。子どもの頃に親から虐待を受け、「あんな親にはなりたくない」と思っていたのに、自分が親になると、自分が受けたのと同様の虐待をわが子に加える。

 教育虐待をする親の話を聞くと、親自身が「子どもの頃に勉強しないとたたかれた」とか「成績が下がると罵倒された」とかいう経験の持ち主であることが多い。そういう話を聞くたびに、「自分がされて嫌だったのなら、同じことを子どもにしなければいいのに」と私は思う。だが、残念ながら、そんな理屈は通用しないようだ。

 むしろ、「自分は理不尽な目に遭い、つらい思いをした」という被害者意識が強いほど、自分と同じような経験を子どもに味わわせようとする。親自身が辛抱した経験によって、子どもへの支配欲求を正当化するのだ。

「虐待は愛の証し」という価値観で自己正当化

 何よりも厄介なのは、④自分は正しいという信念である。もちろん、子どもを虐待している自覚などない。

 こうした信念は、先ほど取り上げた勇一郎被告にも認められる。勇一郎被告は、警察の取り調べで「しつけで悪いとは思っていない」と供述したようだが、おそらく本音だろう。

筆者の精神科医の片田珠美氏が今月上梓する『子どもを攻撃せずにはいられない親 』(PHP新書)

 死に至らしめるほどの暴力を「しつけ」と称するのは、理解に苦しむし、責任逃れのための詭弁ではないかと勘繰りたくなる。だが、虐待の加害者のなかには、虐待を愛情の証しとみなしていて、「愛しているから、あんなことをした」と話す者が少なくない。

 勇一郎被告も、「虐待は愛の証し」という価値観の持ち主だったのではないか。このような愛情と虐待の混同は、虐待の加害者にしばしば認められ、自己正当化のために使われる。自己正当化によって、自分は正しいと思い込んでいるからこそ、あれだけ激しい暴力を子どもに加えるのだろう。

 こうした自己正当化は、教育虐待をする親にとくに強いように見受けられる。子どもを罵倒するのも、暴力を振るうのも、子どもの将来のためだと思っている。当然、自分が悪かったとも間違っていたとも思わないし、決して謝らない。

 教育熱心な親ほど、教育虐待に走りやすい。そのことを肝に銘じ、4つの特徴が自分自身にもあるのではないかと親はわが身を振り返らなければならない。そして、子どもが一定の年齢以上になったら、親と子は別人格と割り切るべきである。

(写真=iStock.com)

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