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【読書感想】食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ

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 アメリカに移住してきた人たちは、ヨーロッパとの気候や風土の違いもあって、食料を確保するのに苦労していたのです。
 そこで、彼らをサポートしたのが、先住民たちでした。

 先住インディアンのその後の苦難を考えると、本当に「恩をあだで返した」としか言いようがありません。
 映画を観ながらポップコーンを食べる、なんていうのは、いかにも「アメリカ的」な感じがするのですが、トウモロコシも、ポップコーンも、もともとは「アメリカ先住民たちの文化」だったそうです。

 アメリカの食文化を代表する存在である「ハンバーガー」の誕生についても著者は書いています。

 ハンバーガーがいつアメリカに出現したのかには諸説あり、特定するのは難しいが、およそ以下のような経緯をたどったと考えられる。まず、挽き肉を焼いたハンバーグ・ステーキというべき料理はすでにヨーロッパに存在していた。

ドイツやスカンジナビア半島からの移民がアメリカに渡る際、出航地となっていたのはドイツのハンブルクで、19世紀半ばにはニューヨークとの間に定期船も就航していた。そして、彼らとともにアメリカに広まったのが、こうした挽き肉のステーキで、出航地にちなんでハンバーグ・ステーキと呼ばれるようになったらしい。

1876年に開催され、半年間にのべ1000万人が来場したといわれる、建国100年を記念したフィラデルフィアの万国博覧会の会場では、ドイツ料理の店が設置され、ハンバーグ・ステーキを提供していた。

万国博覧会は、新しい製品や技術の見本市としての性格や外国紹介の要素を持っており、エスニック理が一般庶民に普及していく重要な契機となったであろうことは容易に想像される。

 だが、当初それは肉料理であって、パンに挟む食べ方ではなかった。そうした新たな食べ方が登場してくるのは1880年以降で、それが普及する大きなきっかけとなったのも、万国博覧会などの大きな催し物やスポーツイベントだった。

これらの会場には、模擬店が出店し、立ったままでも食べられるものが求められた。それには、ナイフやフォークを使わずに済む、フィンガーフードが理想的だった。

そこで、様々な人々が新たなフィンガーフードを考案し、その中で人気を博することになったのが、ハンバーグ・ステーキをパンに挟んで食べるハンバーガーだったのだ。ハンバーガーの普及の大きな転機になったのは、1904年のセントルイスでの万国博覧会だったといわれる。

 こうして、ハンバーガーをはじめとするファーストフードがアメリカで「便利な食べ物」として広まっていくことになります。

 レストランで食べるのに比べて、短時間で済み、広い国土を移動しながらでも、あるいは、屋外でも食べられる、というのは、大きなアドバンテージにもなりました。

 その一方で、「食の画一化」や「効率と価格重視で、安全性に問題がある食べ物」であると考える人たちも増えていき、アメリカでは、「ファーストフードの、その先」も模索されていったのです。

 そのきっかけになったのが、日本からやってきた「寿司」の隆盛だったと著者は指摘しています。
 カリフォルニアロールなどは、日本人からみれば「異端」なのですが、アメリカ人からみれば、「アメリカ人に食べやすいようにローカライズされた食べ物」なんですよね。

 ただし、「健康的な食事」は、今のアメリカでは、かなり高価になりがちで、富裕層のファッションとして、庶民には縁遠いものになっているのです。

 ファーストフード店で働き、その安い賃金では、ファーストフードや冷凍食品、スナック菓子を食べて生きていくのが精いっぱい、という人たちが再生産されているのです。
 これは、格差がどんどん広がっている日本の近い未来像かもしれません。

 アメリカは、ジャンクフード帝国という印象があったのですが、実際は、さまざまな人種や文化の融合による、新たな食を生み出す試みが、絶えず行われてきた国なのです。
 ファーストフードの先にあるものは、何なのだろうか。

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