- 2019年07月02日 20:27
中日応援歌が「お前」で使用自粛 他球団で多く使われている現状
プロ野球・中日ドラゴンズの応援団が1日、応援歌の「サウスポー」に不適切なフレーズがあるとして、当面の使用自粛を決めたことをTwitterで明かした。報道によると、歌詞内の「お前」という表現が子どもにとって不適切と判断され、今シーズンから就任した与田剛監督の「『お前』より名前のほうがよい」との意向も影響したという。
サウスポーは応援歌としては定番で、高校野球でも広く演奏されている。長く親しんできた応援歌だけに、「意味不明」「不適切さは感じられない」「ファン離れが進む」「言葉狩りだ」などと、ドラゴンズファンの間で困惑する声が目立つ。
果たして、「お前」は不適切な表現なのか。Twitterなどの情報を参考に他球団の応援歌を見ても、「くたばれ」「燃やせ」などのきつい表現は数多く見られる。野球の応援という状況を考えれば違和感は覚えない。「子どもには不適切」とした中日球団の対応は唐突感があり、過剰という印象を拭えない人も多いのではないか。

サウスポーは、ランナーが2、3塁に出塁するなど得点のチャンスに流れる「チャンステーマ」だ。原曲はピンク・レディーで、ドラゴンズでは2014年から使われていたという。歌詞は次の通りだ。
オイ!オイ!オイ!オイ!オイ!オイ!
(Let's Go 【選手名】 Let's Go 【選手名】)
みなぎる闘志を奮い立て
お前が打たなきゃ誰が打つ
今 勝利を掴め (オイ オイ 【選手名】)
(中日応援団公式ホームページから)
問題とされたのは、「お前が打たなきゃ誰が打つ」の部分だ。朝日新聞によると、チーム内から「選手に失礼では」「子どもの教育上、よくないのでは」との声が上がった。応援団は球団から歌詞の変更を打診されたものの、急な変更が難しいため当面の演奏自粛を決めたという。
【重要なお知らせ】
— 中日ドラゴンズ応援団 (@dragonsouendan) 2019年7月1日
この度、当団体で使用している「サウスポー」について、チームより不適切なフレーズがあるというご指摘を受けました。この件について球団と協議した結果、当面の間「サウスポー」の使用は自粛させて頂くこととなりました。
皆様には何卒ご理解、ご協力の程宜しくお願い致します。
この件で、応援団は1日午後3時、【重要なお知らせ】と題したツイートを配信。「サウスポー」の使用自粛についてファンに理解を求める内容で、2日午後7時現在で約1.4万件リツイートされるなど反響を呼んでいる。
ネット上の反応は、使用自粛を疑問視する内容が大半だ。
とんでもないイチャモン。選手にお前は失礼?いやいやファンと選手は俺とお前ぐらいの近い関係だと思わせてくれないの。
— 三遊亭鬼丸 (@onimaru31) 2019年7月1日
https://t.co/Scay3eabYd
「お前が打たなきゃ誰が打つ」の文言が不適切で中日の応援歌が自粛とのこと。日本語では「お前」はもとより「あなた」も面と向かっては失礼な場合がある。名前の呼び捨てはもちろん失礼。「高橋さん、高橋さん、今お打ちにならないなら、どなたがお打ちになるのでしょう」なら許可されるかな。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2019年7月1日
中日ファンとして知られる立川志らくさん。ツイートで「お前」の言葉について「高い敬意を持って使われていた」と指摘し、使用自粛を強烈に批判した。
与田監督が「お前」は不適切だと。本来「お前」は神仏の前をいう語。高い敬意を持って使われていた。フランク永井の「おまえに」はどうなる?お前百まで私ゃ99までという故事は子供に教えられないのか?ブルータスお前もか、も駄目になるのか?与田監督よ、中日球団よ、「お前こそ」どうかしているぞ。
— 志らく (@shiraku666) 2019年7月1日
多くの話題でもそうだがこの論点のすり替えの酷さ。中日お前問題。「志らくがもし弟子からお前と呼ばれたら腹立つだろ」ときた。腹立つどころか破門だ。ファンが選手に向かって面と向かってお前と呼べば失礼だ。こんな簡単な事がわからない。
— 志らく (@shiraku666) 2019年7月2日
他球団の応援歌はどうなっているのか。チャンステーマを調べると、ドラゴンズのほかに、広島東洋カープ、福岡ソフトバンクホークス、北海道日本ハムファイターズ、オリックス・バファローズなどで「お前」という言葉が用いられている。
[全員パート] 勝利を掴みとれ 「選手名」
(以下、繰り返し)
[全員パート] 勝利に向かって突き進め 打ちまくれ打ちまくれ
お前の力を見せてくれ それ行け 「選手名」
[男性パート] ここで決めろ [女性パート] ここで決めろ
[全員パート] 「選手名」
(福岡ソフトバンクホークス公式ホームページから)

選手個人の応援歌にも「お前」の表現が目立つ。読売ジャイアンツの坂本勇人内野手の応援歌は次の通りだ。
オオオ オオオ オオオ オオオ オー燃えろ(坂本!)
誰よりも強く勇ましく オオオオオオ
お前が立つその場所は 熱気の渦が巻く
坂本 炎となれ
(読売ジャイアンツ公式ホームページから)
「坂本 炎となれ」の一言は強烈だ。ジャイアンツで活躍したウォーレン・クロマティの応援歌は、「お前が打たなきゃ 明日は雨 クロマティー」というフレーズでファンに知られている。
各球団の応援歌を見ると、選手名を呼び捨てにしており、「戦え」「敵」「闘志」など強い言葉が並ぶ。選手への親近感と、活躍してほしいとの思いから、ほとんどの野球ファンが疑問も抱かずに歌詞を叫んできたはずだ。
プロ野球を見る機会が少なくない。今回の問題を受けて、思い出したのは先月30日に横浜スタジアムのレフト側スタンドで見た光景だ。7回表の広島東洋カープの攻撃。先発投手に代わって、代打の松山竜平外野手が打席に立った。
応援団の太鼓の音に合わせて、カープファンが声を揃えた。「オイッ!!打て!!!」。
泥酔した中年男性も「オイッ!!打て!!!」。
翌日は学校があるはずの小さな女の子も「オイッ!!打て!!!」。
脂がのった33歳のベテラン選手に向かって、「オイッ!!」呼ばわりで「打て!!!」。
見事に松山選手がレフトへのヒットで期待に応えると、スタンドからは割れんばかりの歓声が起こった。カープを応援する身としては、期待が叶ったこの瞬間こそ最高だ。応援とは、「何とか選手の力になりたい」というファンの思いの表現手段以外の何物でもないはずだ。

メガホンを持ったり、応援歌を歌ったり。7回のラッキーセブンになれば、ジェット風船を飛ばす球団もある。「巨人・大鵬・卵焼き」と言われた戦後から、プロ野球は国民に人気の娯楽として定着してきた。野球の本場・アメリカには無い日本独特の応援スタイルも、そうした人気を下支えしてきた。
ドラゴンズ広報部は今回の件について、「球団、応援団で協議した結果、当面、使用を控えることとしており、歌詞については検討している段階」としている。
プロ野球をめぐっては、かつての「たかが選手」という暴言も記憶に新しい。当時の選手を支えたのはファンであり、そうしたファンあってこその球団だ。
- BLOGOS しらべる部
- BLOGOSが何でも調べます



