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解散権

1月28日に召集された第198回通常国会は、会期を延長することなく150日間の会期を終え、予定通り26日に閉幕した。

会期末の恒例行事とも言える内閣不信任案上程は、野党間で是非を巡る意見が分かれていたが、二転三転、紆余曲折を経て、会期末前日の25日に提出された。

野党がすんなり首相への内閣不信任案提出といかなかったのは、それが解散総選挙の引金となり、衆参同日選になることを懸念したからだ。

野党は安倍一強体制を打破すると威勢のいい言葉を弄していたが、参院選勝敗の帰趨を決する1人区の候補一本化が実現したのは13日。難産の末、やっとという感じだ。衆院小選挙区でも候補者調整を行うことで合意はしているが、仮に同日選になっていたとして、1か月での調整は無理だっただろう。

野党間の主導権争いも国会対応への歩調を乱したようだ。当初から不信任案提出に積極的であった国民民主、共産、社民などは、提出を逡巡する立憲民主党の枝野代表に終始プレッシャーを掛け続けていたが、本音では不信任案が引金となり解散、衆参同日選となることを恐れていた。それでも立憲の意向に差配されるのは面白くなかったが故に強気の発言を行っていたようだ。

ここに至る経緯の発端は、5月第2号のコラムで言及したように、「不信任案提出が解散の大義になる」と、記者会見における菅官房長官の発言だ。果たしてそうだろうか?

日本国憲法では衆議院解散について、以下の2つのケースが規定されている。

7条:内閣の助言と承認により天皇の国事行為として行われる衆議院の解散。天皇は国政に関する権能を有しないため解散権は内閣にあり、事実上、内閣の長である内閣総理大臣が解散権を握っている。

69条:内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

一見、不信任案が引金になるのは69条解散の場合のようだが、同条では不信任が“可決”された場合の選択肢として解散が規定されている。提出されても否決すれば解散権は生まれない。故に、不信任案提出だけでは7条解散しかできないのだが、与党が圧倒的多数を占めるなか、“提出”という行為のみで解散の大義が生じるのだろうか?いささか無理があるような気がする。

尤も過去の7条解散すべてに明確な大義があった訳でもない。
古くは昭和27年(1952年)の吉田茂総理による“抜き打ち解散”。この時は国会も開かずに議長応接室に各党代表を集めて、解散が宣言された。

平成15年(2003年)の“郵政解散”は、郵政民営化法が自民党内の造反により参議院で否決されたことを受け、小泉純一郎総理が「国民に聞いてみたい」と衆議院を解散したもの。参議院の議決が衆議院解散の大義になるのか否か?当時は物議をかもしたものだが、争点という意味では非常にわかりやすい選挙でもあった。

ただ、大義の有無にかかわらず、解散権が政局の道具になっており、与野党の駆け引きに用いられる一面は否定できない。今国会も正にそのネガティブさが露呈した。そのことは国民も分かっているから、「年中行事」などと呑気に構えている。立憲民主党は憲法改正の項目に「衆議院の解散権」を提案しているが、一考に値すると思う。

ともかく25日の本会議場は全く緊張感がなく、盛り上がりに欠けるまま通常国会は幕を閉じた。大阪のG20が終われば日本の政治は参議院選挙一色となる。すでに7月21日の投票日に向けて各陣営とも走り出している。今年も暑い夏になりそうだ。

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