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仲村未央・沖縄県議会議員に聞く戦災調査からはずされ続けた沖縄

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第2次世界大戦後まもなく、国内の戦災被害調査が全国各地で行なわれてきたが、国内唯一の地上戦で大被害を蒙った沖縄のみ、政府による被害調査が行なわれていない。このことを沖縄県議会で質問し、国が沖縄戦の実態を把握するよう求めてきた仲村未央県議に話を聞いた。

なかむら みお・1972年、沖縄県沖縄市生まれ。大学卒業後、琉球新報社に入社。政治部・社会部記者として県庁記者クラブ、沖縄市政、那覇市政を担当。2002年から沖縄市議会議員、08年から沖縄県議会議員。沖縄平和運動センター副議長も務める。

――仲村さんが沖縄県議会で質問したことで、国が沖縄だけ戦争被害調査をしていないことが明らかになって報道され、県民に衝撃を与えましたね。そのことに気付くきっかけは何だったんですか。

きっかけは空襲被害の裁判をしている人たちの勉強会に行ったことです。瑞慶山茂(ずけやま・しげる)弁護士の資料で「国家補償実現のために」「沖縄の総合的な調査は必要不可欠」だけど、日本政府も沖縄県も沖縄戦の人的、物的戦争被害の総合的詳細をまとめたものは60年たっても実施していませんということが書かれていたので、沖縄戦の調査ってされていないんだっけと思って調べたという経緯なんです。

当時の経済安定本部という役所が戦争被害状況をまとめた「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」を1949年に出しています。その序は「戦争は人類社会最大の罪悪である。此度の戦争によつて、いかに多くの貴い人命が奪われ、且、平和的な資産が失われたことか」と始まり、この報告書は「その反省資料として、又、一指針として作られた」と書いてある。本格的に全国を行脚して調査したもので戦争被害に関する「総合的な資料としてはおそらくこれが唯一のものと思われる」とあります。

実際に、電柱何本、家が何件焼けた、道が倒壊した、橋がどうなった、どこで何人死亡、とかなり細かく調査されています。ですが、どの資料も全部、鹿児島県どまり。沖縄が一つも出てこないんです。

対馬丸沈没もスルー?

社団法人日本戦災遺族会(2010年3月解散)が総理府(現総務省)の委託を受けて昭和52(1977)年度~平成21(2009)年度に行なっていた全国戦災史実調査の報告書。最初の頃のはしがきには「46都道府県における戦災により」と書かれてある。10年度からは(株)NHKグローバルメディアサービスが総務省の委託を受け、調査資料を作成。

――沖縄が米国に占領されて調査できなかったからでは?

私も最初はそう思いました。でも、調査はサンフランシスコ講和条約を締結する前からしているんです。沖縄が完全に切り離された段階でもない。だから調べようと思えばできたはずです。

そこには「広島、長崎の両県が東京に次いで多数の被害者を出していることは、原子爆弾による被害が大であったことを反映するものとして注目される」と書かれているんですね。これによれば「広島の如きは県民13名に1名の割で、被害を受けたことになり、長崎、東京もそれぞれ22名に1名。33名に1名という高い被害率を示している」となっている。

でも沖縄県民は、沖縄戦では4人に1人が犠牲になったと知らされてきたので、なぜ沖縄戦については無視するんだろうと思いました。疑問に思って調べていたら、総務省の「一般戦災ホームページ」でいまも見られますが、当時の総理府が(社)日本戦災遺族会(現在は解散)に委託して「昭和52、53(1977、78)年度」から「平成21(2009)年度」まで戦災実態を調査していたことがわかりました(10年度〜14年度は(株)NHKグローバルメディアサービスに委託し「追悼施設・追悼式」をまとめている)。

それは「全国戦災史実調査報告書」としてまとめられており、「空襲の被害」「学童疎開」「戦災孤児」「婦人」と毎年テーマを変えてずっと調査しているんですよ。沖縄は1972年に復帰してますから、沖縄戦の被害調査はどのようになっているかなと読んだら、たとえば77年の空襲の調査で「1都市において100人以上の一般戦死者を出した都市」が74都市あり、北海道から鹿児島までありますが、沖縄が出てこない。

沖縄でも那覇や宮古などで空襲があり、100人以上の犠牲も出ているのに、なぜ沖縄の空襲は調べないのだろうと思いました。それでほかの年度も調べたら、どの調査にも沖縄が入ってないことが判明したんです。

――「はしがき」に「今回は46都道府県における戦災により犠牲をこうむった婦人に対する記録を対象に調査~」などと「46都道府県」とはっきり書いてありますね。

なぜ47都道府県ではなくて46都道府県なのか。それに「学童疎開」でいえば、沖縄から疎開する児童たちが乗った対馬丸(米軍の攻撃を受けて沈没)以上に被害の大きい学童疎開はないはずです。子どもたちの被害は判明しているだけで784名。46都道府県の調査を見ていくと、学童疎開で亡くなった子どもがたとえば4人くらいの県でもちゃんと載っているのに対馬丸はスルーでいいのか。

そしたらこの報告書の204ページに年表があって「8月22日、沖縄から鹿児島に向う疎開船『対馬丸』米潜水艦により撃沈」って書かれてるんですよ。それなのに「46都道府県」ってどういうことなのか。

それで、私は2011年の県議会が最初ですが、県知事に質問する形で「なぜ政府は沖縄の調査をしないのですか」と県の所管に聞きました。そしたら部長が「国に照会しましたところ、これまで国による沖縄戦における総合的な被害調査は行なわれたことはないとのことであります」って。

県が公式に聞いても国はやったことがないということが確認できました。ますますおかしいじゃないかと思いまして、照屋寛徳さんが国会議員なので代表してもらって党と会派と連名で申し入れしたのが2015年です。

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