hamburger menu
特集
Re:学び
「学生の頃、もっときちんと学んでおけばよかった」そんな風に感じたことがあるなら、今から「学び」について考えてみませんか。くしくも人生100年時代、世の中はグローバルになり、技術もどんどん進歩しています。だとすれば、大人だって学び続ける必要があるはず。人生を楽しむために必要な「学び」に関する特集がはじまります。

京都大学からNTT、そして劇団四季に 異色のキャリアを持つ人事コンサルタントが教える「伝わるプレゼン」

  • 2019年06月28日 10:00
  • SNS Icon

京都大学からNTTに就職し、エリート街道まっしぐらの中、劇団四季に入団…そんな異色のキャリアを持つBe yourself代表の岩下宏一氏。現在は、人事コンサルタントや研修講師として活躍し、「プレゼンテーションの極意」を多くの社会人・学生に教えている。

"会社員から未経験で俳優"という勇気のいる転職をした岩下氏だが、劇団四季に入る前は生活が変わることが怖くてあまり行動できず、発表の場などでは声が小さかったという。そんな内気だった岩下氏が、幅広い業種から何を学び、どのようにして「プレゼンテーション」のプロとなったのか、話を聞いた。【清水かれん】

−−NTTから劇団四季…どういった経緯で転職を決意したのでしょうか

29歳のとき、NTTからMBAの留学生の候補に選ばれまして、申し込みをするために今後の自分のキャリアビジョンをエッセイにまとめなければなりませんでした。けれど、これまで、他の人より良い成績を取る・取らなければいけない、ということだけに重きを置いていて、自分がこれから"こうなりたい"という姿が何も見えなくて。結局MBAは辞退してしまいましたが、これを機に、これまでの日常に戻るのではなく、幼い頃から憧れを抱いていた「ミュージカル・演劇」にチャレンジをしてみようと思い、池袋にある「池袋ミュージカル学院」に入学したんです。

−−入学時には劇団四季に入ると決めていたのですか

いや、ある日同級生が劇団四季の試験を受けるという話をしていて、「俳優の採用ってどんな風にするんだろうな」と興味がわいて。NTTでは人事をしていたので、応募のプロセスだけやってみよう、と入団テストに応募したことがきっかけです。

劇団四季の試験は、初めに書類審査があり、「宣材写真・デモテープ・芸歴書・作文」が必要で、ありがたいことに書類審査に受かりました。次に「歌・セリフの予備審査」そしていよいよ「本審査」。無事に終えたところで劇団四季の創立者である浅利慶太先生が直接話を聞きたい人がいる、とアナウンスがあり、僕も呼ばれたんです。

「君のような未経験のキャリアで入団しても、まず舞台に出られないぞ。もし舞台に出られたとしても像の着ぐるみの足1本として出るくらいで、キャストとして名前も出ないしほぼスタッフみたいなもんだ。到達点がそれだとしても君は来るのか?」、「1週間時間をやるから考えろ、もし来るというなら入れてやる」と言われました。

このオファーを受けたらどうなる、仕事を続けたらどうなる、を1万回くらいシミュレーションしました。いろんな未来を想像する中で、「劇団四季に入っておけばよかった」と後悔する未来だけははっきりわかったんです。後悔だけはしたくないと決意し、劇団四季へ入団しました。

−−すごい決断力ですね。入団してからはいかがでしたか

劇団に入ると、周りは「3歳からバレエをやっていました、大学で声楽をやっていました」という人たちばかりで、僕は何もしたことがないおもしろ採用みたいなものだったので、入った瞬間に、「こんな人たちと一緒にやっていかなければいけないのか、きついな」と思いましたね。例えば、劇団四季は毎朝バレエのレッスンがあるのですが、レッスン開始前の柔軟の時点で、みんなはペターっと股開きできるのに、僕はできず、前に映る鏡に僕の頭が一つだけ出ている状況が見えるんです。

劇団に入るまでは、良い大学・良い会社…と、恵まれた環境に身を置いていたので、そんなことを感じたことはなかったのですが、劇団に入った瞬間、1番の劣等生になってしまったんです。衝撃を受け、劣等感をもちましたね。

劇団四季で学んだことをいかし、起業

劇団四季時代の岩下さん

−−全く畑違いの業界。驚いたことも多かったのでは

劇団四季は劇団側が求めることができたら舞台に出られるし、できなければクビになる、シンプルな世界でした。突然、全団員が集められて1人ずつ歌わされ、「おまえとおまえクビな」と言われる…同期は1年後には1/3に減ってしまっている…当時はそんな世界だったんです。今は知りませんが。

僕は幸いなことに、『ライオンキング』ではシンガーとして、『嵐の中の子どもたち』というミュージカルではセリフもソロもある村長の役を、任せてもらえることができましたが、残念ながら僕も4年目でクビになってしまいました。「おまえは必要ない」と言われてとてもショックを受けましたね。

演劇を続けたいと思う一方で、劇団四季での4年間を考えたときに、自分ができないことをひたすら必死に背伸びしてやっていて、「本当に自分にとっての適職なのだろうか」と思っていたなと。劇団四季や他の劇団のオーディションを再度受けるのではなく、NTTで人事をずっとやっていましたし、人事系の会社で働くことにしました。

−−劇団四季での経験は役にたちましたか

まるで役にたちませんでした。働いていくうちに、「なんのためにNTTを辞めて、劇団四季に入って、今につながっているのだろう。過去をなかったことにしてしまうのか」と悩み、うつ病になってしまい、2年半くらい会社を休みました。会社にはよくしてもらい、10年ほど働いたのですが、完全に回復できず、退職し、今の仕事に至ります。

なので、現在の仕事は決意してやり始めたのではありませんでした。仕事を辞め、何をやればいいのかを考えている中で、劇団四季に入る前と後では、自分の「プレゼンテーション力」が変わったということに気づいたんです。そこで、劇団四季での経験をいかして、プレゼンテーションやコミュニケーションの仕方を教えようと思い事業をスタートさせました。1年目は年収70万円とかでしたけどね(苦笑い)。

プレゼンで意識すべき"3つの条件"とは

実際に、劇団四季に入団して身につけた「プレゼンテーション力」はどういったものなのだろうか。プレゼンテーションをする上で、意識すべきことを聞いた。

−−私たちが人に何かを伝える上で気をつけるべきことは…声や姿勢でしょうか

声や姿勢はそこまで気を使わなくていいと僕は思っています。良いに越したことはありませんが、普通にしていればいいですよ。今でこそ僕は声が出ていますが、昔は小さい声で姿勢も悪かった。それが今のようになったのは、劇団四季時代の日々のトレーニングなどが影響していると思います。声の通りや姿勢は5分10分の努力で改善されるものではないのですし、それよりも重要なのは、「相手に対してちゃんと正直に向き合って話しているか」を意識することだと思います。

−−相手に対して正直に向き合うとは?

カール・ロジャーズという心理学者が、カウンセラーが話を聞くときに必要な要素は3つあり、「受容」「共感」「自己一致」と言っています。この3つの要素がなければ、相手を理解できず、信頼関係を築けないというのです。ロジャースは聞く側の話をしていますが、「話す」と「聞く」は表裏一体で、話し手と聴き手の立場が反対になった場合でも、いきる内容です。

面接やプレゼンテーションを行う際に、発表内容を1から10まで全て暗記して、それをいかに間違えずにそのまま伝えるかを考えている方がいますよね。それだと、台本をただ読んでいるだけで、相手に伝わらない発表になってしまいます。聴衆がわからない顔をしていれば、補足をする。相手がその内容はいいよ、という顔をしているのであれば、次の話題にいく。そういう臨機応変な対応が必要です。

ホワイトボードに書き、講義のように説明してくれた

つまり、プレゼンテーションで大切なのは、聴き手のことをきちんと「受容」し、聴き手が感じていることに「共感」して話すことなんです。

そしてもう一つの「自己一致」。これは、相手に何かを伝える上では「自分が心から話したいと思うことを話す」ということです。例えば学生さんが面接対策で悩んでいるときには、こうアドバイスします。

「相手がいかに自分のことを気にいるかということばかりを考えていると、本当の自分について語ることができなくなる。すると企業は何も君のことはわからない。これでは内定の出しようがないよね。相手に気にいられることを言おうとするのではなく、自分のことを正しく相手にわかってもらうには何をどう話せば良いか、ということが重要だよ」と。

プレゼンテーションは創造と破壊だ

−−では、相手に伝える話し方をするために、準備しておくべきことはなんでしょうか

僕はプレゼンの授業をする際、暗記をするなと最初に伝えます。丸暗記ではなく、話す内容の骨組みだけを覚えて、それを支える「理由」や「具体例」、そして最後に「結論」を頭にいれておくだけでいいんです。

プレゼンテーションを行う際、頭においておくべき骨組み

具体的には、頭の中に「PREP+F」の話の骨組みを作ります。「PREP+F」とは「Point(主語・結論)」「Reason(理由)」「Example(具体例)」「Point(結論)」「Future(未来)」で、この骨組みを追いかけながら、その場で頭に浮かんだ言葉を話すと、その瞬間に出てきたリアルな言葉でプレゼンテーションを行えるのでウソ・偽りは無くなります。

総括すると、プレゼンテーションの極意は「創造と破壊」です。

伝えたいことは事前に考えておかねばならないのですが、実際にプレゼンテーションする場になったら、一度ぶっ壊してくれと。そして、その場での聴衆との対話において、何の言葉を選べば良いのかを再構築するんです。用意してきた言葉が、その場に最適だとは限りません。言い忘れたことがあったとしても、それはその場で必要じゃなかったことなんだと思ってください。

また、初めから何もかもできる人はいません。「今日はうまく表現できた」「今日は最悪だった」「今日は微妙!」と、失敗を積み重ねていくことによってうまくなります。"自分のことを正確に相手に伝える"ことだけを考えて、プレゼンテーションでも、面接でも、失敗してもへこたれず挑み続けることで華が開くと思います。

プロフィール
岩下宏一(いわした・こういち)
1970年生まれ。鹿児島県出身。京都大学法学部卒。93年NTT入社、本社人事部配属。その後NTTコミュニケーションズ設立時の人事部立ち上げに参画。仕事の傍らミュージカル専門学校に通い、劇団四季オーディションに合格、エンタテインメントの世界へ。『ライオンキング』他3作品・500ステージに出演。2004年劇団四季退団、人材採用支援最大手・レジェンダ・コーポレーション入社。大小50社へのコンサルティング業務を経て、同社人事部長に就任。2014年独立、ビーユアセルフ設立。長年のビジネス経験とプロのミュージカル俳優として培った「伝える力」をミックスした「インタラクティブ・プレゼンテーション」のセミナーや研修に登壇。人事コンサルタントとしても活動中。

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。