- 2019年07月03日 15:46
【読書感想】世にも美しき数学者たちの日常
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読んでいて、数学って、案外「人間的」なんだなあ、と思うところがたくさんあったんですよ。
そもそも、問題をつくっているのは「人間」なのだし。
先生たちが数学の問題について語っていることに関しては、僕にはほとんどわからなかったのですが。
現・東北大学教授の千葉逸人先生の項より。
「僕、目上の教授とかにも全然タメ語で話すんですよ。よく奥さんに怒られるんですけれど」
実際、千葉先生は僕と話しながら、かなり意識的に敬語を使っているように思えた。今はまだコーヒーだが、酒が入ればすぐにタメ語になりそうだ。
「『あんな失礼な言い方して』とか言われてしまうんですけど。でも相手も数学者だから、似たような一面はあるので、全然平気なんです。大学にもよると思いますけど、僕の周りの数学者は、みんなめっちゃ仲がいい。フレンドリーで」
「それは、どうしてなんですか」
「やっぱり数学者同士、お互いにお互いの数学を尊敬しているからです。年齢、職階に関係なく。『こっちの先生のほうが数学上偉い』とかはほぼないし、一人一人違うテーマ、違う問題をやっていて、解釈も違う。
もちろん年配の教授の方が過去の蓄積がたくさんあるけど、単発で見れば若いこの先生の仕事がものすげえとか。まあ僕の業績、『蔵本予想』を解いたことなんかもそう。自分で言うのもなんだけど」
「蔵本予想」とは、物理学者の蔵本由紀先生が提唱したもので、三十年以上誰も解けずにいた難問だという。
「ある意味では対等なんですね」
ふと、ファゴット奏者にインタビューした時のことを思い出した。その時も空いては、他のファゴット奏者に嫉妬することはないと言っていた。なぜなら同じファゴットという楽器を使っていても、全然別の音楽をやっているから。自分だけの音楽を持って「うん。嫉妬とか、ライバル心とか、上下関係とか、そういうの全くないっす。
大学院生でも、ドクターくらいなら自分のオリジナルの問題を持っていて。その分野、ピンポイントに関しては、指導教官よりもその学生のほうが知っているわけです。それくらいでないと、博士号は取れない。だから僕らは、彼らのことを研究者だと見なしているし、そういう付き合いをする」
「すごく特殊な業界じゃないですか?」
「芸術に近いかもしれない。オリジナリティというか、『個性が全て』になっちゃうんですよ。だからあるところから先は教えられなくなる。僕が教えられることを学生がやっても、それは新しい業績にはならないし、新しい研究にはならないから、だから教えられないんです」
こういうのも個人差があって、「リーマン予想」のような、懸賞金がかかった予想に関しては、あるいは、大学のポスト争いでは、嫉妬とか競争心もあるんじゃないか、と勘繰ってしまうのですが、それはもう、僕には想像もつかない世界ではあります。
ただ、数学というのは、「教えられない」面があるというのは、頷けるような気がするんですよ。
だからこそ、中学入試などでは「他の受験者と差別化する決め手」になるわけで。
数学者たちの世界が理解できた、というよりは、世の中には、こういう人たちもいるのだなあ、と思いながら読みました。
こういう人たちが楽しそうに生きているのと同じ世界に生きているというのは、ちょっとだけ、幸せなことなのかもしれません。
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