記事

「香取慎吾は日本のトップアイドルであると同時にトップ俳優だった」 映画『凪待ち』で白石和彌監督が受けた衝撃

1/2


 「カメラと被写体である自分の関係性というのを、どんな人よりも分かっている」「日本のトップアイドルであると同時にトップ俳優だった」ーー『凶悪』『孤狼の血』などで知られ、現代社会に刃を突き立てるような作風で日本映画界で異彩を放つ名匠・白石和彌監督がそう評するのは、俳優・香取慎吾だ。

 アイドルだったこれまでのイメージから一新。香取が白石監督と初タッグを組んだ『凪待ち』(6月28日公開)で演じたのは、恋人を殺され人生どん底まで堕ちてしまうギャンブル依存症の男・郁男。ノーメイクで殴られまくり、目をそらしたくなるほど痛々しい姿で、不条理な現実だけでなく大切な人たちからも逃げてしまう、心の弱い男を熱演する。白石監督は香取をなぜ郁男役に抜擢したのか。そして現場で衝撃を受けた香取の姿とはーー。公開を直前に控えた2人に話を聞いてきた。

白石監督から見た香取慎吾という俳優「カメラと被写体である自分の関係性をどんな人よりも分かっている」


ーー今回、初タッグを組んだお二人ですが、お互いに事前に持っていたイメージはありますか?また、その印象に変化はありましたでしょうか?

香取:
『日本で一番悪い奴ら』を観ていたのですが、「監督は誰か」ということは意識していませんでした。白石監督とご一緒するとなったときに、作品を観ようと思って『凶悪』を観て「やばい監督だな……」と気づきました(笑)。初めてお会いする日には直前に映画館で『孤狼の血』を観て、どんな怖い監督かと思っていたんですけど、「いつの日か香取さんとやりたかった!」と最初に声をかけてくださったので、その気持ちもほぐれました。白石監督の作品はこれまで自分が出たことのないような映画だったので、それを作ってくださった方がそう言ってくれるのであれば、いい始まり方で何かいい化学反応が生まれるのではないかと思いました。

ーー香取さんがこれまでお仕事してきた監督と比べても白石監督は世代が近いですが、それに何か感じることはありましたか?

香取:
それはないです。年齢は意識したことないです。……監督はおいくつなんですか?

白石監督:74年生まれです。草彅(剛)さんと一緒です。

香取:えぇ~!そうだったんですね! 「監督」として接しているので、あまり年齢を気にしていなかったです。(年齢が近くても)三谷幸喜監督や阪本順治監督と同じように「監督だ」という思いが強かったです。

ーー白石さんは香取さんに対して「アイドル」という認識が強かったのでしょうか?

白石監督:
もちろんトップアイドルでスーパーアイドルという認識はありました。ただ、香取さんにはアーティストとしての側面があったので、エンターテイナーであると同時に、作り手に一歩近い方なのだろうなという印象がありました。映画やドラマで、俳優の姿も見させていただいてきたのですが、実際に仕事をしてみると衝撃的でした。カメラと被写体である自分の関係性というのを、今まで仕事をしてきたどんな人よりも分かっていた。僕自身もある意味楽だったし、インスパイアをたくさん与えてくれる方でした。「すごいすごい!」って僕が興奮していたら、リリー(リリー・フランキー)さんに「何言ってるの。大河で主演をやっていた人なんだから当たり前でしょ」って言われて。日本のトップアイドルであると同時にトップ俳優だったという、当たり前のことに改めて気づきました。

香取慎吾「『できない』は今までも一切言ってこなかった」


ーー郁男は映画の終盤まであらゆることから逃げて、何度も他人を裏切り堕ちていくというキャラクターですが、香取さんは郁男に共感する部分はありましたか?

香取:
あまり今までは見せる機会がなかったですけど、やはり僕の中にも「逃げる」部分はあります。苦悩だったり辛いことは誰にでもあると思うんですけど、郁男はそれが人一倍多い役でした。そこで感じる気持ちはたくさん繋がっている部分があるなと思いました。

ーー白石監督は脚本を作っていく段階で、香取さんのことをイメージされたんでしょうか?

白石監督:
イメージしている部分としていない部分があります。これまで見てきた陰と陽の陽でない部分の香取さんをメインにしていきたいという思い。ギャンブル依存症という設定は、脚本の加藤さんがどうしても入れたいというので入れました。そこはあて書きな訳がないので(笑)。ただ郁男という堕ちていく役を香取さんがやると絶対に面白くなる、化学反応が起こるという確信はありました。


ーー香取さんはどのように役作りをされたのでしょうか?

香取:
役作りというのを僕はよくわからなくて、その場その場で監督に言われたことを理解して、現場の空気に合わせて演じています。ただ今回は、演じながらも郁男に対して「本当ダメなやつだな、ひどいやつだな」と思っていたので、その気持ちをぐっと抑える作業が大きかったかもしれません(笑)。僕としては腹ただしい部分があるんですけど、それが現れたらダメじゃないですか。その気持ちを押し殺して、本番で監督のOKが出た瞬間に「本当にひどい!こいつ!」って、やっと言えるって感じでした(笑)。

ーー郁男を演じる上でもっていた軸のようなものはありますか?

香取:
「逃げる」というのは大きいです。感情的な部分でも、「隠れる」とか。今まで演じさせていただいた役でもそうですし、自分自身も思っているのと違うことがあれば言いたい方なんですけど、今回は、そうちょっとでも思った瞬間に人の背中に隠れるというキャラクター。思いそうになった瞬間に隠れる。その隠れるスピードが人よりも早い。言いたいけど、後ろに下がる。「なんかやばい」「自分の中の正義感が生まれそう」と思うか思わないかくらいの瞬間に下がる。


ーー白石監督は撮影していく過程でどんなリクエストを香取さんにされましたか?

白石監督:
追いかけっこするシーンも台本では1行くらいしか書いていないんですけど、いっぱい撮った方が面白いなとか、そんな感じです。でも、香取さんには「それはできません」とか「なんでそうなるんですか」が絶対ないんです。「わかりました」って必ず言って、僕がリクエストしたことを超面白くして返してくる。作っている中で、このシーンとこのシーン入れ替えた方がいいなってなったときも、「わかりました!そうしましょう!」って瞬時にやってくれることが多くて、こっちも気持ちよくなっちゃいました。このシーンは「殴られる」って書いてないけど殴られてもいいんじゃないかな、と追加したりすることもありました(笑)。


ーー香取さんからして「そこまでするの!?」というリクエストはなかったんですか?

香取:
ないですね。根本的に「監督」ですから、監督に言われたことはなんでもやります。「これはできない」というのは、僕は今までも一切言ってこなかったです。「できない」とか言う人の方が、僕は大変だと思います。

ーーでも、たまにそういう方もいらっしゃるんですよね。

香取:
いっぱいいます(笑)。

白石監督:演じていても隣の人がとか聞きますもんね(笑)。

香取:あと、時間も気にしないです。「今、何待ち」っていうのがよくあるじゃないですか。あれは全く気にならないです。いくら文句言おうと撮らないと終わらないから。

あわせて読みたい

「香取慎吾」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    山本太郎氏が社民党に引導渡す日

    やまもといちろう

  2. 2

    輸出規制めぐり文在寅氏に焦りか

    AbemaTIMES

  3. 3

    陸上スーパー女子高生なぜ消える

    PRESIDENT Online

  4. 4

    007起用の黒人女性めぐる勘違い

    諌山裕

  5. 5

    日韓問題に米「出来る事はする」

    ロイター

  6. 6

    韓国で不買運動 ユニクロも打撃

    文春オンライン

  7. 7

    山本太郎氏は国会で討論すべき

    早川忠孝

  8. 8

    TV局がツイート謝罪で失った信頼

    孝好

  9. 9

    元駐日大使「責任は韓国政府に」

    文春オンライン

  10. 10

    よしのり氏 007はやはり白人男性

    小林よしのり

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。