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その"発がんリスク"は本当に回避すべきなの?

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 "リスクの伝道師"SFSSの山崎です。本ブログでは、毎月食の安全・安心に係るリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方を議論しておりますが、今月は食のリスクを議論するうえで、常に話題となる"発がんリスク"の問題について考察したいと思います。
 まずは、食の放射能汚染をとりあげたSFSSの「食の安全・安心Q&A」をご参照ください:

 ◎食の放射能汚染について②
  http://www.nposfss.com/cat3/faq/q_10.html

 Q(消費者):低線量放射線被ばくはどんなに低レベルでも発がんリスクに閾値がないので避けるべきと聞いた。福島県のお米やお肉も本当に大丈夫なのか?
 A(SFSS):まったく問題ありません。天然の放射線被ばくに比べて、放射性セシウム汚染による被ばく量は極端に低いため、その発がんリスクも無視できるレベルです。

<MEMO>
福島県産農畜産物からの放射線被ばく量(原発事故由来の放射性セシウム)を天然の食品に含まれる放射線被ばく量(放射性カリウム)と比較した場合に、無視できるレベルまで下がりました。下図のとおり、われわれの身の回りに存在するほかの発がんリスクに比べても比較的小さいので、心配の必要はありません。


 それよりも食肉を十分加熱調理せずに生食することや、生肉や生野菜を調理する際の調理器具を介した交差汚染で起こる病原微生物(O157、カンピロバクター、サルモネラなど)による食中毒の健康リスクのほうがはるかに大きく、確定的死亡リスクが潜んでいるため要注意です。最近流行りの「ジビエ料理」も、鍋料理など十分な加熱調理されたものが無難です。食品中の残存リスクの大小を正しく理解することで、本当に回避すべき「食のリスク」を見極めるバランス感覚を養いましょう。

 上述の図において、われわれの身の回りにたくさんの「発がんリスクの山」が存在していることを正しくイメージできると、「比較的低いリスクの山」、すなわち食品添加物、残留農薬、遺伝子組み換え作物、食の放射能汚染などをさらに低くすることよりも、喫煙・過度の飲酒・PM2.5・ストレス・運動不足・野菜嫌い・カビ毒など「高いリスクの山」を低くすることの方が、発がんリスク低減にはより効果的だと理解できるはずだ。

 発がんリスクの山の高さは、あくまでリスクの大小をイメージしやすくするためのものだが、もし山の高さ=発がんリスクの大きさ(エビデンスの強さを含む)を仮の数値で表してみると、以下の表のようにわかりやすくなる:


 この表の「発がんリスク低減効果」の数値をみていただくと、禁煙や飲酒をひかえることにより、発がんリスクを効果的に下げることが可能とわかっていただけると思うが、無添加や無農薬などはリスク低減効果が無視できるほど小さいだけでなく、むしろ発がんリスクが上昇する可能性もあるということだ(「リスクのトレードオフ」)。遺伝子組み換え作物や食の放射能汚染も、これらを回避することでのリスク低減効果はまったくない(無視できるレベル)と考えてよいだろう。

 もしタバコや酒の発がんリスクは許容しているのに、食品添加物や残留農薬の発がんリスクは絶対回避したいという方がおられたとしたら、それはかなりリスク感覚がずれていると言わざるを得ない(不安を煽る週刊誌報道の編集者/ライターさんたちは、きっと酒もタバコもやらないんでしょうね?!)。 福島県産農畜産物はわずかでも放射性セシウムに汚染されているかもしれないので、その発がんリスクは許容できないという方々も、毎日摂取している天然の食品中の放射性カリウムによる内部被ばく量の方が明らかに大きいにもかかわらず、なぜその発がんリスクは受け入れるのか。ただし、「発がんリスクとは関係なく、原発事故由来の放射性物質は許容しない」という価値観をお持ちの方を否定するつもりはないので、その方々の合理的選択の権利は尊重すべきだろう。

 最近雑誌等で散見されるようになった、食品中のハザード「アクリルアミド」は野菜などの天然物を加熱調理することで発生するメイラード反応生成物の一種だが、その遺伝毒性が動物実験で報告され、その発がんリスクが指摘されている。だがその「アクリルアミド」は上述の「発がんリスクの山」の図において、それほど高くないものとなっているのは、喫煙・アルコール飲料・カビ毒のアフラトキシンなどが、IARCの発がん性分類においてグループ1(ヒトへの発がん性について十分な証拠がある:carcinogenic to humans)に分類されているのに対して、アクリルアミドはグループ2A(実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合:probably carcinogenic to humans)に分類されているからだ:

 ◎国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について(農水省HPより)
  http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/iarc.html

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