- 2019年07月04日 10:29
映画「スパイダーマン」に学ぶ子育てのヒント
「スパイダーマン」の映画を観たことがあるでしょうか。いま最新版が上映され始めたばかりですよね。最新版は私はまだ観ていないのですが、実は「スパイダーマン」という映画には、子育てのヒント、特に思春期の子育てのヒントが存分に盛り込まれているんです。
たくさんのバージョンがありますが、共通するプロットはだいたいこうです。
両親を亡くし叔父と叔母に育てられた科学オタクの男子高校生ピーターが、特殊なクモに咬まれたことにより驚異的な身体能力を手に入れます。万能感に満たされ、持て余す力を利己的に使ってしまいます。親以上の愛情を注いで育ててくれた叔父や叔母にも、反抗的な態度を示すようになります。叔父と叔母は、ピーターの葛藤までをも察し、受け止め、一定の距離を保ちつつ見守ります。
ある日、ピーターは強盗の現場を見かけます。特殊能力があれば簡単に捕まえることができるにもかかわらず、「自分の知ったことではない」と、強盗を見逃します。すると、たまたまそこに通りかかった叔父が、強盗を引き止め、たしなめようとします。しかし撃たれてしまいます。
叔父は身をもって、ひととしてあるべき姿をピーターに見せました。息を引き取る直前ピーターの腕のなかで叔父は、「大きな力をもつ者には、大きな責任が伴う」と、ピーターの目を見て言います。「ノブレス・オブリージュ(高貴なる義務)」です。
ピーターは自分のもつ大きな力をどのように使うべきなのかを考え、葛藤します。自分が身につけてしまった強大な能力に圧倒され、「こんな能力なんてなかったらいい」のにと苦しみます。
しかしそんな矢先に、一方的に恋い焦がれる憧れの同級生メリー・ジェーンの身に危機がおよびます。愛するひとを守るため、ピーターは勇気を奮い立たせて特殊能力を全開します。特殊能力以上の力を発揮して戦います。
死闘の末に、かろうじて愛するひとを守ります。しかしそこで、ピーターは気づくのです。特殊能力をもたないひとたちも、自分と同じ必死な思いで、大切なひとを愛し、守って、宇宙が成り立っていることに。そしてそのいとおしい宇宙を、自分なりの方法で、守りたいと思うようになります。
たった一人の誰かを愛する経験が、頭でっかちで弱虫な男の子を、正真正銘の正義の味方へと変えたのです。この奇跡は、どんな男の子にも起こることだと私は思います(もちろん女の子にも)。
21世紀の子供たちは、親世代にとっては「未知の力」を使いこなさなければなりません。親たちはその「未知の力」の使い方を子供に教えてやることはできません。まさにスパイダーマンです。
でも、ピーターの叔父や叔母がしたように、ありのままのわが子を認め、無限の愛で安心感を与え、ひととしてあるべき姿を見せさえれば、子供たちは必要に応じて自ら「未知の力」を身につけ、その正しい使い方を見出すはずです。
年ごろの子供を育てていると、どうしてもっと勉強しないのかしらとか、どうしていつまでたってもだらしないのかしらとか、いい加減やる気を出してほしいとか、いろいろ思ってしまうことがありますが、そうやってじらされるのもいわば、「演出」と同じです。
スパイダーマンが悪戦苦闘しながらやっと敵を倒したと思って油断したらまだ敵がくたばっていなくて最後にもう一踏ん張り戦わなければいけないことになり、映画のストーリーに厚みを加えるのと同じです。
わが子の姿にじれったさを感じたら、これも子育てというストーリーを盛り上げるための演出なのだと思って、ワクワクハラハラ見守りましょう。
端で見ていると、ハラハラドキドキするでしょうが、彼らもそれぞれに必死に戦ってるんです。彼らにしかできない戦いをしているんです。スパイダーマンと一緒で、最後は必ずハッピーエンドですから、安心して応援してあげてください。
※2019年7月4日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容の書き起こしです。