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焦点:長期化する米中対立、知財の争いで 翻弄される日本企業


[東京 30日 ロイター] - 大阪で29日に行われた米中首脳会談では、米国による中国から3250億ドル規模の輸入品に対する25%関税の賦課が回避されたものの、両国の対立は長期化しそうだとの見方が専門家から提起されている。その背景に軍事的な優位を支える最先端技術を中核とした知的財産権を巡る争いがあり、簡単に収束しないためだ。米中の間で翻弄される日本企業は、最適なビジネスモデル構築に向け、手探りの展開が続きそうだ。

<米中対立、長期化の可能性>

29日のトランプ米大統領と習近平中国主席の大阪での米中首脳会談では、当面米国が3250億ドル分の中国からの輸入に25%の関税を賦課することなく、米中通商交渉を再開することで合意。米企業がファーウェイに対し、安全保障上の懸念がない限り、部品供給することを認めると米側が提案した。

しかし、米中間の対立の根本には、貿易収支の不均衡ではなく、軍事的な優位の確立に不可欠なハイテクを中心にした知的財産権を巡るヘゲモニー争いがあるとの見方が、専門家の間では根強い。

「米中の経済対立は、トランプ政権のうちは続くと、覚悟したほうが良い」ー─。デロイトトーマツコンサルティング・パートナーの羽生田慶介氏は、根本的な米中対立は長期化すると指摘する。

背景には、米政権内でロス商務長官やライトハイザー通商代表部代表、ナバロ大統領補佐官(米通商製造政策局長)らの政策方針が「対中強硬」であり、中国の知的財産権保護や企業への補助金の政策が転換されたと確認できるまでは、対中関税政策を緩めない姿勢があるためだ。

このため、従来からの2500億ドル分の関税は、知的財産保護に関する中国の対応に進展がなければ解除は難しいと羽生田氏は予測。

ファーウェイへの部品販売が認められる方向についても「これまで米技術の知的財産保護の目的で先鋭化されてきた論点であり、すぐに全面解除にはならないだろう」とみている。羽生田氏は、これから行われる実務者協議だけでなく、投資や輸出管理に関する法律の施行状況が注目点になると予想する。

<手探りの日本企業>

トランプ大統領が、米企業に対し、ファーウェイへの部品販売を容認する見解を示したが、日本企業は米政権の許容した範囲が、実際にはどこまでなのか今後、手探りで確認することになりそうだ。

半導体製造装置メーカー世界3位の東京エレクトロン<8035.T>は6月、米政府のブラックリスト(エンティティ・リスト、EL)に入れられた中国企業との取引を停止する方針を示したが、トランプ大統領が示した今回のファーウェイに対する規制緩和で、同社がELから除外されるのかどうかは、まだ、はっきりしない。

他の日本企業でも、トランプ大統領の規制緩和方針表明前の段階で、安全保障上の懸念のある製品の輸出・調達先の変更、知財管理の強化などに取り組んでいたが、さらに修正を迫られる可能性がある。

世界的にサプライチェーンを展開している日本企業は、コストと安全保障問題の狭間で、難しい判断を迫れている。

グローバルにビジネスを展開する企業にとって、今後は、今までのように安全保障問題を念頭に置かず、利益最優先で経営判断することが難しくなっているとの声が、専門家から出ている。

それでも、元特許庁長官で中曽根平和研究所副理事長の荒井寿光氏は「今や先端通信技術を牛耳る国が、軍事力で優位に立てる。米国は中国を世界市場から切り離して中国国内だけに閉じ込めようとしている。対中デカップリング政策の手を緩めることはしない」と、この先の展開を予見する。

また、G20大阪サミット終了後の会見で、トランプ米大統領が日米安保条約の片務性を指摘し、見直しに言及。日本政府は、日米両国間で安保条約の見直しが正式な課題に上っていないと否定的な見解を繰り返しているが、防衛インフラと脆弱な日本の通信インフラへの懸念の声が出始めている。

5G問題に代表される最先端技術と防衛問題が密接にリンクしているにもかかわらず、その主要製品を日本企業が生産できなくなっているため、防衛システムだけでなく、電力や鉄道、医療、行政といったあらゆる社会インフラが海外製通信インフラで稼働する可能性が高まっているためだ。

荒井氏は「安全保障の観点からも、他国の技術に依存した日本の経済社会インフラについて再考するきっかけにすべきだ」と指摘する。

また、データ管理についても、GAFAをはじめ、海外プラットフォーマーに情報を管理されている日本の現状は、再検討が必要であるとの見方を示した。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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