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【99カ月目の郡山市はいま】除染でも放射線量下がらぬ通学路。数値知らされず被曝リスクにさらされる住民。再三の要請も、市は「環境省が追加除染しない以上、何も出来ない」

福島県郡山市が2013~2014年にかけて実施した道路除染で、空間線量がわずかしか下がらなかった区間がある事を市が把握しながら周辺住民に周知せず、再除染も含めた線量低減措置も一切講じていない事が分かった。事態を重く見た蛇石郁子市議が市議会一般質問で当局の姿勢を質したが、「空間線量が高いのは局所的。年間被曝線量は1mSvを上回らない」などと繰り返すばかり。住民は「歩道を再舗装するだけでも線量は下がるのではないか」と何度も市に対策を求めて来たが、市側は「御理解いただけるよう、ていねいに説明していく」と線量低減策は講じない考えで、住民の怒りは収まらない。

【6億で除染しても0・6~0・9μSv/h】

問題が浮上したのは、郡山市鶴見坦2丁目で実施された道路除染。「H24-第1工区」として、2013年8月28日から2014年10月31日にかけて行われた区間のうち、一部区間の歩道(約200メートル)で除染前後の空間線量がわずかしか下がっていなかった。周辺にはマンションや市立薫小学校、鶴見坦保育所もある。請け負った地元企業の除染業務共同企業体には、国の交付金から6億3075万円余りが支払われた(「H24-第1工区」全体の金額)。

蛇石市議が今年4月に議員調査で入手した文書によると、除染業者が除染前(2014年3月17~18日)に20メートル間隔で測定した数値は、高さ1メートルで0・645~0・169μSv/h、50センチで0・902~0・156μSv/h、1センチでは1・409~0・134μSv/hだった。除染が終了した2014年7月28日~8月4日(4カ月後)の同地点での測定値は、高さ1メートルで0・625~0・199μSv/h、50センチで0・735~0・182μSv/h、1センチでは0・987~0・123μSv/hだった。例えば、除染前に高さ50センチで0・902μSv/hだった地点の低減率は約21%にとどまっていた。

低減効果を得られないまま、道路除染は予定通りに終了。追加除染など改めて放射線量を下げる対策は講じられていない。市は周辺住民に対し、除染後の測定値を回覧板などで知らさせていない。蛇石市議も「こういう文書が存在している事すら知らなかった」と話す。

郡山市原子力災害総合対策課によると、市は環境省にフォローアップ除染の候補として申請。環境省は2016年10月と2018年11月の2回にわたって当該地域の空間線量を線量計とガラスバッジを使って測定した。しかし、それぞれ約1カ月後に、郡山市に対して「測定結果から推計すると、追加被曝線量が年1mSvに達しないためフォローアップ除染の対象とはならない」との回答があったという。

取材に応じた原子力災害総合対策課の鈴木道夫課長は「追加被曝線量が年1mSvを超える場合にフォローアップ除染を行うという環境省のガイドラインがある以上、市独自で線量低減策は行えない。舗装工事を行う理由も無い」と話した。




小学生の通学路にもなっている歩道は除染をしても国が除染の目安としている0・23μSv/hを下回らなかった。筆者の線量計でも地表真上で0・4μSv/h超。しかし、除染業者による測定結果は周辺住民には知らされないまま除染が終了。追加除染などの低減策も講じられていない=郡山市鶴見坦2丁目

【住民が申し入れても行政動かず】

当該道路に面したマンションで組合の理事長を務める大須賀芳雄さん(70)は、大津波で南相馬市鹿島区の自宅を失い、2013年9月に郡山市に転居してきた。2013年9月の入居以来、郡山市が貸し出している線量計を使ってマンション周辺の空間線量を定期的に測定。写真などの記録に残してきた。

測定を通して行政や新聞などで公表されている数値との大幅な乖離を懸念した大須賀さんは2016年3月、郡山市の品川萬里市長に「郡山市の放射線量の実態と除染継続のお願いについて」と題した文書を提出。何ら回答が無かったため、翌2017年1月にも「除染継続への再度の訴えについて」を品川市長に届けた。大須賀さんは「そもそも放射線量は、重ねての除染をしない限り大きく減衰するものではありません」、「このままで大丈夫なのか不安になります」などと訴えたが、市側からの回答は無かった。

今年4月には、環境省の福島地方環境事務所(福島市栄町)を訪れ、自身の測定結果を写真とともに提出したうえで追加除染を求めた。今月に入り、福島県の内堀雅雄知事に対しても「ホットスポット区域に対する線量軽減策へのご英断を」と題した手紙を郵送し、「県知事と郡山市長連携の中で政治判断を執り行ってくださいますよう」求めた。この間、マンション住民らと環境省、福島県、郡山市の担当者との間で話し合いが持たれたが、追加除染はしないとの結論は変わらなかったという。

県立高校で長年、音楽を教えて来た大須賀さん。「市は『透水性舗装のため低減効果には限界がある』と説明しているが、アスファルト舗装をやり直すなどやれる事はあるのにやらない。ここだけやると他の地域から『うちもやってくれ』という声があがり公正公平の観点からも出来ない、と説明されたが、到底納得出来ない」と憤る。

「私がおかしいと思っているのは2つです。電離放射線障害防止規則では、約0・6μSv/h以上で管理区域とされて立ち入りが制限されます。このマンション周辺はそれに近い数値が続いているにもかかわらず、市は何ら対策を講じません。法律が反故にされている。これはおかしいです」


蛇石市議が議員調査で入手した除染前後の空間線量。除染業者が測定結果を市に報告していたが、周辺住民には一切知らされていない。蛇石市議も大須賀さんも「こんな資料があるとは知らなかった」と驚いている

【市議会で質しても具体的答弁なし】

今月19日の郡山市議会本会議。一般質問に立った蛇石市議は、次のような言葉で市当局の姿勢を質した。

「除染が終了しても、空間線量の低減効果が低かった場所がいくつかあり、その中でも道路除染業務委託平成24年第一工区内には、今なお除染の判断数値だった0・23μSv/h以上が続いている歩道があります。地域住民は何とかして線量を低くして安心して生活出来る環境を取り戻して欲しい、と願っています」

「このまま手を施さず、自然減衰のみに期待する事について、住民の理解は得られていません。線量低減を図り、市民の被曝格差を是正する事は重要と考えます。原子力災害からの復興にあたっては、被曝を避ける権利を含む『健康への権利』が基本的人権として最大限尊重されなければなりません。リスクを過小評価せず予防原則に立つ事、意思決定プロセスへの当事者参加を保障する事は基本・大原則です」

しかし、生活環境部の渡部義弘部長は「より分かりやすくていねいな説明を心がけるとともに、関係機関とよりいっそうの連携を図りながらリスクコミュニケーションの強化に努め、住民の不安解消に向け取り組む」、「局所的に空間線量率が高い個所が確認された場合の再除染等の実施については、環境省と協議していく」と答弁するにとどまった。今回、問題が発覚した鶴見坦地区の道路除染について具体的には言及せず、「住民の理解」に力点を置いた答弁だった。

これではまるで、被曝リスクを懸念する住民の認識が間違っているかのようだ。市は「除染後の空間線量はホームページで定期的に公表している」と説明するが、そもそも限られた地点での測定であるうえに、インターネットを使って住民が自らアクセスしないと情報を得られない仕組み自体、放射線防護に消極的と言われても仕方あるまい。

取材に対し、蛇石市議は「これは氷山の一角で、市内には他にも除染の効果を得られなかった箇所があるのではないか。下がったところと下げられなかったところで被曝リスクに格差が生じるのはおかしい。線量の低い地域に合わせて舗装し直すなど線量低減策を講じるべきだ」と話した。

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