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日本映画界の変容示す劇場アニメへのさらなる傾注と東宝の「4本目の柱」

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『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』クレジットは本文参照

. 発売中の月刊『創』(つくる)7月号は、恒例の映画特集だ。表紙は公開中の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』だ(写真のクレジット2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved)。ハリウッド版の『ゴジラ』は来年にも次回作が公開予定だし、その国内配給は東宝だ。この国際戦略は東宝のメディア戦略のひとつの柱になりつつある。

 そのほかにも劇場アニメの隆盛が今年の特徴だ。夏には『君の名は。』の新海誠監督の新作など強力アニメが勢ぞろいする。

 テレビや配信と連動させたコンテンツ戦略の要とあって、映画はますます進化を遂げている。この1年間の特徴的なことを報告しよう。

東宝の映画戦略に4つ目の柱が…

 「いつも3つの柱と言ってきましたが、今年は4つ目の柱ができそうです」

 そう語るのは東宝の市川南常務だ。3つの柱とは、シリーズもののアニメ、テレビ局製作の映画、そして自主製作の映画だ。東宝を支えるこの3つの柱に加わる新しい柱とは、東宝が製作に関わるハリウッド映画だ。今年5月公開の『名探偵ピカチュウ』と『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の2つがそれにあたる。

 2作品とも製作はアメリカのレジェンダリー・ピクチャーズだが、海外での配給はワーナー・ブラザース、国内配給は東宝が担う。なぜそうなるかといえば2つとも日本のヒットコンテンツをハリウッドが映画化したものだからだ。前者はキャラクターの権利を日本の株式会社ポケモンが持っており、後者は東宝だ。

 「両方とも東宝グローバルプロジェクトと呼んでいますが、東宝が出資をし、国内の配給権を持っています。『名探偵ピカチュウ』は株式会社ポケモンとレジェンダリー・ピクチャーズの間を東宝が取り持った経緯があるし、『ゴジラ』については東宝のキャラクターです。いわば東宝のキャラクターをハリウッドに貸し出して、出演料をもらうという形ですね。

 『名探偵ピカチュウ』は今回の映画が新作ですが、世界中でヒットしました。日本国内でも興収30億円を超える勢いです。シリーズ化されていけばいいなと思っています。

 『ゴジラ』については2014年公開の前作が大ヒットし、5月公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に続いて2020年には『ゴジラvsコング(仮)』の公開も決まっています」(市川常務)

 2作品を皮切りに、東宝では海外とのやりとりを行う国際部の業務が拡大しているようだ。映画調整部の臼井央部長がこう補足する。

「もともと国際部は、日本の映画を海外に輸出する業務にあたっていたのですが、今は一部、ハリウッドでの製作にも関わるようになりました。国際部の業務は拡大しています」

 ちなみにポケモンに関しては、ハリウッドの作品と別に、7月12日から3DCGの『ミュウツーの逆襲  EVOLUTION』が公開される。配給は東宝だ。

 他の3本の柱についても見ておこう。2018年、東宝は、自社製作を強化拡大するという方針を掲げ、配給作品32本のうち16本が自社製作だった。しかしその中には、興収10億円に達しない作品も多かった。でも東宝が強いのは、そういう場合でも他の2つの柱が支えることで、会社全体の興収目標500億円を大きく超える600億円を達成した。

 特に第1の柱であるシリーズものアニメが絶好調で、『名探偵コナン』や『ドラえもん』がいずれも過去最高の興収をあげた。この2本のほかに『クレヨンしんちゃん』『ポケットモンスター』『妖怪ウォッチ』を含めた5本のアニメが盤石の人気を誇っているのだ。

『ヒロアカ』でアニメシリーズは6本に

「『ドラえもん』は今年も昨年に続いて歴代2位の50億円に届く勢いですし、『名探偵コナン』は過去最高の昨年を超えて、95~100億円に届く勢いです。今年はそのほかに『君の名は。』の新海誠監督の新作『天気の子』が7月に公開されるし、配給作品27本のうち10本がアニメです」(市川常務)

 昨年初めて劇場アニメが公開された『僕のヒーローアカデミア』は興収17・2億円と好調なスタートを切って、シリーズ化が決まった。第2作は冬公開予定だが、アニメシリーズはこれで6本になったわけだ。

 劇場アニメが日本の映画界を牽引する状況が続く中で、シリーズアニメをどう確保していくかは、映画会社各社の課題となっている。昨年は東映も『劇場版 七つの大罪』の配給に踏み切ったし、後述するが今年はワーナー ブラザース ジャパンもアニメに本格的に取り組み始めた。

 今年の夏の映画は洋画も『ライオンキング』『スパイダーマン』など大作が並び激戦と言われるのだが、大きな期待が持たれているのが新海誠監督の『天気の子』だ。何しろ2016年公開の『君の名は。』は興収250・3億円を叩き出し、日本中に旋風を巻き起こした。7月19日公開の今回の作品も、制作は新海監督が所属するコミックス・ウェーブ・フィルムで、年内の東宝配給作品の中でも最大級の配給規模だ。アニメファンだけでなく業界全体の期待と注目を一身に背負っている感じだ。

『天気の子』C2019「天気の子」製作委員会

 5月31日公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と7月公開の『天気の子』と、これから大作で勝負をかける東宝だが、今年に入ってからの配給作品は軒並み好成績をあげている。興収をあげてみると、まず正月公開のテレビ局製作の2本、フジテレビの『マスカレード・ホテル』とTBSの『七つの会議』がそれぞれ46億円、21億円、2月公開の自社製作『フォルトゥナの瞳』が13・5億円。以下は見込み興収となるが、3月公開の『映画ドラえもん のび太の月面探査記』が50億円、自社製作『君は月夜に光り輝く』が10億円、4月公開の『名探偵コナン 紺青の拳』が95~100億円、『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』が20億円、日本テレビ製作の『キングダム』が50億円、ハリウッド映画『名探偵ピカチュウ』が30億円をそれぞれ突破する見込みだ。5月17日に公開されたフジテレビ製作の『コンフィデンスマンJP』も興収30億円を狙える健闘だ。

『ヒロアカ』『刀剣乱舞』映像事業部の取り組み

 さて、東宝にはここまで紹介したようなラインナップを扱う映画調整部、映画企画部のほかに、映像事業部という独特の部署がある。もともとは映画から派生するDVDなどの2次商品や、パンフレット・関連グッズなどの製作・販売を行う部署だった。それが発展して、アニメ製作や配給、ODSと呼ばれる映画館を使ったライブビューイングなど様々な事業を手がけるようになった。映像事業部はいまや東宝の中で一番人数が多い部署になっているという。昨年来の事業について、上田太地映像事業部長に聞いた。

 「この1年ほどはTOHOanimationの作品への取り組みがメインでした。特に『僕のヒーローアカデミア』は、映像事業部が製作しているテレビアニメの第3期が、昨年4月から2クールにわたって放送され、その放送中の8月に、初めての劇場アニメが公開されました。夏休みは大作が多くて激戦でしたが、興収が17億円超と素晴らしい成績を収めました。劇場アニメとしては第2弾が今年の冬公開が決まっています。

 この作品は北米など海外でも火がついています。北米のカートゥーン ネットワークというアニメ専門チャンネルと契約が成立して全米でテレビアニメが放送されました。劇場アニメも10月に500スクリーン以上で公開され、これまでに北米で公開された日本映画の歴代トップ10に入りました。そのほか中国、台湾、香港、タイなどアジア各国でも劇場公開されています。『週刊少年ジャンプ』のマンガは海外でも人気で、世界的に有名なサンディエゴのコミコンでも『ヒロアカ』は大盛況でした。このアニメは東宝が社を挙げて取り組む体制になっています」

 もうひとつ、昨年は「紅白歌合戦」にも登場するなど大ブレイクしたのが「刀剣乱舞」だった。

「ニトロプラスさんの原作を元に開発したゲームから派生したテレビアニメや2・5次元の舞台で人気を博し、この1月には実写映画が公開されました。2・5次元の舞台の役者がそのまま出演する映画で、製作や配給など映像事業部が取り組みました。舞台も幾つかのシリーズがあるなど、この作品は独特の展開をしています」(上田部長)

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