- 2019年07月02日 15:10
日本映画界の変容示す劇場アニメへのさらなる傾注と東宝の「4本目の柱」
2/2新しいキャラクター「ちびゴジラ」の狙い
さらにこのところ大きな取り組みとなっているのが「ゴジラ」で、2017年から翌年にかけて映像事業部が製作・配給した劇場アニメ『GODZILLA』3部作が次々と公開された。
東宝では2014年に社内に「ゴジラ戦略会議」通称「ゴジコン」が発足し、全社的な取り組みが行われている。きっかけは同年、ハリウッド版の『GODZILLA ゴジラ』が世界的にヒットしたことで、本家本元の東宝でもゴジラのコンテンツを使って様々なビジネスができないかとプロジェクトチームがたちあがった。
映像事業部の場合は、アニメの製作・配給のほか、グッズやイベントなど様々な事業を展開している。ゴジコンのプロジェクトリーダーを務める映像事業部の高橋亜希人・映像企画室長に話を聞いた。
「昨年にかけて公開された劇場アニメは第3章のDVDが今年5月22日に発売されました。東宝映像事業部が発売元です。またこのアニメはネットフリックスを通じて全世界に配信されています。海外販売については国際部が担っていますが、国内での製作・配給、DVDやグッズなども含めて映像事業部全体で取り組んでいます」
昨年後半から始まり、今年大きく展開を予定しているのが、「ちびゴジラ」という新たなキャラクターだ。
「ゴジラは今年で65周年を迎えるのですが、ファンの年齢が年々高くなっています。この65年はチャレンジの歴史で、最初は特撮でしたが、『シン・ゴジラ』というCGを使った映画を製作したり、劇場アニメを製作したりしてきました。今回の『ちびゴジラ』は、赤ちゃんが最初に触れるキャラクターの選択肢のひとつにゴジラもなれないかと考えたもので、これまでの実写だと怖さが出てしまうので、新しいチャレンジをしたのです。
Suicaのペンギンの絵を描いているさかざきちはるさんにお願いして、『ちびゴジラ』のキャラクターを描いてもらい、昨年11月に講談社から絵本を発売しました。5月21日に第2弾が発売されています。絵本にはモスラやラドンも登場し、子供向けの新たな世界観を広げていこうとしています。今後はフィギュアやTシャツ、靴下など雑貨全般の商品化も行うし、TOHOシネマズの子供向け映画の前のマナーCMに『ちびゴジラ』が登場しています。
ゴジラというのは、クリエイターによって造形が変わるという珍しいキャラクターなんです。ハリウッド版も監督によってゴジラの造形は違っています。その中で今回の『ちびゴジラ』も新しいキャラクターとして登場したわけですが、キャラクターがこんなふうに変わると、そのたびに違った商品展開がなされるのです。新宿に『ゴジラ・ストア』という専門店があるのですが、たくさんのゴジラのキャラクターが並べられています。
ゴジコンというのは、そういうゴジラのブランディングをするのが目的です」(高橋室長)
アニメ『二ノ国』へのワーナーの期待
安定した人気を誇るシリーズものの劇場アニメへの取り組みは、映画各社が試みているが、今年、本格的な取り組みを開始するのがワーナーブラザースジャパンだ。同社には実写では『るろうに剣心』と『銀魂』のフランチャイズがあり、昨年公開された『銀魂2』は37億円の興収をあげている。
「『名探偵コナン』や『ドラえもん』と言ったテレビアニメのフランチャイズだけでなく、新海誠監督や細田守監督作品など劇場用アニメは東宝さんが圧倒的に強い。邦画マーケットの実情を考えれば、やはり劇場用アニメを持たないといけないと試行錯誤して来ました。幸い集英社さん幹事の劇場版アニメ『銀魂』を配給させていただいてますが、自分たちで作り出すのは時間がかかりました」
そう語るのは小岩井宏悦エグゼクティブプロデューサーだ。
ワーナーブラザースはハリウッドの映画会社だが、世界各地で、それぞれの国や地域に応じた映画製作を行おうというローカルプロダクションを推進してきた。日本でその任に当たってきたのが小岩井さんだ。『るろうに剣心』も『銀魂』も小岩井さんがプロデュースした作品だが、今年は新たにアニメのフランチャイズに取り組むという。パートナーになるのは『妖怪ウォッチ』『レイトン教授』などゲームのキャラクターを映像化させて次々と大ヒットを飛ばしてきたレベルファイブだ。
「実は私がワーナーブラザースに来てすぐの10年ほど前、福岡の本社までレベルファイブの日野晃博社長に会いに行ったんです。日野さんは、経営をやりながら自らクリエイターとしてゲームだけでなくテレビアニメから映画まで次々とヒットを生み出しているでしょう。すごい才能ですよね。そこで、発売されたばかりの『二ノ国』というゲームのアニメ映画化をお願いしたんですが、当時はまだワーナーに邦画製作の実績がなく話が進みませんでした。それから、ワーナーも実写映画での実績ができた4年半ほど前にもう一度お願いに行き制作が始まったのが8月23日公開の『二ノ国』です。日野さん自身がシナリオを書かれていて宣伝面でも日野さんが得意とされるメディアミックスによる多面的な展開もあります。また、この『二ノ国』というゲームは海外、特にヨーロッパでは大変な人気ですので大規模な海外展開も予定されています。

監督はスタジオ・ジブリで原画や演出をやっていた百瀬義行さんなのでキャラクターは日本人が大好きなジブリルックになっていますし、音楽は久石譲さんなのですが、レコーディングした劇伴がとにかく素晴らしくて音楽だけでも1800円の価値があると思います。メディアミックスでいうとコミカライズについては講談社の『別冊少年マガジン』に5月号から連載が始まっていて、この後も次々と発表していく予定です。
今回、何よりも大きいのはレベルファイブの日野さんと一緒に仕事ができたことですね。クリエイティブとビジネスの両方に才能があるカリスマですから、今後も良い関係を築いていきたいと思っています」(小岩井プロデューサー)
その後、10月11日に公開が予定されているのは、吉永小百合・天海祐希という大女優の共演で既に話題になっている『最高の人生の見つけ方』だ。2007年にアメリカで作られた同名の映画を原案としたものだが、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが演じた主役を女性に代えた。監督は犬童一心さんだ。
「アメリカと日本のマーケットが違うので女性2人の物語にしました。明るい作品なのにとくかく泣けると評判です。何より自分が吉永小百合さんとお仕事をしているということが未だに信じられない。映画人として最高に名誉なことで絶対に当てて次もご一緒したいです」(同)
次に控えているのが来年夏公開の『るろうに剣心』の第4作目と5作目だ。7カ月以上に及ぶ日本で最長の撮影期間を終え、2本連続公開で2014年公開の前2作以上の超大作だという。
東映は8月公開『ワンピース』に期待'''
劇場アニメの強いシリーズを増やしたいという意向は東映も同じで、昨年は8月に人気アニメシリーズの劇場版『七つの大罪 天空の囚われ人』を公開した。取締役でもある村松秀信企画調整部長がこう語る。

「興収は7億円でした。もう少し行くかなと思っていたのですが、今後、長い目で見て育てていかなければいけないと思っています。今年は8月に劇場版『ワンピース スタンピード』が公開されますが、テレビアニメ放送開始20周年という記念の年でもあるし期待しています。夏と冬に公開している『仮面ライダー』も昨年は興収15億円のヒットだったし、『ドラゴンボール』は40億円を記録しています」
東映にとって今年は“予想外”が続いている。まず2月に公開された『翔んで埼玉』が異例の大ヒットで興収37億円を叩き出した。フジテレビの『テルマエ・ロマエ』を製作したプロデューサーと監督のコンビが原作に惚れ込んで映画化したもので、東映が配給を担った。
そして次の予想外が、4月公開予定だった『麻雀放浪記2020』だ。3月12日に出演者のピエール瀧がコカイン所持などの容疑で逮捕された。テレビドラマやCMをめぐって自粛の動きが広がり、公開をどうするのか注目された。
「映画はテレビと違ってお金を払って観に行くものだし、ピエール瀧は主役でもないですから、東映としてはそのまま上映しようと考えていたのです。でも製作委員会の中ではいろいろな意見があると思うので、とにかく配給を行った東映に判断を任せてほしいと申し上げました」(村松部長)
今後の東映配給作品を挙げてみると、7月は『仮面ライダージオウ/騎士竜戦隊リュウソウジャー』、8月劇場版『ワンピース スタンピード』、9月『見えない目撃者』、10月『プリキュア』新作、11月『閉鎖病棟 それぞれの朝』。精神病院が舞台のサスペンスで、笑福亭鶴瓶が主役だ。それ以降公開の正月映画としては周防正行監督の『カツベン!』がある。大正期の無声映画時代の活動弁士を描いたもので、周防監督らしい映画だと評判になっている。
松竹配給の映画も紹介しておこう。5月31日公開『パラレルワールド・ラブストーリー』、6月21日公開『ザ・ファブル』などは日本テレビとの共同幹事。その後も7月19日公開『東京喰種 トーキョーグール【S】』」、8月30日公開『引っ越し大名!』、9月13日公開の蜷川実花監督の『人間失格』などが続く
今年の夏は話題作が多く激戦と言われる。日本映画は今後どうなってゆくのだろうか。
※『創』7月号の映画特集の内容は下記をご覧ください。

※Yahoo!ニュースからの転載



