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暴力団は「一切ない」、風俗嬢の写真は「補正しない」 当事者達が語るソープランド街・吉原のいま【止まり木の盛り場学 第2回】

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昼の「色街」を歩く 日本最大のソープランド街・吉原の現在【止まり木の盛り場学 第1回】

吉原、色街の周囲で働く人々に話を聞き、歩き回った二人は、いよいよ、色街で「色」そのものをなりわいにする人たちに話を聞く。今回時間を割いてくれたのは、ソープランド事業者の組合の人々、現役のソープ嬢、デリヘル店オーナー、風俗嬢専門のフォトグラファーたちだ。

今回はまず、吉原のソープランドが加盟する組合にお話を伺うことに。遊廓がなくなったあとの吉原には変遷があり、現在はソープランドを中心とした街となっているのはご存じのとおり。しかし、ソープランドの成り立ちについては、あまり知られていないのではないだろうか。当事者だからこそ語ることのできる、知られざるエピソードとは——

テープ起こし/ユウミハイフィールド

横田:今回の街歩きの本丸ですね。でもすみません、センシティブなテーマをたくさん含みますから、正直に言って、こうやって会ってお話をしてくれるって思いませんでした。やっぱり吉原にお店(カストリ書房)を構える渡辺さんの信用力かな!?

渡辺:今回のインタビューが実現しただけでも、吉原に店を構えて良かった(笑)。

「誰も引き継がなければ消滅」浅草防犯健全協力会に聞く吉原のいま

渡辺:こんにちは。早速ですが、こちらの会は吉原のソープランドの組合だと思いますが、加盟店は、遊廓の時代から代々ご商売を続けているのでしょうか?

協力会の事務所にてお話を伺う。緊張気味な渡辺と横田

松下:こんにちは。私は副会長の松下です。いま吉原では147店舗のソープランドが営業していますが、世襲の店は数店舗しかありません。昔経営をしていても、今は場所を貸してる大家さんという立場の方が多いですね。私たち協力会は、お店の経営にはノータッチ。対行政の仕事や地域の安心安全を守るために活動しています。

横田:たぶん多くの人が疑問に思っていることを、ストレートにお聞きしてもいいでしょうか・・・。昭和33年に赤線(※1)が廃止されて、売春がダメになったあと、このエリアは建前上、色街じゃなくなったと思います。他の赤線地帯は壊滅していったなか、どうして今もこの街は、150軒近くもの店が営業できているんですか?

不破:こんにちは。理事の不破です。それは上の世代のことなので、なんとも言えませんが、なにか運動した人たちがいたのは間違いないですね。で、その後、私たちの組合は昭和51年に68店舗からスタートしたのですが、昭和52年くらいから店舗が増えています。その当時はまだ風営法がない緩い時代ですから、お店が増えても問題ないし、24時間営業していてもOKだったんですよ。現在だと風営法で縛られているので、147店舗の中で大家さんも経営者も亡くなり、誰も引き継がなかった場合、店舗が消滅します。

渡辺:代替わりして経営を引き継ぐことはできるんですか?

松下:個人事業の場合は一代限りで、その方が亡くなったら終わりです。しかし吉原の場合は法人に許可が下りているので、147軒のお店があったとしたら147法人が経営をしているということになります。昭和57年頃にソープランドの新規開業を禁じる東京都の条例ができたので、改修はOKですが、それ以降は建て替えも禁止です。

横田:風俗街じゃない街に、ポツンと残ってる古いソープランドは、高齢のオーナーさんが意地でやってて、亡くなってしまったら終わり、と聞いたことがあります。吉原は個人から法人にすることで、断絶しない仕組みにしてあるんですね。

渡辺:吉原以外のこうした組合と、横の繋がりはあるんですか?

松下:地域ごとに条例が異なるので、繋がりが活きる場面が少ないと言いますか。もちろん、それなりにお付き合いはありますよ。他のエリアの経営者が吉原に来て、まず驚かれるのが、行政の厳しさですね。風俗店は警視庁と保健所の管轄になるんですけど、霞が関のお膝元だけあって、非常に厳しく管理されています。例えば改修工事をするにあたっても、壁紙一枚張り替えるのにも許可がないとできないんですよ。吉原でしかあり得ない厳しさです。

横田:それは厳しいですね。オリンピックも近づいてきていますが・・・

理事の不破氏。不破氏の先祖は遊廓経営者

「付き合うことがリスク」暴力団の影が吉原から消えた理由

松下:年に1回、浅草警察署での業者向けの講習会というものがあるんですけど、その際に「オリンピックを控えて、国からは風俗街を浄化すべきではという声が挙がっています。くれぐれも近隣地域の住民とトラブルを起こさないでください。そして法律違反をしないでください。法令違反はもちろん、薬物や反社会勢力との関わりが発覚した場合、店単位での浄化は躊躇しません」とはっきり伝えられました。

渡辺:ちょっと聞きにくい話をします。風俗店は暴力団と繋がっているというイメージを持つ人は多いと思うんですが、実際のところは・・・?

不破:それこそ浅草には、その方面の事務所も多いと思いますが、吉原には一切ないですね。今は暴対法があって、組の名前を出すだけで逮捕される時代ですから。むしろ付き合うことがリスクなんですよ。たしかに私が高校生くらいの頃は、みかじめ料を断った店がバキュームカーで店舗をぐちゃぐちゃにされて、一ヶ月くらい臭くて、店が使い物にならなかったという話もありましたが(笑)。今はどんな手を使っても、吉原には入り込めないと思います。全国の風俗街の中でも、トップクラスの安心安全な街だと思います。

横田:バキュームカーも来ない、日本一安心安全な色街が、吉原ってわけですね。

オリンピックを控えた現在の吉原について、聞きづらいことをすんなり聞けてしまい大興奮の二人だが、吉原ソープ街の生き字引こと当協会の会長が登場。話はさらに盛り上がる。

「ロマン風呂」から「ソープランド」へ

渡辺:赤線の後、いわゆるトルコ風呂になったものの、昭和59(1984)年に、トルコ人留学生の抗議から発展して、改称を迫られる騒ぎとなりましたよね。「ソープランド」に決定した経緯を覚えてらっしゃいますか?

会長:それが面白い話なんだよ〜! 最初は組合ごとにてんでバラバラな候補名を出してたの。うちは「ロマン風呂」だったんだけど、どう?垢抜けないだろ?(笑) 東京都の組合が「ソープランド」という名前に決めたんだよ。

渡辺:「ロマン風呂」もノスタルジーがあって、私はいいと思いますけどね(笑)。

会長:でもさ「ソープランド」って、いい名前でしょう。それで東京都の協会ったら、はしゃいじゃって週刊誌やら新聞やらを呼んで、大々的に襲名披露のお祭り騒ぎをしたら、保健所から大目玉(笑)。今じゃ警察も保健所も「ソープランド」と呼ぶからね。定着したもんだよな。

横田:客層の変化を感じることはありますか?

松下:吉原に限らず大人のレジャー産業はすべてそうだと思うんですけど、少子高齢化の影響ですね。お若い方より、40〜60代の方がお元気ですよね。土日は集団で遊びに来る方もいらっしゃるので、劇的に減ったということではないですが、年配のお客さんは意外と多いです。

会長:俺は値段の変化を感じるね。今はすごく安いと思うよ。大衆店なら1万円で遊べる店もあるけど、俺の頃からは信じられない。

渡辺:かつて某有名なソープが、「ワン・ツー価格」つまり入浴料とサービス料の総額3万円を売りにして、業界の寵児となりましたが、当時は3万円でも大衆的な安さだったとか。

松下:バブルの前で平均が総額3万円くらい。高級店はもう少し高かったと思うけど、大衆店はおおむね、それくらいの料金でしたね。バブルに入ったときに全体の料金が底上げされたんですよ。そしてバブルがはじけて相場が落ちたかというと、店舗ごとにまちまちだった。そうやって現在の価格のバラつきが生まれたんでしょうね。

あの手この手の経営戦略 過去には女性向けサービス店も存在!?

横田:吉原のお客さんが減っている理由はどんなところにあると思いますか?

会長:店側での写真の見せ方もあると思うな。いわゆる修正だよね。ありのままの写真を見せてしまえばいいんだよ。

横田:写真ではなく、女性本人をお客さんに直接見てもらうということは仕組み上は難しいことなんですか?

会長:それができるならやってみたいけど、なかなか難しいだろうな・・・。でも、俺は昔ね、待合室にビリヤード台を置いて、お客さんと女の子が自然な流れで一緒に遊んで、そのまま個室に上がるというのを考えて、実際にそれで営業したことあるんだよ。

横田&渡辺:おー! それは新しいアイデアですね!

会長:そうだよ、すごく盛り上がったんだよ!でもね、一週間で所轄の保健所が来て、ビリヤード台はテーブルと認めないと言われて、その案はあえなく終了。 でも、すごくいいアイディアでしょ?(笑)。遊びを通して気心知れるのと、いきなり個室に上がるのでは違うと思うんだよ。なかなかいい案だと思ったのに、もったいないよなあ(笑)。

渡辺:ソープは「個室付き特殊浴場」となっていて、法律上は男性前提とはしてないサービスですけど、ということは女性向けのサービスを提供する店をつくろうと思えば、つくれるんでしょうか?

松下:仕組み上も問題ないですし、吉原にも昔あったみたいですよ。でもサービスする側の男性の身体が持たなくて、すぐに潰れてしまったんだって(笑)。

渡辺:今日はいろいろお話ししにくい点まで教えていただき、ほんとうにありがとうございました。

松下:いえ、お役に立ててよかったです。いつでも来て下さい。

組合を後にした二人は、すっかり日がくれたネオン輝くソープ街を抜け、現役嬢、デリヘル店オーナー、風俗嬢専門フォトグラファーの待つ某所へと歩を進めていく・・・。

ホロ酔いで、最後の取材者が待つ店のノレンをくぐる

渡辺:横田さん、かなり突っ込んだ話しまでしてくださいましたね。

横田:びっくりを通り越して、少し拍子抜けするくらい。それだけ経営が健全であるとの自信の現れということでしょうか。地域とも歩調を合わせて営業しているのが、よくわかりましたね。

とっぷり日が暮れてから、さらに吉原の話、それも現場の声を聞きたい二人は、一軒の寿司屋に繰り出す。色街の人々との仲を酒が取持ち、日本最大の風俗街・吉原の今が見えて来る。風俗嬢専門フォトグラファーの酒井よし彦氏、元吉原のソープ嬢にして現・デリヘル店オーナーのママ、現役ナンバーワン風俗嬢のお三方が、不惑のおじさん二人を待ち受ける。

「補正はしない」風俗嬢のパネル写真に新たな流れ

渡辺:こんばんは。今日はよろしくお願いしますね。風俗嬢を専門に撮影している酒井さんに早速お聞きしたいんですが、風俗は美しく見せる補正テクニックの最先端な業界だと思いますけど、最近はどうでしょう。

酒井:僕は基本的に補正をしない方針です。良く勘違いされるんですけど、実は最近では補正しない流れになっているんですよ。吉原は補正するお店も多いですけど、地方ほど補正をしないですね。

渡辺:えー、それは意外です!

〝扇情〟カメラマンこと酒井よし彦氏が明かしてくれる撮影事情は一般のイメージとは大きく掛け離れたものだった

酒井:今、風俗が下火になった原因のひとつに修正写真もあると思うんですよ。吉原は100店舗以上あるエリアですが、風俗街に10軒くらいしかないような地方の場合、ひとつのお店で写真で騙されたら、もうそこの場所では遊ばなくなってしまう。

横田:写真の補正具合とお店の信用、さらに地域の信用、健全性に繋がっているということですね。さっきのソープ組合の会長さんの話と通じるな…。

渡辺:酒井さんが風俗メインのカメラマンとして活動するようになったこの15年間で、働く女性たちの変化を感じます?

酒井:今の子たちはだいぶライトな意識になったと思いますね。例えば、いざ撮影になっても「わたし聞いてません」と何も準備していない。教えていない方が悪いという意識です。吉原では「私服とドレスと、下着の写真撮ってもらいなさい」ってそれ以上は何も教えない。私服というのは、女性らしくて身体のシルエットが出るもの、下着は高級なものでガーター着用も含まれているんですけど、「自分で考えろ」という教育だから、必要以上は何も言わない。でも何も考えない子たちは、安っぽい下着で撮影に来て、「あなた、高級店だよね?」となることも多い。

「家から店まで、靴に土をつけてくるな」変わっていったソープ嬢の暮らし

渡辺:働く側の意識はともあれ、実際稼げているんですかね?

酒井:だいぶ収入は減っていると思います。もちろん中には月に400万円とか稼ぐ子もいますけど、平均すると100万円前後だと思います。月に15日しか出勤しない子たちもいますから。昔に比べたら女の子たちの生活は質素になっていると思いますね。

渡辺:しゃかりきに働いて貯金あるいは散財するというよりも、限られた収入の中でそれなりに暮らしている、と。さっき街でお話を聞いたら、バブルの頃はブランドの服で着飾ってたのに、今はデニムに普段着で出勤する女性も多いと。

酒井:なにせ、昔は「家から店まで、靴に土をつけてくるな」と教育されてましたからね。タクシーで来いっていうことです。デニムで出勤なんてしたら、まずお店に入れてもらえなかった。

横田:それは気品や夢を大切にしろということなんですかね? 吉原らしいというか、昔の遊廓時代も他のエリアとは違う格や品を演出したように、矜持のようなものが昭和後期までは結構残っていたということですね。

酒井:そうですね、高級店ではそれなりの立ち居振る舞いをしなさい、という教えがあって、とても厳しかったんですが、いまは厳しくすると女の子が出勤しなくなってしまう。最近では逆転現象が起きているらしいです。昔は高級店に若くてかわいい子がいた。今は、格安店・大衆店の方が規律も楽だし、出勤もうるさくないから、若くてかわいい子がそちらへ流れていく。


15年間、ファインダーを通して吉原を見続けてきた酒井氏に映る吉原の変化は、社会の断面と、どこか重なる。そこに、1970年代から吉原で働き、現在は鶯谷でデリバリーヘルスを経営するママが合流。過去と外から見た吉原とは──。

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