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ペイペイの"100億改悪"は極めて巧妙な策

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■3000万人のLINEユーザーに“ペイ”を使わせる方法

キャンペーン総額がより大きかったのは、5月20日に始まったLINEペイの「300億円祭」でした。このキャンペーンの特徴は、LINEの友だちに何人でも1000円を送ることができること。しかし受け取れるのは1人1回、1000円までという制限があります。つまり300億円の予算で3000万人のLINEユーザーにLINEペイを使い始めてもらおうという企画だったわけです。

5月20日に始まったこのキャンペーンは、初日で90億円、3日目には150億円に到達しましたが、10日間のキャンペーンを終える時点では200億円までしか届かず。LINEは300億円を配りきるまでキャンペーンを続行し、6月10日に300億円を達成したことを発表しました。獲得ユーザー数は200億円なら2000万人、300億円に到達すれば3000万人ということになります。

このキャンペーンに関しては、「ユーザーが贈られた1000円を使わなければ意味がない」と言われましたが、LINEペイはそのあたりの対策も万全でした。

登録を済ませて1000円を受け取ると、その直後にLINEペイから別の2枚のクーポンが送られてきます。1枚はローソンで使える100円クーポンで、もう1枚はファミリーマートで使える100円クーポン。私にとってはどちらも近所のよく行くコンビニです。そこで150円のペットボトル飲料を買おうと入ったコンビニで、「せっかくだからあのクーポンを使ってみよう」ということになりました。

クーポンを開いて指示通りにタップしていくと、LINEペイの画面になります。そこにはクーポン以外に例の1000円がチャージされていて、スマホのバーコードを見せるだけで、現金を一切使わずに買い物することができました。

ここで重要なのは、一連の動作により、私がLINEペイの使い方を学習したということです。後発の決済サービスも、こうして着々と新しいユーザーを獲得し、1人でも多くのユーザーがスマホ決済を体験するように仕向けているわけです。

■スマホ決済に本腰を入れるセブン-イレブン

さて、スマホ決済は今後どうなっていくのでしょうか。予測としてはおそらくこれから先、3つの変化が起きるはずです。順に説明していきましょう。

① 交通系以外の非接触カード型の電子決済が衰退し、スマホ決済が主流になる

日本の電子決済はこれまで、JR東日本のSuicaに代表される、交通系ICカードによる非接触型の決済が主流でした。これに追随する形で楽天のEdyやセブン-イレブンのnanaco、イオンのWAONといった非接触型の電子マネーが登場してきました。ところが、これからは交通系を除いたカード決済型の電子マネーは、急速にスマホ決済に移行しそうです。

その根拠は2つあります。1つはそもそもこれまで多くのユーザーが複数のカードを持ち歩くことに不満を持っていたこと。スマホ決済はその不満を解消します。

そしてもう1つの根拠は、大手流通自体がスマホ決済に力を入れ始めていることです。その象徴として、セブン&アイが7月から開始するセブンペイが挙げられます。nanacoを廃止するわけでもないのに突然セブンペイが始まるというニュースは、このままスマホ決済が社会に浸透していく可能性が高いことを、セブン&アイが理解している証拠です。

■しかもTポイントまで凋落

② Tポイントが窮地に陥る

電子マネーと同時にここまで大きく発展してきたTポイントも、スマホ決済の普及によって大きな影響を受けそうです。

実際、流通・小売業界ではこの1年、小売店のTポイント離れが話題になっています。スマホ決済の台頭と同時に、2つの中心企業がTポイントから離脱しそうなのです。

その1つがヤフーです。この6月からヤフーショッピングやヤフーオークションでペイペイが使えるようになり、これまで付与されてきた期間限定ポイントが、Tポイントではなくペイペイで付与されるように制度が変わるというのです。

もう1つはファミリーマート。こちらも独自のファミペイを導入することになっています。これまでTポイントを支えてきた中核企業が独自サービスに移行することで、業界の垣根を超えてさまざまな小売店で使えるTポイントの基本構造が揺らぐことになります。

実はTポイントの一番の存在価値は、さまざまな業界を横断して消費者がどのように消費行動をしているのか、ビッグデータから消費分析を行うことにありました。ところが、このビッグデータの世界でTポイントが後退するというのは大きな変化です。

■実質、残る椅子はあと1つか2つ

③ これからの1年でスマホ決済の淘汰が進む

このように急速に台頭してきたスマホ決済ですが、現在は過剰競争の状態にあります。たとえば、ローソンで使えるQRコード決済サービスは、ペイペイやLINEペイなど合計10サービス。明らかに数が多すぎます。ここから中国と同じように2社、ないしは3社ぐらいに主要決済サービスが淘汰されていくことになるでしょう。

では、勝つのはどこか。1つのポイントは加盟店獲得競争です。POSレジでサービス増に対応できる大手コンビニなどと違い、一般の飲食チェーンや小売店では店頭にQRコードを置く形での導入が主流です。そうなると、店頭に置けるのはせいぜい3種類が限界で、小規模店舗にはとても10種類のサービスに対応することなどできません。

つまり、営業マンによる店舗開拓力に優れたサービスが有利。この観点で一番強そうなのは、ソフトバンク系列のペイペイだと私はにらんでいます。

また、日常的な利用者を増やすきっかけは「割り勘サービス」ではないかという説も根強くあります。友達と飲んでその代金を回収する際に、QRコード決済の割り勘サービスは便利です。問題は、すべての友達が利用していないと逆に面倒である点。LINEペイならこの問題が解決できることから、利用者のネットワーク規模で優位と言えそうです。

そうなると、残る椅子はあと1つか2つ程度。これをどこがどのような手段で確保するのか。いずれにしてもスマホ決済はこれからの1年で新しい局面を迎えることになりそうです。

(経営コンサルタント 鈴木 貴博 写真=ZUMA Press/アフロ)

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