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対韓国輸出規制がえぐりだした日本の国際分業での優位性

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(1) 顕在化したオンリーワンの日本の強み

相互依存が深く絡み合う国際分業において、希少性の重要性が如実になっている。米中貿易摩擦では、半導体設計における必須技術を提供するアームとの取引が停止されることにより、ファーウェイの新製品開発は著しく困難になっている。

安倍政権の対韓国通商姿勢変化

また、安倍政権は半導体と有機EL生産に必須のフッ素系2素材(フッ化ポリイミド、フッ化水素)とレジストの3品目の韓国に対する輸出優遇措置を撤廃した。元徴用工問題で韓国政府に対応を促すのが狙いで、韓国の対応次第では輸出規制に結び付く。第二、第三の輸出規制対象品目の拡大もあり得る。フッ素系2素材やレジストは日本が世界シェアの大半を占め、その調達ができないと生産ラインが止まってしまう。韓国の生産ラインが止まれば日本の他の部品や材料の販売がダメージを受け、被害は日本に返ってくる懸念はある。

しかし韓国での生産が滞れば、競合する台湾、中国企業がそのシェアを奪い、そちらで日本の素材部品企業の追加需要が発生する。中国と伍し世界最大級の半導体、スマホ生産国である韓国のボトルネックを、日本のサプライ(素材・部品・機械装置など)が抑えている現実が浮き彫りになった。スマホ、テレビ、パソコン、液晶、半導体などの最先端ハイテクの生産集積は、世界で唯一北東アジアのみに存在しているが、その理由は日本が大半のサプライを供給しているからで、要(カナメ)は日本なのである。韓国・台湾・中国の製品は他国で代替が効くが、日本のサプライはオンリーワンでそれができない。

希少性は将来の価格設定を有利にし、いずれ収益力に結実する。スマホ、半導体等での価格競争で負けた日本は、その土台をなす無数のサプライ領域で技術・品質優位の希少性、オンリーワンの地位を獲得しているのだ。この希少性は5G、IoT時代の製品開発でますます威力を発揮する。日本の国際分業上の優位性が、顕著になっていくだろう。

主張し始める日本、その背景にハイテクバーゲニングパワー

トランプ氏のみならず、とうとう日本も自由貿易に背を向けたという驚きと失望、それは大きな副作用を生むという恐れが喧伝されている。WSJ紙は「貿易に政治を絡ませる日本の決断は、日本の国家戦略の劇的なシフトを意味する。・・・日本は第2次大戦後に主権を回復して以降、ルールに基づく多国間国際システムの支持者として特に信頼できる存在だった。その日本が旧来の体制の制約から抜け出したがっていることが示唆するのは―日本の観点から見れば―トランプ時代とは移行期であり、一時的な幕あいの出来事ではないということだ。」(7月2日付WSJ紙「Trump Goes to Japan and Japan to him」ウォルター・ラッセル・ミード氏)との論説を掲載している。

WSJ紙が言うようにこれが歴史的なものか否かは、即断できない。日本政府は、韓国に与えていた通商上の優遇措置を撤廃しただけで、WTOのルールの下での変更に過ぎないと説明している。しかし(十分な正当性があるとはいえ)日本政府が政治的不満を経済的制裁・恫喝によって解決しようとしたのは戦後初めてであり、日本が主張し始めたと、対外的に受け取られることは必至であろう。

このように政治的意味合いも大事だが、差し当たってより重要な事実は、日本が相手国を経済的に恫喝できる立場を確立している、ということである。日米貿易摩擦、長期円高以降、日本は海外からの経済恫喝と圧力に屈し続けてきた。その日本がハイテク技術において、圧倒的バーゲニングパワーを確立しているのである。いずれ市場はそのことの持つ大きな意味を思い知らされるであろう。

(2) 牧歌的20世紀の国際分業

WSJ紙でウォルター・ラッセル・ミード氏が論ずるように、トランプ政権の一国主義的政策が一時的なものか、それとも多国間の国際秩序の転換期を意味するのか、は極めて重要な論点である。武者リサーチは国際経済の現実は、牧歌的自由貿易論の下での国際秩序からどんどん遠ざかっている、と考えてきた。

米国は自由貿易と管理貿易のダブルスタンダード

レーガン・ブッシュ・クリントン時代の日本叩き、その理論的背景をなした戦略的通商論は、到底自由主義といえる代物ではない。日本がWTOに提訴するなど対抗せず、泣き寝入りしたから米国は自由貿易と管理貿易のダブルスタンダードを続けることができた。そしてその躍進が不公正な手段の塊によってなされたとはいえ、顕著に台頭した中国に対しても、政治的恫喝により米国の主張を受け入れさせようとしている。なぜ米国はダブルスタンダードを求めざるを得ないのだろうか、そして米国国益の観点からダブルスタンダードは正当なのだろうか。

そのためには、依然としてエコノミストやジャーナリストを支配している古典的牧歌的自由貿易の前提がすっかり変わっていることを知らなければならない。国際分業の在り方が根本から変わっているのである。

自由貿易が機能した20世紀先進国の世界

20世紀までの国際分業の決定要素は単位労働コストと為替であつた。日本が米国に勝ったのも、日本が韓台中に負けたのも、それが主たる理由であった。それは水平分業、つまりお互いに同じ製品分野を持っている場合に成り立つ。自由貿易の経済学では競争する各国が比較優位産業に特化することになり、それはwin-win関係をもたらすと想定されている。

比較優位の考え方による貿易理論は19世紀の英国の経済学者、デビッド・リカードが確立した。リカードは、仮に英国がポルトガルよりも毛織物生産とワインの生産の両方で優れている(絶対優位)としても、英国は毛織物生産に特化し、ワインはポルトガルに任せてお互いに貿易したほうがよいと主張した。労働者1人当たりが生産できる毛織物の量が英国で4トン、ポルトガルで1トンとし、ワインの場合は英国が3キロリットル、ポルトガルが2キロリットルだとして考えてみる。労働者の数は英国とポルトガルのどちらも3万人ずつと仮定する。もしどちらの国も毛織物に2万人、ワインに1万人の労働者を振り分けると、両国合わせた生産量は毛織物が10万トン、ワインが5万キロリットルになる。一方、英国は3万人全員が毛織物、ポルトガルは全員がワイン生産に従事すると、両国合わせた生産量は毛織物が12万トン、ワインが6万キロリットルまで増える。お互いに毛織物とワインを貿易取引すれば両国とも豊かになれる。

それでは生産性の高いイギリスが生産性の低いポルトガルから輸入するメリットはどこにあるのか、それはポルトガルの賃金または通貨が安いことにより、自国で作るよりは安く手に入るからである。イギリスとの毛織物の価格競争の結果、生産性が1/4のポルトガルは賃金をイギリスの1/4まで引き下げられているはずである。イギリスは生産性が自国の2/3しかないポルトガルからワインを輸入する、なぜならポルトガルの賃金は1/4なので、それでも自国で作るより安価だから。

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