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Re:学び
「学生の頃、もっときちんと学んでおけばよかった」そんな風に感じたことがあるなら、今から「学び」について考えてみませんか。くしくも人生100年時代、世の中はグローバルになり、技術もどんどん進歩しています。だとすれば、大人だって学び続ける必要があるはず。人生を楽しむために必要な「学び」に関する特集がはじまります。

五輪競技になる可能性も! 今最も熱い「eスポーツ」を学ぶ専門学校に潜入

  • 2019年06月30日 11:50
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オリンピック・パラリンピックの正式種目として選出される可能性が浮上するなど、話題に欠かない「eスポーツ」。まだまだ目新しい競技だが世界各国で多くのイベントや大会が実施され、eスポーツカフェ(eスポーツのプレイを目的としたゲーミング施設)も増えてきており、今最も注目されているスポーツと言っても過言ではないだろう。

日本でもeスポーツ大会が多数開催され、徐々に競技人口は増加している。オンラインゲームの統計情報などを発表している「OP.GG」によると、2018年10月末時点で、世界最大級の無料オンラインタイトル「League of Legends」(5人対5人でランダムにチームを組み、敵の本陣を破壊する、いわば陣取りゲーム)の日本サーバーでは約11万人がプレイしているという。※「ランク戦」に限定

日本にはeスポーツを学ぶための専門学校があり、多くの学生たちがプロゲーマーを目指して日々切磋琢磨している。彼らは一体どんなことを学んでいるのか、e-sports科を運営する「東京アニメ・声優専門学校」の坂口さんに話を聞いた。【清水かれん】

英会話にメンタル指導…少し特殊な授業が魅力

黙々とゲームをする生徒たち。真剣そのものだが、明るい話し声が絶えない授業だった

−−eスポーツをどのように学ぶのか教えていただけますか

簡単に説明すると、eスポーツに関わる職業につくための必要な知識が学べる学科です。学生の男女比率は、1年生は約100名中、女性は4名、2年生にいたっては0名と圧倒的に男性が多いです。また、高校卒業後に入学という、若い世代が大半を占めます。そもそも、eスポーツ業界自体若い年代が多く、本校で教鞭を執られている現役のプロゲーマーの先生も20代の方が多いですね。

−−生徒は全員、プロゲーマーを目指しているのですか

e-sports科は、「プロゲーマー」「イベント企画・制作」「キャスター」「ストリーマー」と、4つの専攻に分かれており、一番生徒数が多いのがプロゲーマー専攻です。「プロゲーマー専攻」の生徒は、ゲームの技術を上げる授業が大半ですが、闇雲にプレイするのではなく、授業開始前に講師が「意識する点」を指示し、その指示通りにプレイできていたかを評価します。

ゲーム技術向上の他には、英会話やメンタルトレーニング、動画配信の授業、チームマネジメントの仕方、eスポーツの研究などをおこなっています。また、グループ校が札幌から福岡まで、全国7校あるので毎週オンライン対抗戦を実施しています。授業で身につけた技術を駆使して学生同士、切磋琢磨していますね。

「イベント企画・制作専攻」の生徒は、イベントの企画立案やディレクション、照明や音響などの技術的な面や、映像の編集などを学びます。eスポーツのイベントスタッフは、1人で何役もこなさなければならないことが多く、学ぶことが多岐にわたります。司会を担当することもあるんですよ。

進行のような役割を果たす、「キャスター専攻」の生徒は舞台で活躍するプロの実況者や司会者を講師陣に迎えてゲーム実況やMC技術を学び、「ストリーマー専攻」の生徒は、eスポーツビジネスに関わる基礎知識や、マーケティング・スポーツビジネス・動画配信などのノウハウを習得します。

−−いろんな選択肢があるんですね。「メンタル」についての授業は珍しいと思うのですが、どのような内容なのでしょうか

オリンピック選手のメンタルトレーナーの方に、気持ちのコントロール方法や、プレッシャーとの付き合い方を教えていただいています。また、eスポーツは主にチーム戦になるので、仲間と円滑にコミュニケーションを取る方法やチーム内のモチベーション低下にどう対応するか、なども教えていただいていますね。

他にも、「業界研究」という授業が変わっていて面白いと思います。この授業は、講師の先生が週ごとに変わるのですが、ちょうど本日はeスポーツチームのトレーナーである鍼灸師の方に身体のメンテナンスについて指導していただいています。先週はサプリメントなどを取り扱う、わかさ生活さんに目のケアについて教えていただき、eスポーツアナリストの但木一真さんに戦い方の分析方法について、法律事務所の先生に契約関係について教えていただくなど、他の学部にはない特殊な授業ですね。

−−その中でも、一番重要なことは何だと思われますか

講師や業界関係者と繋がりが持てる部分だと思います。個人でゲームをプレイしているだけでは、プロゲーマーとして活躍するための人脈作りが難しいことが多いです。eスポーツ科は開講して4年が経ち、業界人との繋がりも多いため、卒業後の就職先やスポンサーを生徒に紹介しやすい環境になりました。この点が学生にとって1番の魅力だと思います。

また、1人で黙々と技術向上に励む方法も良いと思いますが、同じ目標を持つライバルと切磋琢磨しながらリアルな環境で練習できるところも貴重な時間だと思います。

日本のeスポーツ界はこれから伸びる

Photo by Mark Cruz on Unsplash

−−eスポーツは2024年の五輪競技になる可能性も出ていますよね

業界が盛り上がるためにも五輪競技になって欲しいとは思います。オリンピック競技になると、わかりやすく世間一般に認知されるので喜ばしいことですよね。けれど、競技候補を外れたとしても、大きな大会は他にもさまざまあるので、選手が落胆することはないと思っています。

−−やはり日本は世界に比べてeスポーツの認知度は低いのでしょうか

低いですね…。その理由は小さい頃からのゲームプレイ環境にあると思います。日本のゲームといえばPlayStationやNintendo Switchなど、家庭用ゲームでのプレイがほとんどですが、海外はパソコンでのゲームプレイも家庭用ゲーム同様普及しています。

例えば、同じアジア圏の韓国でも、家から徒歩5分10分圏内にeスポーツカフェのような場所があり、学生はここに学校帰りに集まり、ゲームをするという流れが当たり前にあります。

一方、日本ではパソコンに触れたことがないという子も増えており、本校の学生の中にも入学後、初めてパソコンでゲームをした、という子も多数います。eスポーツに興味のある子でも慣れてない子がいるほど、日本では「パソコンでゲーム」は浸透しておらず、小さい頃からそういった文化が根付いているのといないのとでは、スタート地点が違いますよね。なので、他アジア圏とも認知度で差が生まれているのかなと感じています。

けれど、日本の家庭用ゲームで技術を磨いている子もいるので、「ゲームに対する勘」は日本人も良く、これから伸びていくポテンシャルはあります。日本の成長を見込んでか、本校にも中国や韓国から留学生が来ていて現在も10名程いるんですよ。

−−なぜ現地の専門学校ではなく、日本に留学するのでしょうか

中国や韓国のeスポーツ産業はもうすでに出来上がっていて、「今から参入しづらい」と留学生は言っていますね。”日本のeスポーツはこれから、けれどゲームに関してのポテンシャルはある”という認識は世界でも言われていることなので、自分が貢献して盛り上げていきたいという声も聞きますね。

これは日本人の学生、留学生共に言えることですが、まだ大きな国際大会で優勝した日本のチームはおらず、他の海外のチームがどれだけ強くて、日本との差はどれくらいかを認識しています。なので、大変さや厳しさを理解して、覚悟を持って入学してきていますね。

「業界研究」の授業で鍼灸師さんが生徒たちに、鍼の指導をおこなっていた。留学生も交じり、生徒同士楽しみながら学んでいる姿が印象的

−−日本でeスポーツを盛り上げるためには何が必要でしょうか

「パソコンでゲームをプレイする」という認識が広まれば、競技人口がすごく増えると思っています。また、eスポーツ選手の拡大のためには、上位のプロ選手が「夢のある収入」を得られていることが重要かなと。となると、大企業の方にスポンサーについてもらわなければ難しく、選手たちがそれに見合うよう、コンプライアンスなどの問題をクリアする必要があり、厳しい部分があります。こういった部分が総合的に伸びていかなければ、発展は難しいと考えています。スター選手の輩出も、競技の知名度を上げるために不可欠ですよね。

−−「eスポーツ界のスター」はまだ日本に存在しないのでしょうか

現在、「Rainbow Six Siege」というオンライン型シューティングゲームが本校で一番人気なのですが、このゲームで世界的に活躍している「野良連合」というプロゲームチームに所属している選手に憧れている生徒は多いですね。けれど、eスポーツはゲームごとにスターがいるので、彼らは「Rainbow Six Siege」で活躍している選手で、eスポーツを総括したスターというのは生まれにくいですね。

「League of Legends」はサッカー、「Rainbow Six Siege」は野球、「Overwatch」はバレーボールといったように全く異なる競技なので、簡単にはゲームを変えられないというのもeスポーツの難しさの一つだと思います。

ゲームなので盛り上がりの波もありますし、ゲーム自体が全て無くなってしまうことも多々あります。そういう場面にも合わせていかなければならないのは大変だと思いますね。

−−最後に、e-sports科の”ゴール”はどこなのでしょうか

一つのゴールである”卒業”の後、プロゲーマーやeスポーツのイベントスタッフや、ゲーム攻略サイトのライターや、ゲームのエンジニア・プログラマー、異業種への就職など道はそれぞれ異なります。もちろんプロゲーマーとして活躍したり、就職をしたりしてくれるのはうれしいですが、人間力を上げて卒業してくれたら十分です。

例えばですが、中学や高校に行けていなかったゲーム好きの子が、将来の仕事として活用できるかもと、eスポーツに光を見出して本校に入学してくれたとします。

同じような目的の子たちが周りにいる環境で、学校に来る習慣や社会性を身につけて、2年後に卒業し、プロゲーマーになったり、企業に就職する。そういった道を作る一つの術として、e-sports科が存在できていたらいいですね。

インタビュー後、「業界研究」の授業を見学させてもらった。そこで、卒業後も授業を手伝うことがあるという卒業生に”e-sports科の良さ”を聞いたところ、人脈を広げることができた点が一番良かったといい、「学校は、eスポーツ業界や企業との繋がりが濃く、卒業後も活かせる人脈形成に感謝している」と話してくれた。現在はプロゲーマーとして活躍するために、チームを探している最中だという。

学生たちと校舎内で会った際、「こんにちは!」と明るく挨拶してくれる生徒ばかりで、おもわずこれからのeスポーツ業界に期待が膨らんだ。若い強者たちが世界でどのように活躍するのか、要注目だ。

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