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外国人材の猛烈な急増が引き起こす大問題

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景気悪化時には外国人の大量失業という問題も

 第2に、ペース制御の仕組みの導入である。今回「5年間で最大34万5000人」という上限が差し当たり設けられたが、これらは産業別の所管官庁の積み上げの数字であり、その客観性には疑問符がつく面がある。さらに、あくまで「特定技能」についてのみの数字であって、実質的には労働力不足の補充の形で使われている「技能実習生」「留学生の資格外活動」についての上限は設けられてはいない。

 現状、外国人労働者は雇用者全体の約2%にとどまるが、日本総研の試算では2030年には5~6%に達するとみられる(※3)。そうした状況に向けて適切なコントロールを行わなければ、生産性の低迷や日本人との仕事の競合、あるいは景気悪化時の外国人の大量失業という問題を引き起こしかねない。

(※3)日本総研リサーチ・レポート「増加する外国人労働とどう向き合うか」No.2018-006

 加えて、現状の外国人の偏在を念頭に、「大都市圏その他の特定地域に過度に集中して就労することのないよう、必要な措置を講じるよう努める」としているが、その有効な具体策が不明である。第三者機関によるチェック体制と、「地域別産業ビジョン委員会(仮称)」を設置し、地域の産業ビジョンと調整しつつ、地域別・産業別受入れ上限を決定することが望ましい。

 第3に、適切な外国人受入れを推進していくための、入国管理・雇用管理・生活支援の全般にわたる一貫したトータルな体制整備である。今回の法改正では出入国在留管理庁が創設され、これらその役割を担うが、管理を担ってきた入管当局を母体とするが支援を同時にできるのかという疑問がある。企業に適正な雇用管理を指導・監督する体制への不安もある。十分な予算措置を行ったうえで、監督・指導体制のリソース充実とさまざまな主体との連携・協業体制の構築が不可欠である。

 とりわけ、いわゆる共生政策が重要になるが、その具体化はこれからといった段階である。国・地方・企業の分業・連携体制の整備、情報共通・横展開の仕組み整備を進めていくことが重要である。現実にはその整備は一定の時間がかかるし、共生の主役である外国人および地域住民が、頭ではなく実感として相互を理解するにはそれなりの試行錯誤が要る。そうした意味でも、外国人全体の受入れペースを適切に制御することが重要になるといえよう。

安価な外国人材も早晩枯渇することになる

 以上、政府や自治体の課題についてみたが、働くために日本にやってくる外国人が、その生活時間の多くを過ごすのは企業(職場)においてであり、そうした意味ではまずもって企業の受入れの在り方が重要である。ここで出発点となるのが、受入れる外国人を「人」として見るという、当たり前のことである。しかし、残念ながら、そうした当たり前のことが必ずしもできていないのは、技能実習制度の法律違反が多くみられ、留学制度の悪用が散見されることに表れている。

 そうした安易な考え方のままでは、90年代以降コスト削減を至上命題として非正規労働者の割合を高め、安上がりのビジネスモデルを構築し、短期的には良いようにみえても、長期的には苦しい状況に追い込まれている、日本企業の在り方に根差す面がある。

 いま求められているのは、安価な労働力としての外国人を受入れることで、薄利多売の時代遅れのビジネスモデルを生き長らえさせることではない。

 すでに安価な国内人材がほぼ枯渇しつつあるように、安価な外国人材も早晩枯渇することになる。アジアの経済成長が続く中で、安価な労働力としての位置づけでは、急速にアジアの人々が日本に来てくれなくなっていく。アジアの賃金の上昇で相対的な魅力が薄れると同時に、韓国・台湾・タイといったアジアのなかでの高所得国の魅力が高まり、これらの国々との人材獲得競争が激化していくからである。

 ここで銘記すべきは、外国人材活用の真の意義はコスト削減ではなく、海外向け事業の拡大にこそあるということだ。

 日本人人口の持続的減少で国内市場への縮小圧力がかかり続けるなか、企業が持続的な成長を実現するには、非製造業を含めて業種を問わず、輸出・インバウンド・海外現地事業など、何らかの形で海外市場を開拓していくことが不可欠になっていく。そのためには、海外現地事情を肌で知る現地出身の外国人の知見を取り入れることが成功のカギとなる。それは、コスト削減のための安価な労働力ではなく、事業拡大のための有能な人材として、外国人を捉えるべきことを意味している。

 そのためには具体的には、以下の5点に取組むことが必要である(※4)

(※4)グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会「国際的な人材活用~外国人労働者受入ガイドブック~」が参考になる。

日本人の意識や働き方を同時に変えていく

 第1に、なぜ外国人か、どのような役割を担ってもらうか、を明確化することである。日本総研のアンケート調査では、外国人の活躍度合いと採用・活用理由の関係をみることができる。それによれば、「日本人労働力が集まらない」や「労働コストが節約できる」という消極的な活用理由の場合、外国人の活躍が「期待外れ」のケースが多くなっている。その一方で、「外国人ならではの業務」「グローバル化を展望して組織を活性化」といった積極的な理由の場合、活躍が「期待以上」となっているケースが多い。

 第2は、外国人を「成長する人材」として、長く働いてもらうことを前提にすることである。そうなれば、人材育成のインセンティブが強まることになるが、われわれの実施したアンケート調査でも、研修プログラムに積極的な企業ほど、外国人の活躍が「期待以上」となる割合が高くなっていることが確認できた。こうして長く働いてもらうことを前提に人材育成に取り組めば、帰国しても「日本シンパ」となり、日本企業の海外事業にとっての支援者にもなってくれるであろう。さらに、日本を本気で気に入り、会社の中核的業務に携わるようになれば、特定技能2号、あるいは就労在留資格を取得して定住し、会社のコア人材として活躍してもらうことも展望できる。

外国人材の活躍度合の違いを生む要因

 第3は、外国人が日本社会に溶け込むよう、生活面の支援を重視することである。この点についても、日本総研のアンケート調査で興味深い結果が得られている。外国人従業員の生活支援として、特に何も行っていない企業の場合、外国人の活躍が「期待外れ」のケースが多いが、「社宅の提供」「マナー教育」「地域との交流促進」を行えば、「期待以上」の活躍となるケースが高くなることがみられた(図表1)。

 第4は、日本人の活用と同時に進めることである。「安価で使い勝手のよい」社員が国内で採用できなくなったから外国人を採用するという考えでは、早晩立ち行かなくなることはすでに述べた通りである。国内には女性や高齢者をはじめ、未活用人材はまだまだ多く存在する。労働力が希少になる局面では、働く人々の生活上の制約を考慮しつつ、働き手の都合に配慮しながらその能力が十分に発揮できる職場づくりが必要になる。そうして国内にある多様性を活かす職場づくりをすることが、実は価値観の異なる外国人材の能力を活かす条件でもある。

 第5に、日本人の意識や働き方を同時に変えていくことである。外国人材の能力を引き出すには、職場の在り方が制度面で変わるのみならず、働く人々の意識や行動も変わる必要がある。外国人と協働していくには、日本特有の考え方や慣習をわかりやすく説明するほか、場合によっては日本的なやり方自体を見直していくことが必要である。それは日本人にとっての新たな発見や発想につながり、閉塞感の強い今の状況をブレークスルーする好機ともなるであろう。

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山田 久(やまだ・ひさし)
日本総合研究所 理事/主席研究員
1987年京都大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。93年4月より日本総合研究所に出向。2011年、調査部長、チーフエコノミスト。2017年7月より現職。15年京都大学博士(経済学)。法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科兼任講師。主な著書に『失業なき雇用流動化』(慶應義塾大学出版会)
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