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「オリンピック讃歌」の訳詞者、野上彰に今一度ライトを!

 東京オリンピックが日一日と近づいている。弥が上にもオリンピック関連の動向、情報が目につく。前回、この欄でとり上げた古関裕而生誕110年記念『スポーツ日本の歌~栄冠は君に輝く~』(日本コロムビア)にも、藤山一郎、荒井恵子が歌う「オリンピックの歌」(作詞山田千之、作曲高田信一、編曲古関裕而)など題名にオリンピックを名乗る曲が、6曲入っていた。

そのひとつに「オリンピック讃歌」(訳詞野上彰、作詞K. Palamas、作曲S. Samaras、編曲古関裕而)がある。歌うのは日本合唱協会、斉藤徳三郎指揮の陸上自衛隊中央音楽隊が演奏している。

1896年、アテネでの第1回近代オリンピックで演奏された由緒ある曲である。長いこと譜面が行方不明になっていたが、作曲者のピアノ譜が見つかり、古関が編曲し、オリンピック公式讃歌となった。以上、ライナーノーツより。

 この野上訳「オリンピック讃歌」は、最近刊行された野上の遺稿詩集「前奏曲」(左右社)にも収められている。付録のCDで聴くこともできる(演奏者不記載)。その訳詞は「みどりの枝の栄冠を/めざしてここに/闘う者に/鉄のごとき力と/新たなる精神とを/あたえよ」とすこぶる格調が高い。

 64年の東京オリンピック閉会式では、2000名の大合唱で歌われたが、律子夫人とともに出席した野上は率先してそれに和したという。

 野上彰(1908~67)は文芸肌の詩人だが、音楽に強くシャンソン、オペラの歌詞も多く手掛けた。50~60年代、NHKラジオ番組で日本人歌手が歌うオペラのアリアは、ことごとく野上訳だった。

作曲もこなし、「よいとまけシャンソン(裏町)」(歌佐藤美子、芦野宏)、「冬のシャンソン(冬の子守唄)」(宅孝二との共作、歌内田るり子)などの佳曲を残している。題名からも察せられるように和製シャンソン風の小粋な佳曲である。作詞はもちろん野上自身の手になる。

 野上作品で人々にもっともよく知られているのは「銀座の雀(酔っぱらいの町)」(作詞野上彰、作曲仁木多喜雄)だろう。野上の詞、仁木の曲、森繁久彌の歌が一体となってそくそくと聴く者の胸に迫る。詞・曲・歌すべてが過度のセンチメンタリズムに落ち入る一歩手前で踏みとどまっているのがいい。森繁自身好んで歌った、昭和を代表する名曲である。

 詩集「前奏曲」で初めて知ったが、ボブ・ディラン作「風に吹かれて」の最初の邦訳を試みたのも野上だった。ピーター・ポール&マリー「パフ」も訳している。多芸多才、言葉の達人野上彰に今一度スポットライトを浴びせたい。

(オリジナル コンフィデンス  2019/6/24号 コラムBIRD’S EYEより転載)

詩人 野上彰の集大成です。

詩集「前奏曲」より。在りし日の野上彰氏。

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