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霞ヶ関の機能不全について

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「霞が関の機能不全」という言葉を時々耳にするようになりました。

記事など報道を目にすることも最近増えたように思います。

政策を作ってる現場から見たその背景や変化についてお話したいと思います。

あくまで私見であることをご理解ください。

1.政策のスピードとダイナミズム

近年、起こっている様々な政策課題に対する対応のスピードやダイナミズムは格段に上がっています

それを政治主導とか官邸主導とか呼ぶ人もいますが、ここではそれは横に置いておいて、とにかくこのことは、ニーズに迅速に対応するようになったので国民の暮らしにとって、とてもよいことと思います。

(児童虐待の例)

例えば、僕が一番長く担当していた児童虐待。

自分が担当していた10年前に比べて格段にホットな話題になっていますね。

悲惨な事件に胸を痛めておられる方も多いことでしょう。

でも、実はこの10年以上児童虐待による死亡事件は増えていません

多少でこぼこはありますが、だいたい年間50件程度で推移しています。

私が担当していた頃もメディアで大きく報道され話題になった、悲惨な本当にかわいそうな事件はいくつもありました。

その頃も、その都度対応はしていましたが、誤解を恐れずに言えば、何とかできる範囲で対応している感じで、大きく児童相談所の現場の職員が増えたりはしていません。政策課題としての認識の高まりに沿うように毎年少しずつ増やしていきました。

この頃は児童虐待は厚労省の一部局が担当する課題に過ぎなかったのです。

上記のように児童虐待の死亡事件は増えていませんが(相談通告の件数は激増)、今は、厚労省に政府全体を調整する機能が与えられ、省庁の垣根を超えて対応する体制もできています。そして政治の強いリーダーシップの下で、児童相談所の大幅な増員(一気に2000人の増員、弁護士や医者など専門家の配置を進めることも決まっています)や制度改正が短期間で決まっていくようになりました。この4年で3回も法律改正していますが、これは極めて異例のことです。(私もそのうちの1回に深くかかわりました)

2.政策を作る現場の課題

児童虐待は、一例ですが、あらゆる政策分野で同様に大きな変化が迅速に求められる状況になっています。

一方で霞ヶ関の人員は増えないので、政策を作る現場では、あちこちの部署が極端に忙しくなり、そういう状況に足がもつれそうになりながら、ある部分は職員の自己犠牲もありなんとかついて行っている状況で、それが大きな課題です。

(実は、私も激務の中で今年体調を崩しましたが、自分がセルフマネジメントできず無理をしたということの他に、突き詰めればそういう背景があります)

こういう「何とかついていっている」という状況を、霞が関の機能不全という言葉は表現しているのかもしれません。

3.政策立案機能の作り方

では、なぜ「なんとかついて行ってる」という状況になるのでしょうか。人が足りないというのは単純な話ですが、もう少し政策を作る現場の動きを噛み砕いてみましょう。

本当は、役人というのは、世論が盛り上がって政治がGOサインを出した時に、「よし。今が政策を進めるチャンス」と思って提示できるように、以前からあたためていた腹案をいくつかもっていないといけません

そのためには、常日頃から、勉強をする時間、外部の様々な人の話を聞く時間、政策のヒントになるような最先端の現場課題を抱える現場を見て回る時間、他省庁などとも含めて関係者と本音で話せる関係を作る時間、政策を構想する時間などを自主的に確保しなければなりません。

霞ヶ関に閉じこもっていると、そういう政策のヒントの情報収集も調整を助けてくれる人脈づくりもほとんどできません。

これまでの延長線上の情報しかなかなか入ってきませんし、実際に仕事をしている中で会う人間は概ね役人、政治家、担当分野を専門とする学者、担当分野に関係のある各種団体、メディアに限られてしまいます

そして人の思考や世界観は、会う人の範囲に限定されてしまいます。

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