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渋谷スクランブル交差点の何が悪かったのか

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前回はアレでもかなり抑え気味に渋谷区の路上飲酒禁止条例に関するエントリを書いたのですが、その後、以下のようなニュースが流れてきて、僕の中の怒りのリミッターが大決壊ですよ。以下、シブヤ経済新聞からの転載。


「ハロウィーンを楽しむために」 渋谷区、路上飲酒や騒音禁じる条例施行
https://www.shibukei.com/headline/14224/

不特定多数の群衆の来街自体を防ぐ手だてが無いことなどから解決策が限られる中、条例を設けることで歯止めをかける一方、長谷部健渋谷区長は「一部の心ない人たちの迷惑行為や犯罪行為。本来であればマナーやルール、道徳の範ちゅうで解決されるべきもの」などとコメント。「条例が必要となるに至ったことは大変残念」と悔しさもにじませた。


1. 条例は必要ないです

上記記事内で長谷部区長は「条例が必要となるに至ったことは大変残念」などとコメントしていますが、昨日のエントリでも述べた通り「路上飲酒」を禁止する条例を作ったところで実効性は殆どありません。むしろ、いま長谷部区長がやっていることは「スクランブル交差点に不特定多数の群集を集める」というご自身が長らく掲げて来た施策から生じた「負の側面」に対する責を「路上飲酒」に預け、スケープゴートとしているだけです。

勿論、一番悪いのは迷惑行為や犯罪行為を起こす一部の心ない人達でありますが、そういう人達を「寄せてきていた」のが長谷部氏の掲げた渋谷駅前スクランブル交差点の開放という施策だったわけですから、失敗は失敗として受け止めなければなりません。

2. 先例に学ぶナイトタイムエコノミーの失敗

渋谷スクランブル交差点の開放政策の何が間違っていたのか。それはすごくシンプルに、集まった群衆が街の経済に貢献していなかったことです。2017年に刊行した拙著「夜遊びの経済学」では、この問題を「神戸ルミナリエの失敗」や「シンガポールのペデストリアンナイトの失敗」のエピソードで説明してます。

クリスマスシーズンのイルミネーションイベントである神戸ルミナリエは、ピークとなる2004年には開催期間中に530万人の客をあつめるイベントであったにも関わらず、街の商店街からの支持を失い、協賛金が不足したことで年々開催が縮小し続けているイベントです。その理由が、530万人ものひとを集めるイベントであるにも関わらず、その群衆はただ行列を作って歩くだけ。街の商店街の売上に一切貢献しないという経済構造になっているからでありました。地元の商店街ではルミナリエシーズンになると商売が成り立たないとして、早々に店じまいをしてしまう店が数多く存在しており、そんなイベントが街から支持を受けるハズがありません。

シンガポール政府がかつて社会実験として実施した、ナイトタイムエコノミーの振興施策としてペデストリアンナイトと呼ばれる施策があります。同施策は同国最大の目抜き通りであるオーチャードロードを夕刻以降にホコ天化し、様々なイベントと組み合わせながら集客を行うイベントでした。同施策は「集客」という面では一定の成果を上げ、通常日と比べ2倍以上の群衆を路上に集めましたが、その群衆が近隣の店舗に還流せず、商業的な売上に還元されない施策となりました。シンガポール政府は、本施策を断続的に数回ほど実施した後、ナイトタイムエコノミー施策として機能しないと判断し、別の施策に政策資源を集中する為、同施策の中止を決定しました。

3. 経済に還元しないナイトタイムエコノミー施策は不要

これと同じ状況が、渋谷ハロウィンでも起こっています。実は筆者は、軽トラ横転事件などが起こりセンセーショナルに報じられた2018年の渋谷ハロウィンに実際に足を運んでいました。そこで目にした光景は、夕刻5時くらいから早々にシャッターを閉める地元薬局。店舗入り口を仮装客が塞いでしまう為、裏口しか営業に利用できず、お客様が殆どいないパチンコ店。そして、屋外を練り歩くことがメインのイベントになってしまっているが故に、路上に人は溢れていても、それが殆ど集客に繋がっていない飲食店の姿でした。

観光振興や「街の賑わい創出」などという名目で全国自治体で政策的に推進されいる地域への集客施策ですが、そもそも地域に大量の異邦人を呼び寄せる施策は、地域住民にとっては「マイナス・スタート」となる施策であることを忘れてはなりません。大量の異邦人がまき散らしたゴミを回収するコスト、安全を守る警備コスト、彼らが使う公衆トイレの維持コスト、彼らが使う道路も標識も信号も、すべてが地域のリソース、即ち地域住民が支払った税によって維持されているものであります。

それらを「食い散らかす」多量の異邦人を地域に集めてくる観光振興や「賑わい創出」施策を正当化できる唯一の根拠は、それら異邦人が街の経済と人々の暮らしを支える「カネ」を運んでくるから。各種地域インフラの維持管理コストを上回る経済的価値がそこに生じるからに他なりません。

逆にいうのならば、カネにならないのであれば観光振興も地域の賑わい創出も街の為にはならない。余所者の居ない、静穏な生活を守れる環境を維持出来ていた方が地域住民にとっては幸せであるのです。これは、拙著「夜遊びの経済額」において、しつこいほど繰り返し論じたことでもあります。そして、残念ながら渋谷ハロウィンは、そういう類のイベントとなってしまっていたのが実情であります。

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