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五輪便乗の殺人ウイルス輸入は許されるか

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西アフリカと事情が違う日本で流行するリスクはゼロ

西アフリカでアウトブレイクしたとき、日本国内でも感染が疑われる患者が数人出て厚労省が検査に乗り出した。西アフリカからの帰国者で急な発熱症状などがあったが、結局、感染者はいなかった。

厚労省はこれを捉えて、「日本でもエボラ感染の危険性がある」と訴え、感染研の村山庁舎をBSL4施設として稼働するよう周辺住民に主張した。だが、日本で西アフリカのようなアウトブレイクが起こる可能性はゼロである。

西アフリカでの感染拡大には、大きく3つの理由がある。

①西アフリカの国々は内戦の影響で医療体制など国の基盤ができていない。

②公衆衛生の障害となる風習や迷信がある。

③人口の過密地域で起きた。

日本とは全く事情が違うのである。たとえ日本でエボラ感染者が出たとしても、エボラウイルスの特性を考えれば、封じ込めは十分に可能だ。

エボラウイルスはインフルエンザウイルスのように空気感染することはない。患者が発熱して下痢や嘔吐の症状が出るようになって初めてその便や吐瀉物が感染源となる。発熱した患者をきちんと隔離し、適切な治療を施すことによって感染の拡大は抑えられる。西アフリカでは実際にこのやり方でかなりの効果を上げた。まして日本は高度な医療設備・技術が整っている。むやみにエボラの侵入に怯える必要はないのである。

本格運用OKから病原体輸入まで4年も経過

産経新聞はBSL4施設が本格稼働することになった時点で、こんな社説(主張、2015年8月11日付)をまとめている。

「感染症研究施設 高い信頼得て運用拡大を」と見出しを付けて主張している。

「病原体について詳しく調べ、患者の治療に役立てられる。日本の感染症対策にとって大きな前進である」

「当面は病原体の検査が中心だが、治療薬やワクチンの研究開発など次の段階につなげるためにも、透明性を高めることで信頼性を増していきたい」

エボラウイルスなどの輸入が今年8月というから、BSL4施設レベルの危険な病原体の取り扱いがOKになってからまる4年も経過しているのだ。いかに厚労省の動きが遅かったかが、分かるだろう。産経社説はこうも指摘する。

「感染症対策上の国際的責任も果たせるようになる意義は大きい」

厚労省の本音はここにある。日本は国際社会から非難されたくないのである。最後に産経社説は訴える。

「航空機などによって感染症は地球規模で広がる。新型肺炎のSARS(サーズ)や中東呼吸器症候群のMERS(マーズ)も出現している。国際社会ではバイオテロの危険性も指摘されている」

「脅威に立ち向かうためにも安全に病原体を研究できるBSL4施設を適正に運用していきたい」

運用が適正であれば、施設周辺の住民も納得するだろう。感染症研究施設が私たち国民の命と健康を守るためのものだからである。

なぜ読売以外は社説で取り上げないのか

沙鴎一歩の知る限り、最近、BSL4施設をストレートに社説として取り上げたのは読売新聞だけである。各社の社説が同じテーマをこぞって取り上げることで、さまざまな角度から論議が巻き起こる。それは社会を変える原動力になり得る。社説が少ないのは、非常に残念である。

2019年6月11日付の読売社説は「病原体の輸入 厳重管理で感染症対策に生かせ」との見出しを掲げる。読売社説はこう書き出す。

「危険な感染症が国内で発生した場合に備えて、対策を講じておくことが大切である」

これは問題ない。問題はこの後である。

これでは五輪にかこつける厚労省と同じ

「外国人観光客の増加などで、新たな感染症が国内に侵入するリスクが高まっている。来年夏には東京五輪・パラリンピックが開かれる。感染症対策の強化は、喫緊の課題と言えよう」

これでは五輪にかこつける厚労省と同じだ。保守という読売のスタンス上、こう書かねばならなかったのかもしれないが、読者としては体制への批判もほしい。

読売社説は後半でこうも指摘する。

「施設は住宅密集地にあり、不安を覚える住民も少なくない。施設自体は1981年に完成したが、事故を警戒する住民の反対で、危険度の極めて高い病原体は扱ってこなかった経緯がある」

「感染研は昨年冬から、施設の安全性について住民向け説明会を10回以上開き、大方の同意を得た。今後も説明を重ね、住民との信頼関係を深める必要がある」

周辺住民に全ての問題があるというような書きぶり

「住民の反対」「説明会を10回以上」など読売社説は、施設の本格的な稼働に反対してきた住民に全ての問題があるというような書きぶりである。どうして厚労省の動きの鈍さと腰の重さを批判しないのか。社説として必要なバランス感覚を失っている。

続いて読売社説は書く。

「実際に国内で患者が発生した場合には、感染拡大を防ぐため、病院や地域の保健所、交通機関などの密接な連携がカギを握る。厚労省が中心となって、日頃から関係機関の意思疎通を図っておかなければならない」

読売社説の指摘を待つまでもなく、関係する組織や機関同士の連携は重要である。

問題は縦割りになりがちな組織(特に公的機関)を、いかに他の組織と結び付けてネットワークを作り上げてくかである。そのためにも読売社説が主張するように「日頃からの意思疎通」が欠かせない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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