

資産家の政治家でも、庶民の生活実感、年金不足への危機感を感じ取ることができるなら、国民は政治に期待を託すことができる。だが、住居費も交通費も税金で賄われ、飲み代は政治資金、金銭感覚が完全に麻痺した政治家たちに、国民の痛みは分かるまい。
いわゆる“老後資金2000万円不足問題”で、「年金がいくらとか自分の生活では心配したことありません」と言い切った麻生太郎氏。「福岡の炭鉱王」の御曹司として育ち、祖父は吉田茂・元首相。若い頃からカネに不自由したことはなく、学習院大学時代にはクレー射撃で当時の大卒初任給の4年分にあたる100万円を年間の弾丸代で使っていたと自慢げに語っている。
また、安倍首相も岸信介・元首相を祖父に持ち、経済的に恵まれた家庭で育った。成蹊大学時代は赤いアルファロメオを乗り回していたという。
世襲議員が多い政府・与党幹部の中で“叩き上げの庶民派”と見られがちな二階俊博・自民党幹事長も庶民の現実が見えていない。
「食べるのに困るような家はないんですよ。今、『今晩、飯を炊くのにお米が用意できない』という家は日本中にはないんですよ。だから、こんな素晴らしいというか、幸せな国はない」
昨年6月の講演でそう語ったが、現実には日本の子供の「7人に1人」が貧困状態にあり、生活保護を打ち切られて「おにぎり食いたい」と書き残して死んだ北九州市の事件をはじめ、毎年、少なからぬ餓死者が出ている。
老後資産2000万円に足りない年金生活の高齢者たちが“明日は我が身”と危機感を募らせ、生活を切り詰めていることを実感していない。
それもそのはずで、国会議員は宿舎や国会の事務所から、地元を往復する飛行機代、新幹線代まで税金で賄われ、飲食費は政治資金(原資は政党助成金)を使う。麻生氏は高齢者の30年間の年金不足額と同じ約2000万円をわずか1年間(2017年)の飲み代として政治資金から支払っていた。
お坊ちゃん世襲議員といえば、石原慎太郎・元東京都知事の三男で元内閣府副大臣の宏高氏は今年初めのネット番組で「石原家の懐事情」をこう明かした。
「(お年玉は)怒られちゃうくらいもらっていたかも。叔父さん(故・石原裕次郎)は、お正月はハワイの別荘に行っちゃって会えない。だから、クリスマスに叔父さんのところに兄弟みんなで行って、たんまりと。(金額は)“両手”で」
子供時代に何不自由なく育ち、議員になってからは政治資金で飲み食い。「税金の味」を覚えた政治家たちは、かくて金銭感覚を麻痺させていく。
※週刊ポスト2019年7月5日号