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規制緩和に成功した航空業界

あつまろです。

関越自動車道の高速ツアーバス事故は、規制緩和によって過当競争が原因となっているという声も聞こえてきました。「関越道バス事故は規制緩和が原因?

今回はバスと状況が似ている航空事業についてみてみます。バスと航空は全然違うじゃないかとツッコミがあるかもしれませんが、航空事業は鉄道事業に比べると新規参入障壁が低いのです。

「航空事業の状況」
初期コストが意外とかからないのです。鉄道は線路や駅といったインフラ設備が必要になりますが、航空は空港施設という公共設備を利用できるので自社設備が不要です。また、航空機はリースが利用できるので機体を保有しなくとも運営が可能です。
また、撤退時は航空機がリースであれば返却すれば終わり、保有している場合もたいていは中古として売却すればOKです。

「米国の規制緩和30年の歴史」
米国は1978年の航空規制緩和法が決まりました。路線参入の自由化をはかり、新規参入を認めて価格競争を行って結果の運賃の値下げと、サービスの多様化をねらいとしていました。これにより、消費者に選択肢を与えるということと、規制に守られた企業収益を多くの企業に分配させるというねらいがあったそうです。
一方で反対意見もありました。競争が激化すると、運航や整備がおろそかになって事故が増える。つまり、競争が激化すると従業員の労働がきつくなり、運航に支障をきたすということです。日本でよくありそうな議論です。

しかし、その結果はどうなったのか。運賃は下がり、便数は増え、路線網が拡大して旅客数が増えました。そのなかで懸念された事故や死者数は大きく変化しなかったことから相対的に安全性が向上したという結果でした。日本におけるバス事故も実際には事故件数は大きく変化していませんでした。

「サウスウエスト航空の登場」
日本でも格安航空会社(LCC)が目立つようになってきましたが、LCCの先駆けはサウスウエスト航空です。機種をボーイング737に絞って、パイロットや整備士の訓練の統一化、スペア部品を絞ることができたこと。また、第二空港に発着する手法。ピーク時とオフピーク時で異なる運賃とする制度を開始するなど、世界のLCCはサウスウエストを手本にしています。年間輸送旅客数は航空業界で2009年1億133万人と世界ナンバー1だそうです。米国の航空規制緩和がLCCを生み出し、巡り巡って日本でもようやく認知されてきました。

「投資家の視点」
最後に投資家の視点でみてみましょう。マイケル・ポーターが業界構造を分析するためにファイブフォース(5つの競争要因)の考え方を挙げています。5つの要素とは、新規参入の脅威、代替サービスの脅威(間接競合)、供給業者の交渉力、買い手(顧客)の交渉力、 競争業者との敵対関係(直接競合)があります。航空事業やバス事業はやっぱり厳しいです。あのウォーレン・バフェット氏ですらUSエアという航空会社株を一時保有し、後日投資した理由を後悔をこめてこう語っています「一時的に発狂していたからといえば、いちばん近いだろう」。

バフェット氏は2009年に鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタフェ社(BNSF)を買いましたが、鉄道事業はファイブフォースから考えても納得がいきます。航空会社やバス会社はサウスウエストのような異端児が生まれる場合がありますが、高い収益が期待できず価格競争に陥りやすい難しいビジネスです。

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