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- 2019年06月27日 19:33
現場スタッフから見たフジロック黎明期の衝撃
2/2苗場での初開催
ー苗場に誘致されたときにここがフジロックの安住の地になると思いましたか?小川 僕はそこまで思わなかったですね。そもそも当初は近隣住民から開催を反対されていましたし。むしろ「ほんとにここでできるのかな?」と思ってました。
鯉沼 そうですね。
ー近隣住民の反対は治安的なことを危惧して?
小川 そうですね。
鯉沼 あとは騒音ですね。今のグリーンステージのところももっと丘になっていて木が植えられていたんですよ。
小川 あそこはもともとゴルフのショートコースがあったんです。それで木がいっぱいあって。「この木は切ってもらえないですよね?」って言ったらやってくれたんですよ。それはビックリした。
鯉沼 「この人たち本気だ!」みたいな(笑)。それならこっちも本気で苗場と向き合わなきゃダメだろうということで。
ー苗場の1年目が終わったときは地元のみなさんも含めてどういう反応があったんですか?
小川 開催前は反対運動もあったけど、1年目が終わった時点では歓迎ムードになってましたね。
ー経済効果もありますもんね。
小川 経済効果もあるし、思ったほど治安の悪さも感じなかったと。
鯉沼 そこはフジロックのお客さんに助けられた部分もありますね。97年があって僕らも反省したし、お客さんも反省したということだと思うんですよ。98年の時点で僕らもお客さんもこのままじゃフジロックは続かないという、そういう気持ちになっていた。
ーフジロックとお客さんの戦友意識みたいなものが生まれたと。
鯉沼 そうそう。それでお客さんも自らゴミを拾ってくれたり。タバコをポイ捨てするような人がいたら、お客さんたちが自ら注意してくれたんですよ。
ーある種の自浄作用ですよね。
鯉沼 ぐちゃぐちゃになった97年を経て、お客さんも僕たちも同じベクトルで進んだのが98年。その熱量を99年に苗場に持っていけたんですよね。地元の人たちは金髪だ、モヒカンだ、入れ墨だってガラの悪い人たちが大挙押し寄せよるんだろうなと思っていたところに、蓋を開けたらめちゃくちゃマナーがいいみたいな。
小川 モヒカンで入れ墨を入れてる人がゴミを拾ってるとかね。
鯉沼 それで地元の人たちもいい意味でビックリしちゃったんですよね。
今やフジロックのお客さんは日本人に次いで、欧米の人よりもアジアの人が増えている
ーそういう意味でも初年度の天神山の失敗はのちのフジロックにとってポジティブな影響があったという。小川 不思議だけどそうなんですよね。近年は逆にそういう自主的なマナーのよさが落ち着いてきたところもあって、日本語だけでフジロックのイズムを伝えているだけではダメなんだと思って英語のみならず韓国語や中国語でもアナウンスしなきゃいけないという流れになってるんですけど。今やフジロックのお客さんは日本人に次いで、欧米の人よりもアジアの人が増えているので。もちろん、そのことをネガティブな要素として捉えるつもりはないんですけど。
ー今、世界的な視野で見たら”ロック”という冠が付いてるフェスはマイノリティでもあると思うんですけど、フジロックは日本のフェスのオリジネーターとしてもロックフェスと名乗ることに大きなアイデンティティであると思うんですね。そのあたりについてはどう思いますか?
鯉沼 ロックという概念はより抽象的になってますよね。
高崎 だから、スタンスとしてのロックということだと思うんですよ。たとえば去年も今年もラインナップだったり出演者の音楽性としてのロックではないと思っていて。
鯉沼 そうだね。
小川 だからもはや精神的な意味でのロックだよね。
ーただ、去年のフジロックのヘッドライナーの初日がN.E.R.Dで、2日目がケンドリック・ラマーで、そして、3日目がボブ・ディランであったことにフジロックの挟持を感じるというか。
高崎 それをきれいにまとめて言うならそうだけど、実際にはそんな計算はなくて。偶然の産物でもあるんですね。言ってしまえば、ケンドリックも精神性的にはロックだなって思うし。
ー確かに。
高崎 彼の音楽性やパフォーマンスはポップなわけではないですよね。ものすごくエッジが立っているし。要はそこが軸なんですよね、フジロックって。それは打ち込みの音楽でもヒップホップでもロックバンドでもそこの軸に対しての独自の基準があるんだと思います。
ーその話を踏まえて、ケミカル・ブラザーズ、SIA、ザ・キュアーという今年のヘッドライナーについてはどうですか?
小川 まず、SIAに関してはここ2年くらい追っかけてたんだよね。
高崎 そうですね。言ってみたら今年のラインナップってフジロックファンにとっては「またケミカルかよ」って言いながら絶対に観たら楽しいんですよ。確実に言えるのはフジロックのケミカルは最高なんです。これは間違いない。あの空間で観るケミカルは他のフェスやイベントとは別世界であるという意識は僕らもお客さんも共有していて。で、キュアーに関しては今年40周年ということがあって、それはフジロックとしても世界的にも特別なタイミングで。でも、このラインナップだけだと面白くないんですよ、ブッキング担当としては。そういうところで、去年ケンドリックという新しい時代感を見せたところでまた同じような色を見せちゃうと「またじゃん」ってなるとの新しいアイコンを見せないといけないと思っていて、他のブッキング担当と話して「SIAが面白いんじゃない?」ってなったんです。これが初来日になるし、フジロックにとっても新しい見せ方ができるんじゃないかと。
小川 あとはSIAと同じ日にはマーティン・ギャリックスもいるしね。
ーEDM系譜の流れというか。
高崎 そう、ここは新基軸だと思いますね。
YouTubeの配信に関して
ーあと、去年から実施したYouTubeの配信に関してはどうですか?高崎 現段階では今年もやる予定ではあります。
ーコーチェラのYouTubeでの生中継を見ても明らかですけど、あれもまたフェスの一つの楽しみ方になってますよね。もちろん、カバーできるアーティストの範囲や券売に対する懸念もあると思いますけど。
高崎 そうですね。正直、どこまでのアーティストが中継の許可が降りるのかもギリギリのタイミングにならないとわからないし、個人的には諸刃の剣という側面もあると思いますけどね。その反面、やっぱり現場に来る人は来るし。YouTubeの生中継を観て現地に来たいと思う人もいるだろうし。
小川 あれは去年やっていいプロモーションになったという気はするけどね。
高崎 最初から「YouTubeで生中継やるんでしょ?」って思われるのはちょっと違うけど思うけど、でも、フジロックって特定のアーティストを観に行くことが目的の中心ではないと思うので。
ー最後に、みなさんが個人的に今年のフジロックで最も期待していることはなんですか?という話で締められたと思うんですけど。
鯉沼 現段階ではまだそこまで気持ちがいってないのが正直なところかな(笑)。
高崎 僕は、シンプルにSIAがヘッドライナーを務めてくれる2日目が新しい試みという話をしたんですけど、そこでどういう客層になって、どういう反応があるのかは楽しみですね。
小川 俺もマーティン・ギャリックスのリアクションは楽しみだね。
高崎 SMASHの社内でも賛否両論でしたからね(笑)。その中でも僕はSIAとマーティン・ギャリックスの組み合わせを推した一人だったので。
小川 そうだね(笑)。マーティン・ギャリックスに関しては演出面でも特攻やレーザーとかをガンガン導入するので。それがEDMのフェスとどう違うリアクションが生まれるのか。それは楽しみですね。

期間:2019年7月26日(金)27日(土)28日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
オフィシャルサイト:
http://www.fujirockfestival.com
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