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「オー人事、オー人事」CMで見る過去20年の労働環境の変化

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 職場関連のCMの中で、多くの人の記憶に残っているのは、平成9年(1997年)のスタッフサービスによる「オー人事、オー人事」のCMでしょう。

 派遣会社であるスタッフサービスが発表したこのCMは、悲惨、ないしは、滑稽な職場が描かれます。そして、最後に、「職場に恵まれなかったら」というナレーションとともに、同社のフリーダイヤル番号が告知されます。

 たとえば、ゴルフ場。上司がショットした後、部下たちがグリーンを移動させて、ボールをカップインさせます。横暴な上司とその上司につき従う(従わざるを得ない)部下の関係が題材です。そこで、違和感を持ったひとりの部下が、駆け出します。

 すると、チャイコフスキーの弦楽セレナーデが流れるとともに、フリーダイヤルの番号が表示される。部下が携帯電話でスタッフサービスに登録したところで、CMは終わります。CMとしてはシンプルであり、目新しい要素はありません。新しいのは、派遣労働者という形態です。

 国立国会図書館(当時)の岡村美保子の解説によれば、労働者派遣とは、本来の雇用関係とは別に、他人の指揮命令を受ける労働をさせることです。昭和22年(1947年)に制定された職業安定法が禁止する「労働者供給事業」そのものです。つまり、リテラルに(文字通り)考えれば、違法だったのです。

 なぜ違法かと言えば、それは、戦前における人夫供給業、いわゆる、人入れ稼業と呼ばれる土建や荷役、運送、鉱山といった、肉体を酷使する作業において乱用されてきたからです。

 普通の労働者が嫌う作業を、搾取や強制を伴う形で、むりやりやらせていました。それが、人入れ稼業であり、「労働者供給事業」でした。だから、民主化を目指す日本国憲法のもとで定められた職業安定法は、これを禁止しています。

 とはいえ、もちろん、そうしたキレイゴトでは労働現場はまわりません。建設業や港湾運送作業では、「労働者供給事業」が盛んに行われていました。

 そこで、違法行為の黙認を続けるわけにはいかなくなった行政側が、数度にわたる実態調査の末、昭和60年(1985年)に合法化し、労働者派遣法を定めるにいたります。

 それだけではありません。

 バブル崩壊後、すなわち、「平成」に入って以降、「雇用流動化」が叫ばれます。日本的雇用習慣=終身雇用を守れなくなったため、平成7年(1995年)には、日経連が「新時代の『日本的経営』」を公表し、「雇用柔軟型」という名の下に、雇用の調整弁となる派遣労働者の拡大を、経営者側が求めたのです。

 その2年後の平成9年(1997年)に、スタッフサービスのCMは大量に放送されます。さらに2年後の、平成11年(1999年)には労働者派遣法が改正され、派遣適用業務が大幅に拡大されます。そのまた4年後、平成15年(2003年)の改正では、製造業にまで広げ、もはや、その範囲は、ほぼすべての労働現場へと及びます。

 平成9年(1997年)のスタッフサービスのCMは、こうした派遣労働拡大の始まりを告げています。その意味で、確かに時代をあらわしています。この後、日本は、ますます派遣労働者を増やし、それに伴って非正規労働者も増えていきます。派遣という立場は、あくまでも「雇用柔軟型」であり、雇用の調整弁にすぎません。

 そこから格差は拡大を続けます。

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