
■調査会社のコアサイト・リサーチによると、6月28日までに発表されたアメリカ国内の閉鎖店舗数はトータルで7,037店舗に上った。
今年は上半期だけでも、昨年1年間で閉鎖となった5,864店を超えるペースで店舗閉鎖が起きている。
最近でも中西部や南部に展開するディスカウントチェーンのフレッズ(Fred's)が4月に発表した159店舗の閉鎖に続き、5月も100店以上の追加閉鎖、今月も50店近くの追加閉鎖を発表した。
婦人服小売チェーンのドレスバーンも先月20日、事業終了に向けて全米にある650店舗をすべて閉鎖する計画であることを発表した。
また低迷するインテリア&雑貨チェーンのピア1インポートも今月、57店舗の店舗スクラップを発表した。4月に発表された45店舗閉鎖から閉鎖店舗数を引き上げたのだが、直近の既存店ベースが13.5%の減少からさらなる大量閉鎖が予想されているのだ。
リアル店舗の大量閉鎖は電子商取引の普及が拡大していることで起きている。今の消費者は店に行かず、アマゾンなどのオンラインストアで買い物をすることにより消費行動の地殻変動が起きているのだ。
スイスの金融グループUBSはEコマースのシェアが伸びることで2026年までにアメリカ国内の7.5万店が閉店するとの試算を発表している。UBSの予想ではオンラインストアのシェアが1ポイント上昇する毎に8,000~8,500店が閉鎖となる。
実店舗を閉鎖に追い込むのはECマーケットで圧倒的なシェアを誇るアマゾンだ。アマゾンなどのEコマースサイトが売り上げ全体の16%から2026年には25%になる。それまでに最大で7.5万店と閉鎖となるとみられている。
最もECの影響を受けるリアル店舗はアパレル店で2026年までに2.1万店が閉店となる。次に家電店で1万店を失い、ホームファーニッシングの8,000店、ホームセンターの1,000店がそれぞれの実店舗をたたむことになるのだ。食品もECシェアが現在の2%から10%に上昇することで、スーパーマーケット7,000店舗がスクラップとなる。
大規模ショッピングセンターが苦戦する中、今年3月、ニューヨーク市最大の再開発プロジェクトで複合施設の「ハドソンヤード(Hudson Yards)」の東側部分「イースタンヤード(Eastern Yard)」がオープンした。
2024年に完成するハドソンヤードは総事業費250億ドル(約2.8兆円)と投じ、超高層オフィスビルやショッピングセンター、住宅、レストラン、公共スペースなどが入り、広さは合計28エーカー(約3.4万坪)に達する。3月15日に完成したフェイズ1は10番街30丁目から34丁目の区画。
特に見どころとなるのは蜂の巣型の巨大モニュメントで公共スペースの「ベッセル(The Vessel)」とニューヨーク市内に初出店となるニーマンマーカスを核テナントにしたショッピングセンターだ。
皮肉にも、シャネルやルイヴィトン、ロレックスがテナントになる高級ショッピングセンターはアマゾンエフェクトだけでなく、巨大で象徴的なベッセルによって苦戦に追いやられている。
ベッセルから人が流れないのだ。
トップ画像:ニーマンマーカスのあるショッピングセンター内からみたベッセル。ベッセルは合計で2,500段近くとなるステップに80ヶ所の踊り場があり、高さは150フィート(約45メートル)となる展望台だ。

蜂の巣型の巨大モニュメントを見れば観光客なら一度は登りたいと思うだろう。上の画像ではベッセルの向こう側にショッピングセンターが見える。

エレベーターは止まっており、トップまでは階段を上がって登らなければならない。

上から内側となる下を見ると吸い込まれそうになり怖い。

ベッセルは隣にあるショッピングセンターにとってボトルネックとなる。なぜなら上まで登って降りてくると疲れるから...結果、ショッピングセンターに行かない、(モール内を)歩かない、(5階まで)登らないのだ。

ニーマンマーカスがある5階まで行こうとすれば、エスカレーターがアチコチに散らばっているため、SC内をさらに歩かなければならない。モールに回遊性を持たせるため、エスカレーターの場所をフロアによって変えている古い時代のSC設計だ。階が上がればあがるほどお客の数が減っている。まだ埋まっていないテナントも結構あった。

5階にあるニーマンマーカスまで行ってみると、お客はまばらどころかほとんどいない。頼みの観光客でさえニーマンマーカスがある場所まで上がっていかないことになる。ニーマンマーカスの撤退は避けられないだろう。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ハドソンヤードのベッセル(Vessel)に登るのはいまのところ無料ですが、オンライン予約が必要です。先日のニューヨーク視察では参加者のためにオンラインチケットを入手しようとしましたが、2週間前でも希望していた時間帯のチケットはソールドアウトになっていました。「どーしよう?」と心配しましたが、行ってみると当日チケットは手渡しされていました。で、視察前、確認のため後藤は一人でベッセルに登ってみたのです。感想は「怖い」と「疲れた」。ベッセルは合計で2,500段近くとなるステップに80ヶ所の踊り場があり、高さは150フィート(約45メートル)になります。エレベーターは動いておらず自分の足で上がらなければなりません。トップまで行くともうコワい、コワい。高所恐怖症ではありませんが、絶妙な高さで下は見れたものではありません。で、再び階段をつかって降りるとドッと疲れます。運動して気持ちがいいものの汗でびっしょり。で、疲れる...
⇒で、次にベッセルの前にあるショッピングセンターに行くのですが、疲れで足取りが重くなっています。ニーマンマーカスがある5階まで行こうとすれば、エスカレーターがアチコチに散らばっているため、SC内をさらに歩かなければなりません。モールに回遊性を持たせるため、エスカレーターの場所をフロアによって変えているのです。古い時代のSC設計です。階を登れば上るほど客の数が減っている印象でしたね。まだ埋まっていないテナントも結構ありました。で、案の定、5階にあるニーマンマーカスまで行ってみると、お客はまばらどころかほとんどいない状況で。あれではニーマンマーカスの撤退は避けられないと思います。頼みの観光客でさえニーマンマーカスがある場所まで上がっていきません。ベッセルがボトルネック。蜂の巣型の巨大モニュメントを見れば観光客なら一度は登りたいと思います。で、登ったら結構疲れるため、前にあるショッピングセンターに行かない、(モール内を)歩かない、(5階まで)登らないです。
ニューヨーク・マンハッタンに行ったら、ハドソンヤードにぜひ行って見てください。ベッセルに登った後、モールの行けばよーくわかると思います。ハドソンヤードの場合、そもそもテナントの誘致が難しいでしょうねぇ。