- 2019年06月22日 19:57
ゾンビ映画を作ったジム・ジャームッシュ、禁煙成功は『大菩薩峠』のおかげだと語る
1/2
ジム・ジャームッシュ監督の最新作『ザ・デッド・ドント・ダイ(原題)』がカンヌ国際映画祭でプレミア上映される数日前、監督にインタビューすることができた。ゾンビ映画を作った理由、イギー・ポップ出演の裏話、そして日本映画が禁煙にいかに役立ったかについて語ってくれた。
—まず、なぜゾンビ映画だったんでしょうか?
数年前、『パターソン』(2016年)と言う映画を作って、知ってると思うけど、そんなに軽い内容の映画でもなかった。で、次はすごくバカげたものを作りたくなった。『コーヒー&シガレッツ』(2003年)みたいな、笑えるやつをね。キャラクターの下地は、アニメのような感じでね。そんな映画のアイデアを思い浮かべていた時に、ゾンビ映画が面白いんじゃないか、って思って……。
—最初は短いシーンを集めた映画を考えていたとか。
そうだね。俺は元々、1人か2人のキャラクターを中心にして、一つの視点から物語が進んでいく方法を取っている。もしくは『ミステリー・トレイン』(1989年)や『コーヒー&シガレッツ』のように、短編の構造にしながらも、一つ一つが独立した話になるような形が多い。それらは複雑に絡み合っていくものだから、挑戦になるんだ。そこに特殊効果を入れるなんて……俺が作った映画の中で、一番難しかった。体力的にも大変だったよ。『デッドマン』(1995年)だって作品に殺されそうになったけど、あの時俺はまだ若かったからね。
ジャンルってただの枠組みなんだ——自分の思ったものは何でも盛り込むことができる。『デッドマン』は、典型的な西洋映画じゃない。ぶっ飛んでいて、少しサイケデリックな映画だ。『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』は——ラブストーリーだけど、それがヴァンパイアに起きてるって話。あれは俺流の、自分以外の人間の欠点も含めて、すべてを受け入れるお話なんだ。誰かをありのまま愛して、それを永遠に続けるって言うね。(少し考えて)まさに永遠、だよね! だって、彼らはヴァンパイアだから。でも俺は映画に関することで、ヒエラルキーは気にしないよ。どんな映画も大好きだからね。
—ゾンビ映画もですか?
(少し考えながら)ゾンビ映画に大きく惹かれていたかと聞かれれば、それは嘘になるって認めないといけないな。俺はそんなにTVも見ないし『ウォーキング・デッド』も見たことがない。それに、特にゾンビ映画が好きな訳でもないんだよね。
ゾンビよりヴァンパイアの方が好き
—そうですか……。
でも、古い映画のテーマとしては好きだよ。『恐怖城 ホワイト・ゾンビ』とか、『私はゾンビと歩いた!』とかね。これらはハイチのブードゥー教のゾンビの話で、自分の命令を聞いてくれる。彼らをコントロールすることもできる。当時の映画では、こういった物語の手法が多かった。
でも俺にとって、ポスト・モダンなゾンビ映画界で偉大だと思うのは、ジョージ・A・ロメロ監督。彼は本物だ。俺の映画には、ロメロ監督のオマージュがたくさん見られるよ(笑)! 彼が遺したものは本当に素晴らしいよね。
—彼が遺したもの、とは?
それまであったコンセプトを、すべて覆したこと。ゾンビをコントロールすることって、できないよね。彼らは指示を受けない。一般的なモンスターであって——ヴァンパイアとか、フランケンシュタインとか、ゴジラとか、色々あるけど——社会の枠組みからは外れている。むしろ社会に対しては危なくて、恐怖を与えてくる存在なんだ。でもロメロ監督は、ゾンビを社会の枠組みから生み出した。彼らを、社会のシステムの何らかの失敗の象徴とした。社会の枠組みがうまくいかなかった結果が、ゾンビになった。彼らは人間の内部から出て来て、人間を食べるんだ。
—あなたもロメロ監督の消費主義的な要素を取り入れてますよね。例えば「コーヒー」や「Wi-Fi」のように、ゾンビたちが生前愛したものを、常に求めるようになったり……。
(笑)そうなんだよ、そのアイデアは『ドーン・オブ・ザ・デッド』から拝借した。その中で、ロメロ監督のやったことが大好きなんだ。彼らは馴染みのある場所に住んで、生きていた頃に欲していたものを欲するけど、魂がない。彼らはもう自分の中に何もないけど、自分が生きていた頃に持っていたものを単細胞が求める。その部分に共感したんだ。
俺たちの作品の中でも、ゾンビはかつて着ていた洋服を着ている。アイデンティティーはどこかに行ってしまったけど、その痕跡として。(少し考えて)痕跡という言葉は、ロメロ監督が彼らをどのように描いたかということに対して、良い言葉かもね。
—ゾンビ映画がお好きなように聞こえますが?
俺はゾンビが嫌いなだけだと思う。俺はゾンビのファンじゃないんだ。ヴァンパイアの方がよっぽど好きだよ。彼らは複雑な生き物だし、セクシーだし、頭も良い。生きるために、大変なことを色々とやらないといけないしね。彼らは姿形も変えられるし— —今はコウモリだとしても、狼にもなれるしね! あいつらはカッコいい。ゾンビのカッコいい部分って何だ? 奴らは命のない何かで、魂のない人間だ。貧弱な存在だと思うよ。
- Rolling Stone Japan
- 音楽カルチャーマガジン米Rolling Stone誌の日本版



