記事

緑の珈琲がアリで無色コーラがダメな理由

1/2

まったく新しい製品の「アタリ」と「ハズレ」を分けるのは、いったい何なのか。東京大学経済学部の阿部誠教授は「消費者にビタミン入りの緑のコーヒーは高く評価されたが、カフェインフリーの無色透明なコーラは受け入れられなかった。それは『スキーマの極端な不一致』が起こっているからだ」という――。

※本稿は、阿部誠『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Devrimb)

無色透明なコーラは1年で販売中止

アメリカ市場ではいつもコカ・コーラと熾烈なシェア争いをしているペプシコーラですが、かつては7UPからも、ペプシコーラを引き合いに自製品の不純物ゼロをアピールした“Uncola”という広告スローガンで攻撃を受けていました。

そこでペプシは1992年にカフェインフリーの無色透明なコーラCRYSTAL PEPSIを販売したのですが、評判が悪く、わずか1年で販売中止に追い込まれてしまいました。消費者には、刺激的な黒い炭酸飲料であるコーラと、純粋なイメージを持つ透明とのミスマッチが受け入れられなかったのです。

Cokeに新しいフレーバーを混ぜたCherry Cokeや、砂糖の代わりに人工甘味料を使ったDiet Pepsiのように、多くの新製品は既存製品をベースに改良が施された「漸進的新製品」です。それに対して、CRYSTAL PEPSIは既存の常識やイメージとかけ離れたイノベーション、機能、属性などを含んでいるので、「革新的新製品」と呼ばれます。

斬新すぎると理解しようとすらされなくなる

新製品のコンセプトを消費者が受容できるかを理解するうえで有用なのが、下図の「スキーマ一致効果」です。


スキーマとはある対象や出来事に関して記憶されている情報や知識で、頭の中に意味的ネットワークを形成しています。新たな刺激(情報)が外から入ってきたとき、それがスキーマとどのくらい整合性があるか(一致度)によって脳の活動量が変わってきます。

不一致であればあるほど驚きをもたらすために、注意のレベルは高くなりますが、理解しようとする努力(情報処理)の量は適度な不一致のときに最大となる逆U字型になります。「ほぼ一致」の場合は予想どおりなので認知努力の必要が少なく、受け入れやすくなります。逆に「極端な不一致」の場合は、あまりの違いから理解する努力を諦めてしまうのです。

つまり、消費者は革新的新製品の機能・特徴を、既存の製品カテゴリーと「極端に不一致」と見なすため、製品コンセプトを理解する努力(情報処理)をしなくなり、購入をためらってしまいます。CRYSTAL PEPSIが売れなかった裏には、このようなメカニズムが働いていたのです。

だから「意味付け」が必要になる

一般的に、革新的新製品は漸進的新製品に比べて約4分の1の確率でしか選択されないといわれています。もし、この「極端に不一致」を「適度な不一致」に変えることができれば、消費者の情報処理量が増えるので、革新的新製品に対する消費者の理解が進み、製品評価や受容可能性を高めることができるでしょう。

その変化のカギをにぎっているのが、革新的な機能・特徴に対する「意味付け」です。「コーラは黒くて刺激的なソフトドリンク」というスキーマに「透明な飲料」という要素が入ってくると、スキーマとの「極端な不一致」を引き起こします。

そこで「透明」と結び付きの強い言葉、たとえば「天然水」で意味付けをしてやると、それが「適度な不一致」に変わって、「透明なコーラもありだよね」と消費者が感じるようになるのです。

このような「意味付け」のことを心理学の専門用語では「イネーブラー」と呼びます。イネーブラー(今回は「天然水」)は、革新的な機能・特徴(今回は「透明」)の存在を意味的に肯定することによって、「天然水ならばコーラでも透明である」というカテゴリー一貫性をもたらします。これを示したものが下の図です。


あわせて読みたい

「マーケティング」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    れいわの躍進で連合は無力化か

    田中龍作

  2. 2

    TENGA社員 女性の自慰行為は普通

    AbemaTIMES

  3. 3

    YOSHIKIスカーフ騒動 英で笑いに

    小林恭子

  4. 4

    米大統領 日韓対立の解消支援へ

    ロイター

  5. 5

    ブッフェで食べ残しがダサい理由

    東龍

  6. 6

    落選後に実感「政治は数が全て」

    山田太郎

  7. 7

    米国も懸念示す韓国の北朝鮮支援

    PRESIDENT Online

  8. 8

    「アベやめろ」は単なる選挙妨害

    かさこ

  9. 9

    宮迫博之を干す世論のいじめ行為

    岩田健太郎

  10. 10

    内田樹氏 日本人は対米従属に

    内田樹

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。