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一流店と同収入で5時間早く帰れる定食屋

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■百貨店と同じ収入で5時間早く帰れる

佰食屋の給与形態は、正社員の場合、基本給に各種手当や賞与などがつく、一般的な企業と同じものです。たとえば、正社員の基本勤務を朝9時半から17時までとすると、朝の出勤を30分前倒しすると+1万円、退勤を30分遅らせると、もう+1万円手当がつきます。これは必須条件ではなく、あくまで本人の意思に任せています。

モデルケースを挙げると、百貨店のレストランで働いていた40代の社員は、それまでの年収とほぼ変わらない水準で収入を得ているにもかかわらず、労働時間はこれまでより1日5時間も短くなったそうです。残業ゼロ、しかも圧倒的に労働時間を削減することができたのに収入はほとんど変わらない、と言うのです。

■「誰一人として、仕事が原因で体調を崩してほしくない」

佰食屋では、税理士の先生に呆れられるほど、人件費が高くかかっています。それだけ、事業規模に対して多めに従業員を採用している、ということです。

「もう1人か2人分、削ってもいいんじゃないですか」と、たびたびアドバイスされます。けれども、目先の利益だけのことを考えても、ちっともいいことなんてないのです。

働く人にとって他人事でないのが、心の問題です。

中村朱美『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(ライツ社)

心に変調をきたし、休職や退職を余儀なくされる人がたくさんいらっしゃいます。その原因の多くは、経営者が効率や生産性を優先させ、「従業員全員が毎日全力で頑張らないと会社が回らない」という状態を放置しているから、です。

従業員は人です。一人ひとり生きている人間です。

日々のメンテナンスが必要ですし、たまに体調不良にもなります。家族や子どもが体調を崩し、その看病をしなければならないときもあります。それに、病気になった人のケアに経費をかけても、その対象者以外の人にはなんの恩恵もありません。それよりも、会社側が前もって人員を確保することで、すべての従業員のために経費をかけたい、と思っています。

誰一人として、仕事が原因で体調を崩してほしくない。そして、これからも働き続けたい職場にしたい。

ギリギリの人員で組織を運営して、せっかく教育した社員が続々と退職してしまってから、必死で新しい人材を探すのか。それとも、みんなが気持ちよく仕事できる環境をつくり、長く勤めてくれる従業員ばかりの組織にするのか――。

どちらを選ぶか、ということ。

わたしは、迷わず後者を選びます。

■なぜ「長時間労働は当たり前」になっているのか

これは佰食屋でないと実現できないことなのでしょうか。あるいは、京都だからこそ可能となっている実例なのでしょうか。

講演会でも「うちは業種も規模も違うから無理」「会社で導入するとなると難しい」そんなことを口々に言われます。では、そもそも経営者はなぜ、従業員に残業を強いているのでしょうか。従業員もなぜ、「長時間働くのが当たり前」だと考えているのでしょうか。

日本の労働基準法では、こう定められています。

・使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。

これは、国が定めた「国民が適切に働ける条件」です。それなら、この基準内で、そもそも就業時間内に利益を出せない商品とか企画ってダメじゃないですか。

基準を大幅に超えて、従業員が必死に働いて維持している商品やサービスは、たとえ多くの人に支持されて、たくさん売れたとしても、「誰かが犠牲になっている」という事実は消せません。

就業時間内に利益が出せない事業なんてやめてしまえばいい、と思います。

■自分がやりたくないことは従業員にさせない

「人を雇用する」ことは、その人の人生はもちろんのこと、その人の家族や大切な人の幸せまで面倒を見る、ということです。

果たして、そこまでの覚悟を持った経営者が、どれほどいるのでしょうか。

「従業員はせいぜい頑張って、稼いでくれたらええねん」「営業時間を伸ばせば伸ばすほど、売上は上がる。なんとか頑張ってもらおう」。そう考える経営者の、どれほど多いことか。そんな経営者を見ると、こうツッコミたくなります。

「自分がやりたくないことを、なんで人にやらせようとするん?」

わたしは、絶対に自分がやりたくないことを、従業員にさせたくありません。

わたしが絶対にやりたくないことは、人のせいで残業させられること。18時以降働くこと。京都以外に転勤すること。だからこそ、佰食屋の「1日100食売り切って、早く帰る」仕組みはできました。

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中村朱美(なかむら・あけみ)

「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」代表

1984年、京都府生まれ。2012年に「1日100食限定」をコンセプトに「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」を開業。行列のできる超人気店にもかかわらず「どれだけ売れても1日100食限定」「営業わずか3時間半」「飲食店でも残業ゼロ」というビジネスモデルを実現。また、多様な人材の雇用を促進する取り組みが評価され「新・ダイバーシティ 経営企業100選」に選出。2019年に日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー大賞」を受賞。6月に初の著書『売上を、減らそう。』(ライツ社)を出版。

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(「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」代表 中村 朱美)

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