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日本の企業経営にデータ主義が必要な理由

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「データ重視」で好業績をつかむ海外企業が増えている。一方、日本企業は「データ軽視」で競争力を失いつつある。同志社大学大学院の加登豊教授は「正しい測定と測定に基づく意思決定ができないところに日本企業の弱点がある」と指摘する――。

大谷翔平選手の二刀流がメジャーリーグに大きなインパクトを与えているが、それに先立ってメジャーリグの野球を大きく変えたのが“Statcast”だった。(写真=時事通信フォト)

経営に示唆を得るためのポイントは「測定」

今回の一穴:測定の結果を得ずに、経営判断を行うことがある

現在アメリカのメジャーリーグには、大谷翔平(アナハイム・エンゼルス)、菊池雄星(シアトル・マリナーズ)、田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)、ダルビッシュ有(シカゴ・カブス)、前田健太(ロサンゼルス・ドジャース)を含む9人の日本人選手が在籍している。

とりわけ、大谷選手は昨年鮮烈なデビューを飾り新人賞を獲得したこともあって、日本ではメジャーリーグへの関心が一段と高まっている。ベーブ・ルースを超えるかもしれない投手と打者の二刀流は日本人だけでなく、世界中の野球ファンが注目している。

アナハイム球場は、ディズニーランドのある街アナハイムから車で10分ほど。近くには、おしゃれなショッピングセンターも、おいしいハンバーガーやスペアリブのレストランもある。広大な駐車場に車をとめ、正面入り口に近づいていくと、真っ赤なヘルメットの巨大オブジェが目に入る。

毎年、3月と8月はアメリカに滞在しているが、8月の訪問時には必ずアナハイム球場でのホームゲームの日程をチェックし、事前にチケットを購入するようにしている。行けばわかるが、エンゼルスのホームであるアナハイム球場の売店には、「大谷グッズ」であふれている。

野球を楽しむ、それは結構なことだ。しかし、漫然と試合観戦をしているだけでは「もったいない。」メジャーリーグの大きな変化に着目することで、経営への大きな示唆を得ることができる。ポイントは、「測定」である。

メジャーリーグの野球を変えたStatcast

Statcastは、メジャーリーグのあり方は根底から変えたといわれている。このような動きは、それ以前から存在した。目利きのできるスカウトが強く推奨する選手のリクルートや移籍で獲得するという実務は、長らく採用されてきた伝統的な方法である。

優れたスカウトと娘との親子の愛情を描いた『人生の特等席』(監督:ロバート・ロレンツ、主演:クリント・イーストウッド、2012年 ワーナーブラザーズ)を見れば、アメリカのスカウトについてよくわかる。目利きができるスカウトが、有力だと考える選手の獲得には巨額の資金が必要になる。これが可能なのは、リッチな球団だけである。

これに対して弱小チームのオークランド・アスレチックスのゼネラルマネジャーであったビリー・ビーンは、チームを立て直すためには、他球団と同じ方法を採用することはできなかった。有力な選手を獲得する資金力がチームになかったからである。そこで、彼はデータ分析に基づき、他球団ではそれほど高く評価されていない、つまり、お金がかからない、隠れた「名選手」の発掘に取り組んだ。

また、送りバントはしない、盗塁はしないなどの戦術面についても、データをフル活用した。送りバントは、相手チームにアウトを一つ献上するだけであり、たとえそれに成功しても、得点できる確率はヒッティングを指示する場合よりも低かったからである。ここで採用された分析手法は、Statcastの先駆けであるセイバー・メトリックスである。その存在は他球団も熟知していたが、この手法が野球に関しては素人によって開発されたものであることや、スカウトたちに猛反対などもあって、活用されることはなかったのである。

アスレチックスは、セイバー・メトリックスの分析に基づいて選手を獲得・起用するとともに、得点確率を上げる戦術を実行し、強豪チームへと成長した。詳細はマイケル・ルイスの『マネーボール』に記述されている。『マネーボール』は映画化もされているので、そちらも見てほしい。監督はベネット・ミラー、ビリー・ビーンをブラッド・ピットが演じている、2011年の作品である。

すぐれた身体能力を有する選手ばかりで構成されているメジャーリーグ。そのなかで、常勝チームを作るために、徹底したデータ分析を行う。今や、データ分析能力に劣るチームは、決して強豪チームにはなれないのである。日々、各球団に共有されているデータに自チーム独自に収集したデータを加えて分析を行い、他チームがいまだ気づいていない勝利へのヒントを得ることが、メジャーリーグでは実践されているのである

多くの仮説を徹底検証するセブン-イレブン

データに基づく経営で有名なのは、セブン-イレブンである。すべてのコンビニエンスストアには、POS端末が導入され、個客の購買履歴が把握されている。それにもかかわらず、個客の購買行動を徹底的に分析しているのは、セブン-イレブンだけである。

単に売れ筋・死に筋商品の判定を行い、顧客の購買単価上昇を目指すだけでは、POS端末および情報処理システムへの投資は絶対に回収できないだろう。セブン-イレブンの強みは、購買履歴をベースとして、棚割りや導線を変化させるだけでなく、どの商品とどの商品が同時に購入されるのか、なぜ同時なのか、来店時間と購買行動がどのように関係しているのか、店舗の立地がどのように影響するのかなどについて、驚くほど多数の仮説を設定し、その仮説が妥当なものであるかどうかがデータ分析を通じて徹底的に検証されているところにある。

仮説が支持された場合、その仮説から導かれる店舗運営のさまざまな実証実験が行われ、個客の購買行動の解明が行われるのである。このような分析力のない他のコンビニエンスストアは、セブン-イレブンの行動を後追いすることしかできない。データ解析上重要なのは、ハウスカードを通じて獲得できる顧客の実年齢や性別ではなく、POS端末を操作する店員(その多くは、アルバイト店員)が、入力する顧客の「見た目」の年齢と性別である。「見た目」の年齢と性別が、購買行動の間に影響するからである。メンズの雑誌を購入するのは、男性だけではない。基礎化粧品に興味を示すのは、女性のみとは限らないのである。

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