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すったもんだの末に・・・。~令和元年改正独禁法成立。

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自分は、改正法が成立した今となっても、上記のような思惑をより強化するような改正は易々と認めるべきではなかったと思っているのであるが、せめて改正法施行後の運用だけでも、「事業者の白旗前提」の安易な方向に流れることがないように、今回「秘匿特権」の導入を押し進めた方々には、(秘匿特権以外の部分での)「防御権強化」のための方策を取り込ませる努力(二の矢、三の矢)を継続していただきたいと思うところである。

なお、以下蛇足だが・・・

・法案が審議に入ってからあっという間に可決されてしまったこともあって*9、現時点では国会の会議録にすら審議の状況がアップされていない。附帯決議の内容も含めて、ここはおって確認しておきたい。

・「秘匿特権」に関して、社内弁護士が原則対象になっていない*10ことがどうか、という話もあるが、事実に関するやり取りではなく「法的意見」に関するやり取りを対象にする、という前提が変わらない限り、社内弁護士を対象に含める必要性は感じられないし、含めてしまうことでかえって無駄にリスクを負う恐れもある(法的な意味でも政治的な意味でも)ので、そこまで広げるべきではないというのが自分の考え。

そもそも、同じように会社に勤めている他の社員との比較の中で、弁護士資格の有り無しだけで特定の社員に「特権」を与える、という制度設計自体が自分はナンセンスだと思っているし、「弁護士」としての必要なスキルを備えている社員であれば、「秘匿特権」の対象にならなくても当該社員は十分にスペシャルな貢献ができるはずなので、インハウス系の団体が”業革”的なノリでこの話題を使うのはどうなのか?というのが、率直な意見である。

*1:当時の経緯については、公取委を足踏みさせた“神風” - 企業法務戦士の雑感参照。

*2:dtk氏のブログでも、その旨言及されていたのでご紹介しておく。最初の一歩? - dtk's blog(71B)

*3:(令和元年6月19日)「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」の成立について:公正取引委員会

*4:当該報告書の「概要」では、次のような整理がなされている。「○ 弁護士とその依頼者との間における一定のコミュニケーションについて,当該依頼者が調査当局に対する開示を拒むこと等ができるという,いわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権(以下「秘匿特権」という。)が認められていないことにより,事業者に現実に不利益が発生しているという具体的事実は確認できなかった

○ 一方,今回の見直しにより,課徴金減免制度が拡充された場合には,課徴金減免申請を行うために弁護士に相談するニーズがより高まると考えられるため,新たな課徴金減免制度をより機能させる観点から,公正取引委員会は,運用において,新たな課徴金減免制度の利用に係る弁護士とその依頼者(事業者)との間のコミュニケーションに限定して,実態解明機能を損なわない範囲において,証拠隠滅等の弊害防止措置を併せて整備することを前提に,秘匿特権に配慮することが適当である。

○ その場合でも,我が国の現行法体系上秘匿特権が認められていないこと等に十分留意する必要がある。」(強調筆者)https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h29/apr/170425_1_files/170425_1besshi2-2.pdf

*5:しかも、今回公表された「別紙2」によれば、対象となる場面も、研究会報告書の時点からは若干広がっている(少なくとも「課徴金減免制度の利用」の場面には限られていない)ように思われる。

*6:改正概要の説明を読むと、「減額」方向での裁量しか働かせる余地がなさそうに見えるが、(2)の「算定方法の見直し」のところで、実質的に従来と比較して当局が大幅な「増額」もできるような仕掛けになっているので、ここは十分に警戒する必要がある。

*7:JASRAC事件のように、被審人と弁護士との打合せ内容をわざわざ証拠で出されてしまったり、某ゼネコンの事件のようにわざわざ弁護士とのやり取りを含む法務担当者のパソコンを押収されたりするのは気持ちが悪い、という感情は容易に理解できるところだし、国際的な比較の観点から「海外諸国では認められるのに、日本で認められていないのはおかしい」というドグマティックな理屈も決して無意味だとは思わないのだが(ただし、規範として存在するかどうかはともかく、例に挙げられる海外諸国でどこまで現実に「秘匿特権」が認められているのか? 

とか、それが認められたことによって結論に差異が生じることがあるのか?といった点まで突っ込まれると、導入推進論者にも弱いところはあると思うが)、これが認められることによって事業者側の防御権が大幅に強化される、ということには決してならない、と自分は思っている。

*8:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jun/keitorikikaku/190619besshi1.pdf

*9:審議経過は公取委のリリース参照(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jun/keitorikikaku/190619pressrelease.pdf

*10:一応「違反事実の発覚等を契機として,雇用主である事業者からの指示により指揮命令監督下になく,独立して法律事務を行うことが明らかな場合には,法律専門家の範囲に含める。」だそうだが、こんな扱いをされたら、ほとんどの社内弁護士はかえって対応に窮すると思われる。

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