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日産・ルノーの〝呉越同舟〟株主総会で見えたすれ違い - 永井隆 (ジャーナリスト)

ルノーとのせめぎ合いを経て、株主総会で統治(ガバナンス)改革に関わる定款変更が可決された日産自動車。しかし、経営の独立性を確保したい日産と、日産を経営統合したいルノーとの攻防は、これから激化していくのは間違いない。果たして、日産はこの先、どこへ向かっていくのか。

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「西川(廣人・日産)社長には、頑張ってもらいたい」、「ルノーとの関係は平等ではない。いまは統合すべきではない」、「ルノーは経営統合を強いるのか。議案に1度は賛成しながら反対に転じたのは、背信行為だ」…。横浜市で6月24日に開かれた120回目の定時株主総会。3時間17分に及んだ総会で、22人の株主が質問に立ったが、西川社長への支持とルノーに反発する意見が、それなりに多かった。昨年11月のゴーン元会長の逮捕以降、日産の株価は低迷しているのにだ。

日本社会では、経営統合を含め敵対的なM&A(企業の合併買収)に対する拒絶感が、相変わらず根強いことを浮き彫りにもした。伝統企業である日産の一般株主にはOBも多く、出身企業の経営安定を願う向きが主流といえよう。

とはいえ、”安定”とは異なる状況に、いまの日産は置かれている。

昨年11月のカルロス・ゴーン元会長の逮捕を受け、日産はガバナンス改革に着手。

その柱としたのが、従来の「監査役会設置会社」から、社外取締役により経営の監視を行う「指名委員会等設置会社」への移行だった。ところが、日産株の43%をもつルノーは日産の経営への関与が薄れるとして、これに反発。総会での採決を棄権する意向を一時は示す。仮に棄権していたなら、定款変更はできなかった。

このため、役員人事を決める「指名」、経営の執行を監査する「監査」、役員報酬を決める「報酬」の3委員会のうち、ルノーのジャンドミニク・スナール会長を指名委に、同じくティエリー・ボロレCEOを監査委の委員とすることで、何とか折り合いをつけた。

「ルノーの経営関与が強まることはないし、絶対させない」。こう語った西川氏だが、これからどうしていくのか。

基本のシナリオとしては、日産の独立性が確保できた時点で退任していく。「次世代の経営者に移行できるよう、スピードを持って準備する」(西川社長)。ポスト西川としては、6月16日付でCOOに昇格した山内康裕氏が有力だ。

だが、それ以前にルノーそしてフランス政府からの統合への圧力に対抗する必要に迫られる。2社を束ねたカリスマ経営者が退場したため、日産は独立性を自力で勝ち取っていかなければならない。場合によっては、1999年以来のルノーとの関係を清算し、新たなパートナーとの資本関係をつくっていくことまで、視野に入れてもである。

CASEの時代、FCAとの統合、自動車産業の世界再編の気配

日産側の総大将である西川氏だが、「孤高の経営者。他人の話を聞かないタイプ。プライドが高く、頭を下げるのを嫌う」(日産幹部)と指摘される。現実に、完成検査問題が発覚した2017年秋、最初の謝罪会見で数秒しか頭を下げなかったことが話題になった。

東大経済学部卒で購買出身。「戦国時代の石田三成ではないが、才が高い分、西川さんは頑なで、周囲から理解を得られない面がある」(同)。

こうしたなか、総会前の6月16日付で川口均氏が専務から副社長に昇格した。川口氏は西川氏と同じ1953年生まれ。一橋大学経済学部を卒業し76年に入社。欧州事業や人事、グローバル渉外、政府の窓口役を務めてきた。「明るい性格の川口さんが、西川氏と社内、さらに日本政府とをつなぐパイプ役として機能していく。もちろん、ルノーとの間にも立つ」(別の日産首脳)。

ゴーン元会長は、日産を高配当させることでルノーに利益を与え、関係を安定させてきた。「アライアンスにおいて、両社は対等の関係」を20年近く継続させてきた。

だが、日産は高配当を改めて、不振のアメリカ事業の立て直し、さらにCASE(接続、自動運転、シェアリング、電動化)への開発投資を、優先させていく。特に、北米の販売が回復しないようなら、日産の独立性確保は危うさを増す。

一方、日産社内に足場を築いたルノー。日産株主総会でスナール会長は「日産の取締役として従業員の幸せのために行動する。株式の持株比率の違いを利用したことはない」と発言した。

1999年からの大株主ではあるが、「100年に1度の変化」と言われるCASEの時代を迎え技術面では日産に多くを依存している。もちろん、生産台数でも差は大きい。したがって、日産はルノーにとっての生命線である。経営への関与を高め、統合へと舵を切っていくはず。したたかにである。

スナール会長は、ルノーとFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の経営統合が白紙になったことにも触れ「世界のライバル会社が一番喜んでいる」と指摘した。

急浮上して短期間に流れた案件だったが、実は次のような指摘をするヨーロッパの証券関係者もいる。

「フィアットの創業家であるアニェッリ家は、実はFCAを売却したがっている。日産との関係で世界から注目されているルノーに統合提案したのは、現代や中国メーカーなど日本以外の自動車メーカーから興味を引くためのパフォーマンス」。ちなみに、アニェッリ家は一族の投資会社エクソール(オランダ)を通しFCAの大株主になっている。

ルノー、そしてフランス政府がどう捉えていたのかは、わからない。

昨年11月のゴーン元会長の逮捕で始まった、ルノー対日産の日産の経営権を巡る攻防。何をもって経営の独立性なのか、流動性は多く、そのポイントも見えにくい。だが、100年に1度の自動車産業の変化と重なり、一段の世界再編が巻き起こる気配である。

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