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吉本興業「闇営業」事件-コンプライアンスを前向きに考えよう

反社会的勢力のパーティーに、会社を通さずタレントが出席していたとして、吉本興業さんは6月24日、パーティーに出席していた所属タレント11人を謹慎処分にした、と発表しています(詳細に報じる毎日新聞ニュースはこちらです)。「なんで芸人の世界にまでコンプライアンスがうるさくなったの?そんなの昔からあったはずでは?」「お笑いの世界にまでコンプライアンスなど言ってたら笑えなくなるよ」といったご意見が出てくるのも当然かと。しかし、時代の流れを考えますとやむをえない部分もありますし、また企業として「前向きに」考えたほうがよいと思われる部分もあります。

1 サプライチェーン・コンプライアンス

東京証券取引所が上場会社向けではありますが「企業不祥事予防のプリンシプル」を公表しており、その原則6ではサプライチェーン・コンプライアンスを推奨しています。上場会社は取引先や下請会社のコンプライアンスにまで目を配る責任がある、ということなので、たとえばテレビ局やCMスポンサーとしては、所属タレントの不正を放置している企業と取引するわけにはいかない、ということです。会計不正事件に発展したオリンパス事件が騒がれたきっかけは、海外メディアが「反社疑惑」を大々的に報じたことでした。とりわけ海外では反社会的勢力との癒着問題が大きく社会的信用を毀損することを考えますと、吉本興業さんとしては徹底して自浄作用を発揮する必要があります。

2 不正はバレる

ご承知のとおり、昨今の不正・不祥事は、スマホによる動画、録音がSNSやマスコミを通じて拡散します。「噂話」なら隠し通せるものも、友人・知人の申告による「決定的な証拠」でバレてしまう時代になりました。また、いったん疑惑が浮上すると、今度はフォレンジックスの発達によって、消したメールや画像でも容易に復元でき、不正調査の精度は格段に向上しています。

加えて「〇〇ペイ」をはじめとするフィンテックの発達で、不正調査では「お金の流れ」を容易に把握できるようにもなりました(お金は受け取っていない、と証言しても、バレる可能性は高いはず)。したがって、私的なスマホやPCを任意に提供しないとなると、それだけで自己に不利益な事実を認めたものと認定されてしまいます( へたをすると口裏合わせをしたことまで証拠物として上がってきます)。もはや不正は仲間うちで墓場まで持っていける時代ではなくなったといえます。

3 商品の品質から企業の品質の時代へ

かつて行政による事前規制主流だった時代には、消費者保護のために「新商品の品質」は個々に厳しくチェックされるのが当然でした。しかし、規制緩和政策が進み、生産者に寄り添う行政から消費者に寄り添う行政へと変わり、事後規制主流の時代になります。すると、企業はできるだけ多くの商品を消費者に提供できるようになり、品質が粗悪な商品は消費者の使用感やレピュテーションで淘汰される傾向が強まってきます(その代わりに、市場で爆発的に売れる商品が、行政や企業の過剰に保守的な判断で眠ってしまう可能性が低下します)。そして、粗悪な商品によって消費者が被害を被らないよう、「企業の品質」で商品の品質を(一定程度ではありますが)担保します。この企業の品質を維持することこそ「コンプライアンス」です。

もちろん、吉本興業さんの場合にはタレントの方々が商品ではなく、タレントさんの提供するサービスが商品ですが、消費者の目の前にできるだけ多くの若手タレントを輩出することができれば、それだけ爆発的に売れるタレントさんが生まれる可能性は高まり、将来収益への期待も上がります。そのためには吉本興業という企業の品質を向上させることで、所属タレントさんのサービス提供に(最低限度の)お墨付きを付与しなければなりません。つまり、吉本興業という会社は、コンプライアンスの向上こそが持続的成長に不可欠、ということになります。平時のコンプライアンス経営に失敗すると、今度は行政機能の一翼を担う(たとえばひとりひとりの芸人さんのチェックを警察に代わって会社が行う等)ことで信用を回復しなければならず、企業経営の効率性は低下します。

つまり「時代が変わったんだからコンプライアンス経営もしかたがない」という後ろ向きの姿勢も理解できるのですが、「コンプライアンス経営を推進すればするほど儲かる」という前向きな姿勢で経営をすることが大切であり、エンターテイメント業界以外の会社でも、同様の発想でコンプライアンス経営に臨んでいるのが現状です。

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