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ゴールデンカムイに学ぶ、推しの愛し方も人それぞれ - カレー沢薫

今しがた「ゴールデンカムイ」の最新刊を読み終えたところだ。

私は漫画家だが、あまり漫画を読まない。
昔は良く読んでいたし、だからこそ漫画家を志したのだが、パン好きが高じてパン工場で働き出した人が、巨大なジャムパンが攻めてくる幻覚を見てしまうように、私も運良く漫画家になれたせいで、漫画が読めなくなってしまった。

 

ただ、トマトは嫌いだがケチャップは食える、ミニトマトは死ね、という人と同じで、私も漫画は読めないが「筋肉質な男が良く脱ぐ漫画は読める」のである。
よってゴールデンカムイは今唯一新刊が出る度に買って読んでいる漫画だ。

ゴールデンカムイとは今更説明する必要はない、というか累計1000万部の漫画を説明する暇があるなら、己の永久初版漫画を宣伝した方が良いと思うのだが、私だってどうせ漫画の話をするなら面白い漫画の話をしたいのだ。

ゴールデンカムイとは、北海道を舞台に金塊の取り合いをする漫画である。

考え得る限り最も人の興味を引かない説明になってしまったが、一転二転するストーリーに、魅力的なキャラクター、バイオレンスにグルメ、ボロンもあるよ、というとても面白い漫画なのだ。

「ボロン」という効果音で察していただいている思うが、この漫画でうっかり取りこぼされるのは、女子のおっぱいではなく、大体棒の方である。
おっぱいも出ないことはないが、割合的には9:1、つまりカルピス9に水1みたいな漫画なのだ。

そもそもこの漫画のヒロインはローティーンの少女である。
どうやら作者的に、少女をお色気描写に使うのを良しとしていないらしく、ヒロインは肌すらほとんど露出しない。
そして、それと同じぐらい露出しないのが我らが「土方歳三」だ。

このゴールデンカムイには、土方歳三が史実通り35歳で死ななかったらという設定で、老齢になった土方歳三が登場するのだ。

この土方歳三が信じられないほど脱がない。
いや信じられるよ、と思われるかもしれないが、ゴールデンカムイで男が脱がないというのはもはや「信じられない」レベルになりつつある。

どんなキャラでも主人公たちと関わりだした途端「まず脱ごう。話はそれからだ」という感じで脱ぎ始める。
もはやゴールデンカムイという作品自体が二次創作で良くある「入ると服がはじけ飛ぶ部屋」みたいになってしまっているのだ。

だが、土方歳三だけはヒロインの少女と同じレベルで露出しない、つまり土方歳三はヒロイン、もしくは少女、ということだ。

こう書くと、ピンク映画に出ておきながら1人だけ頑なに脱ぐことを拒否している面倒な女優みたいだが「カッコ悪い時空が存在しない」でお馴染みの土方歳三なので、もちろんゴールデンカムイでも死ぬほどカッコいい。

他にも魅力的な男性キャラが多く出てくるので、ゴールデンカムイには女性ファンも多く、所謂「キャラ萌え」をしているオタクも少なくない。

しかしゴールデンカムイは大体のオタクが「推しが最後まで生きている姿が上手く想像できない」漫画である。
新刊の最初に登場し「イイね!」と思ったキャラが、その巻が終わる頃には死んでいたりするので、おちおち恋にも落ちられない。

主要キャラだろうが誰がいつ死んでもおかしくなく、カワイイ小動物でさえ次のページでつみれ団子になっている世界観なので、もはやゴールデンカムイのキャラに対する感情は「結婚してくれ!」より「喪主は任せろ!」になりつつある。

ゴールデンカムイに限らず「何故か好きになったキャラが死ぬ」という未亡人体質を越えて、デスノートみたいなオタクがいるのだが、この現象に対し、先日ツイッターで「好きになったキャラが死ぬのではなく、目的のために命を賭けるタイプのキャラが好きだからだ」という見解があり、なるほど、と思った。

もっと言うなら、キャラクターが死ぬような作風の作品を好む時点で、推しが死ぬ確率はかなり上がってしまうのだ。
「推しが死んだことがあるサザエさんファン」というのは知る限りでは見たことがない。

このように「推しの死」に怯えなければいけないのはオタクの宿命だが、逆に原作では生きているのに、二次創作で推しを死なせるオタク、というのも存在する。

死なせるとまではいかないまでも、推しをキャラ使って何故か「バッドエンド」な二次創作をしてしまうというタイプが一定数いるのだ。

決して「このキャラが嫌いだから不幸にしてやろう」という動機ではなく、正真正銘そのキャラが好きでやっているのである。

そして、なぜ好きなキャラが不幸にするのか、と尋ねると「自分でもわからないが、そうせずにはいられない」という死ぬほど業が深い答えが返ってくる。

「推し」と一言で言うが、推し方は様々であり、華やかな舞台に推そうとするものがいれば、何故か千尋の谷に推そうとするオタクもいるのである。

推しは同じでも「愛し方」が全く違ったりするのだ。
私もキャラによっては「私の推しは不憫な時が一番いい顔をする」と思う時がある。もちろん何故そんなことを思うのかはわからない。

複雑すぎてオタクの考えることはわからんと思うかもしれないが、もはやオタクも自分が良くわかっていないのである。


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