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呉服店が「ハーフの子を産みたい方に。」3年前の広告が炎上 - 網尾歩 (コラムニスト)

広告界、時代を読めるはずなのに。

(Satoshi-K /Getty Images)

着物を着ると「ナンパしてくる人の年収は上がる」?

「驚いた」

「理解不能」

「下品」

そんなつぶやきがツイッター上にあふれた。6月19日夜から突如として炎上したのが、老舗呉服店が3年前に打ち出した広告。着物を着た女性が横断歩道を歩く姿に「ハーフの子を産みたい方に。」とキャッチコピーがかぶせられていた。

着物を着ると外国人からの注目度が上がる、だから外国人と結婚したい人におすすめ。そのような意図を込めたコピーだと推察される。広告は複数パターンあり、その他のコピーは「ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる。」「着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。」など。

人からどう見られるかが着物を着る基準であるかのような内容や、品のある装いを唱いたいがために「年収」を持ち出す品のない表現が顰蹙を買っている。とはいえ最も驚きを持って捉えられているのは、やはり「ハーフの子」の表現だ。

最初にこの広告を問題視したのは、メディアや広告における「ハーフ」などの表現を注視するアカウントだった。「ハーフ」や「外国人風」などの表現を安直に使う風潮に異を唱えるこのアカウントが、呉服店の広告に対して、「私達はペットでも人形でもありません。この屈辱を想像出来ますか? もううんざりです。」とツイートしたのが19日の20時51分。わずか半日で1万8000回以上リツイートされている。

2016年はどんな時代だった?

このコピーは大手広告代理店のコピーライターが制作し、驚くことに2016年に東京コピーライターズクラブで新人賞を受賞した作品なのだという。

3年前とはいえ、すでに広告表現のネット炎上が話題となっていた時期だ。ネット炎上を追う当連載の過去記事を振り返ると、当時は「H.I.S.の『東大美女図鑑の学生たちが、あなたの隣に座って現地まで楽しくフライトしてくれるキャンペーン』」、「男性同性愛者に『女の子と付き合ったら変わっちゃうんじゃない?』と発言した女優」、「鹿児島県志布志市のスク水UNAKO動画」などが炎上していた。

それでは「ハーフ」や「外国人」に関する表現はどうだっただろう。

芸能界では、2010年代から「ハーフモデル」が“流行”し始めたと言われる。ローラやトリンドル玲奈、ダレノガレ明美、マギーらがバラエティ番組などで全国区となったのも2010年以降だ。

「ハーフモデル」が台頭する一方で徐々に言われ始めたのが、「ハーフ」という表現自体が持つ差別的なニュアンスや、「ハーフ“だから”憧れる」ことは外国にルーツを持つ人への差別的感情と表裏一体であるという指摘だ。

2015年には宮本エリアナさんがミス日本代表に

ミス・ユニバース2015世界大会の日本代表に選出された宮本エリアナさんは、日本人の母とアフリカ系アメリカ人の父を持つ。子ども時代に肌の色で差別を受けたことや、「ハーフ」の友人が自ら命を絶ったことを、インタビューでたびたび語っている。彼女が日本代表に選ばれたときに「違和感がある」と言った声が出たことも、日本で外国人差別があることの証左だろう。

過去記事をたどれば、たとえば2015年9月には「『ハーフ』をめぐる差別と幻想」(朝日新聞)の中で、「ハーフ」が日本でしか通じない和製英語であることや、「日本人として半人前と言われているようで嫌だ」といった声があることは紹介されている。また、ハフィントンポストでは同年4月に「日本の「ハーフ」差別に外国メディアが批判 ミス・ユニバースの宮本エリアナさん問題」というタイトルで、「日本以外の大多数の世界の基準で考えれば、宮本エリアナさんは完全な日本人だ」といった海外からの批判的な指摘があったことを報じた。

何が言いたいかというと、2016年当時、すでに「ハーフの子を産みたい方に。」はアウトだったのではないかということだ。呉服店のコピーへの批判に対し、「今になってなぜ言うのか」「現代の基準で過去を批判するな」といった声が一部で出ているが、むしろ宮本さんの件が大きな話題となっていた2015~2016年当時の方が、「ハーフ」の語に敏感になるべき局面だったとすら思える。

「ノイジー・マイノリティー」は永遠に少数派ではないかもしれない

広告の賞を取ってはいるが、リアルタイムでこの広告を見たと記憶している人は少ないだろう。もっと多くの人の目に触れていたら当時でも炎上していたのではないか。当時との違いについては、「嫌だ」と感じる人が、それを口に出せる風潮が高まっている面の方が大きいだろう。

3年前の広告をいきなり糾弾されている制作者と店舗が気の毒だ、と感じる人がいるのはわからなくはない。ただ、広告賞を与えた東京コピーライタークラブについては、猛省すべき点があるのではないか。時代の空気を読むことに長けているはずの人たちが、揃いも揃って何をやっているのか。

表現へのクレームについて、「ノイジー・マイノリティー」という言葉が使われることがあるが、「ハーフの子を産みたい方に。」への批判はすでに「一部の人のクレーム」ではない。マイノリティーがうるさいと耳をふさいでいるうちに問題が大きくなることを、メディア業界の末端にいる者なりに他山の石としたい。

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