- 2019年06月25日 21:54
仲村未央・沖縄県議会議員に聞く戦災調査からはずされ続けた沖縄
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調べない理由は「不明」
そして、なぜ沖縄を調べないのかということを聞きに沖縄県議数名で総務省、厚労省、内閣府に行ったんです。総務省は「沖縄戦は地上戦があり空襲による被害と地上戦による被害の区別ができないためではないか」という、わけのわからない回答をしました。
そして「それ以外の学童疎開や戦災孤児など様々な項目の調査でも沖縄が省かれている理由は不明だとした」と。地上戦だから調べなかったというのは政府として沖縄戦の被害を関知しないに等しいということで、わからないで済む問題ではないと私は言いました。
それに内閣府大臣官房参事官は「全国の戦没者数、沖縄戦の被害状況について経済安定本部の事務を引き継いでいるというところがなく難しい。要請書は官邸に届ける」という程度の返事でしたね。
――2014年度まで総務省が委託事業を続けているのに?
そう。総務省に聞いたのは15年ですから、前年度までやっていた事業について「担当がいないからわかりません」では通用しないですよね。「沖縄戦で何人、人が死んだと思っているんですか」と聞いても答えがない。「沖縄県は9万4000人と言っています」という言い方です。「国としては国民が何人犠牲になったと思っているんですか」と聞いても答えがない。
その後、今度は翁長雄志知事(当時)からも国に要請を出しました。照屋さんも質問主意書を出したので回答が来ていますが、二つとも同じような「なぜ調査しなかったのか政府としてはわかりません」という趣旨です。沖縄県の被害調査を私たちが要求したことで、総務省のホームページに沖縄県や沖縄県の市町村が行なった被害調査を少しずつ転載でアップするようになりました。でもそれは国の調査ではありません。
――県議や知事が要請しても検討しないということは、やる気がないということなんですね。
そうです。ここに沖縄における差別の源流を見たと思います。再び戦争ができるような軍備増強をしている国にとっては、軍隊をかっこいいものにしておかないといけないんでしょう。でも、軍隊は住民を守らないというのは沖縄戦の教訓。それは歴史が証明している。
私たちはその事実をおじいやおばあたちから聞いてきた。戦争になったら一番弱い人たちから死ぬ。子どもや病人や女性や、一番軍事に遠い人たちから死んでいくし、集団自決をさせられたり、兵隊に強奪されたり、という被害に遭ったことを私たちは聞いている。
でもそれは国にとって一番言われたくないこと。沖縄を捨て石にして地上戦をしたことを、なかったことにしたいんじゃないかと推測します。だから何を聞いてもとぼけるんでしょうね。
このことを、ひめゆり学徒隊の遺族や対馬丸の資料館に関わる方たちとお話ししたとき、皆さんショックを受けていました。同窓生が亡くなり、子どもたちが亡くなり、「私が生きていていいのかしら」「私も死ねばよかったのかしら」という思いで生きてきた方たちです。私自身も遺族の1人です。
ですから「なぜ調査してないか知らない」という国の冷たい態度に、抗議をしながら私は涙をこらえるのがやっとでした。悲しくて、じゃないですよ。悔しくて、です。沖縄の犠牲は何だったのかという思いが湧きました。
沖縄戦は終わっていない
――もし沖縄をきちんと調査して被害者に補償したら軍事費なんて飛ぶくらいの甚大な被害があるからやりたくないのでは。
私もそれが一義的な理由だと思っていて、なぜかというと戦後補償の中で一般人の補償はされてないんですね。軍人、軍属、準軍人が補償の対象です。だから多くの人が補償要求をあきらめているんです。沖縄の戦争被害を国が認めるのなら、全県民が補償の対象になるくらいの被害があった。だから補償要求が殺到することを恐れているのではと思います。
――それに、さっきおっしゃったような、軍隊が国民を守らないどころか加害者だったという実態を国が認めなければならないということもあるのではと思います。
それもあると思います。兵隊が赤ちゃんを殺したり、食料を強奪したり、壕から追い出したりということを証明しようとしたら、右翼のターゲットになってすごい非難をされるんですね。だけど沖縄県民も負けていない。県民大会で「史実をゆがめてはならない」「教科書の記述からこれを消してはならない」と11万人が集まった。
それだけ身近に自分の親や祖父母から話を聞いてきたからです。沖縄の人たちが辺野古の新基地建設に抗うのも、軍隊、軍備、国防というものが持ち込まれるとき、必ずそこに住む人たちや一番弱い人たちが犠牲になるという経験が受け継がれているから。「平和な世の中でありたい」「戦争を二度と起こしてはならない」という誓いみたいなものが根底にある。イデオロギーじゃないんです。
慰霊の日(6月23日)の式典には、どの総理大臣も慰霊の言葉を述べ、沖縄県民の気持ちに寄り添い、とか言いますよね。でも沖縄の人がどういうふうに死に追いやられたか、何人犠牲になったのか、国としてきちんと調査もしないで、何に寄り添うのか。
不誠実です。戦争を起こした国が責任を認めない限り、また戦争をするのではないかと疑ってしまう。責任をうやむやにしたら、国策によって人々を戦争に巻き込んであとは知らんふりという歴史が再び起きる。だから政府の総括がない限り沖縄戦は終わらないと思うんです。
――国会でも取り上げ、きちんと沖縄戦を終わらせたいとの思いもあって参院選に挑戦するんですか。
それもあります。このことは県民から大きな反響があり、今もあれどうなった? と聞かれます。私も一過性の質問で終わらせてはいけないと思って。国を動かすのは難しいですが、国に忘れさせてはいけない。他国への侵略や虐殺や「慰安婦」問題をなかったことにしようとする政権の姿勢を見るにつけ、きちんとした戦争の総括を、私たち国民が国に求めないといけないと思っています。
聞き手・まとめ・写真撮影/宮本有紀(編集部)
2019年6月14日号



