記事

「最高裁は法学部の学生よりもレベルが低い」戒告処分の“ブリーフ裁判官”岡口基一氏が最高裁判所を批判

1/2
BLOGOS編集部

SNSにブリーフ姿の画像などを投稿したことから、“ブリーフ裁判官”としても知られている裁判官の岡口基一氏。Twitter上での投稿を問題視され、分限裁判(※)を経て戒告の懲戒処分を受けたことが大きく取り沙汰されているが、この裁判の手続きについては、弁護士や判事からも多くの問題点が指摘されている。

岡口氏も一連の出来事についてまとめた『最高裁に告ぐ』(岩波書店)を著しており、この本の中では自身の分限裁判にとどまらず、近年の最高裁判所に見られる衰退を厳しく指摘している。司法の最高機関で今、一体何が起こっているのか。仙台地裁に異動したばかりの岡口氏に聞いた。【取材:島村優】

※裁判官に懲戒事由に当たる行為があった場合に、その裁判官の所属する裁判所が上級裁判所に申し立てすることで始まる。懲戒事由とは、①職務上の義務に違反すること、②職務を怠ること、③品位を辱める行状があったことのどれかになる。

情報発信をやめさせたがる裁判所当局

ーSNSで積極的に情報発信を行っている岡口さんですが、インターネットとの関わりはいつ頃から始まるんでしょうか。

1999年頃に、ブログもまだ登場していない時代なので「ホームページビルダー」といったソフトを使って、自分のページを立ち上げたのが最初です。周りの同業者にも、世間的にも、そういった情報発信をしている人がそれほど多くなかった時代でした。

最初は司法修習生向けの勉強会の答案をダウンロードできるようなページで、次第に法曹関係の情報も掲載するようになっていったんですけど、現場の人間には喜んでもらえている実感があって。朝出勤したら、官報と私のサイトを見る、という法曹関係者もいたようです。

ーその頃、裁判所当局からは何か反応がありましたか?

当局は何も言わないですけど、あまり喜んでいなかったようです。当時はインターネットが始まってから時間も経っていないし、何か得体の知れないものというイメージだったんですかね。

少しずつ「ホームページは良くないですよ」とか「やらない方がいいんじゃないですか」といった話をされることが増えたように思います。表現の自由があるので、もちろん「止めろ」とは言いませんが、「若いから許されるのかもしれないよ」といった感じで。

ーそういった上司からの忠告を受け入れないことで、自身のキャリアに影響すると心配になりませんでしたか?

当時、ホームページを運営している人が私以外にもいましたが、発信者がわかると閉鎖させられるというケースが続きました。やめてしまった人は、将来的に良くないんじゃないかと考えたのかもしれないですね。

ただ、私の運営していたサイトは緻密に作り込まれていたので、閉鎖するのはもったいないかなって。その時は結構楽観的で、悪いことをしているわけではないので、自分の経歴に影響が出るといったことは考えませんでした。

ーその後、2008年に殺人予告が書き込まれるという事件が発生し、ホームページは閉鎖されます。この時期にTwitterを始めていますが、どのようなことを発信していましたか?

Twitterは140字しか書けないので、お遊び的なイメージです。当時はブログが全盛期で、しっかりと書きたい人はブログをやっていて、Twitterではどうでもいいことをつぶやいたり、知り合いと連絡を取り合ったりといった具合です。私のツイートの内容としては、こんな法律書が出た、今度の法律はこういう点が問題になる、といったことがメインでした。おふざけでブリーフ姿をアップしたことはありました。

Pixabay

裁判所から厳重注意「おちゃらけてる」

ーTwitterの利用について注意されることもあったようで、後に1本の記事をTwitterでシェアしたことで分限裁判にまで至ることになります。

基本的に、裁判官はTwitterなんてやらない方が良い、って偉い人たちは考えているでしょうね。最初は私が水戸地裁にいた頃の話なんですけど、2014年に20年目の官記(※)を受け取って、「これからもエロエロツイートとか頑張るね」とつぶやいたことがありました。ただ、私は自分の職業がわかることは明かさない、というポリシーを持っていたので、ツイート自体はすぐに削除したんです。

すると、少し経ってから裁判所長に呼ばれて「これはなんですか?」と注意を受けたんです。過去のツイートを転載する「ツイログ」というサービスをプリントアウトした紙を見せながら。私としては「これはすぐに消したものなんです」と説明しました。

※10年ごとに再任される裁判官の任命書

—その後にTwitterの利用について何か言われたことはありましたか?

それから2年後に、東京高裁の戸倉長官(現・最高裁判事)に呼ばれて、ツイログで発掘されたツイートのほか、2件の投稿(※)を対象として厳重注意を言い渡されました。長官室に呼ばれて、いきなり口頭で厳重注意です。ツイートを一つずつ全部読み上げられて、私はそれを立って聞いていました(笑)。あとは「おちゃらけてるのが問題だ」とも言われましたね。

※「一つは、日本テレビの『24時間テレビ』の生放送で男性出演者の股間が隆起しているのを他の出演者が笑いながら指摘していたことをつぶやいたものであり、もう一つは、私が行きつけの飲み屋で、面白半分で上半身裸になり胸の回りを二周縛ってもらった画像を載せたもの」岡口基一『最高裁に告ぐ』岩波書店 p.12

ーブリーフ姿は何も言われなかったんですか?

不思議なことに、ブリーフ姿は何も言われないんですよね。本当は、そっちを止めさせたかったのかな、とは思いますけど。もしかすると、裁判所に批判の電話が来て、その対応に苦慮してたのかもしれないですね。

ー裁判所当局はどうして情報発信をさせたくないと考えるのでしょうか。

一つにはやはりリスク管理なんでしょうね。一応、裁判所でもSNS利用の指針を作っているんですけど、すごく一般的な話しか書いてなくて。だから、そもそもやらない方がいいんじゃないか、っていうリスク管理ですよね。

もう一つは、裁判官は雲の上にいないといけない、というイメージの管理です。昔から裁判官は世間と関わるな、と言われていますが、世間と関わるとその人たちに有利な判決を下してしまう可能性があるという建前論なんですけど。裁判官の転勤制度が始まったのも同じ理由です。

BLOGOS編集部

Twitterをやめろという「表現の自由」の侵害

ーそして2018年5月に、犬の所有権をめぐる裁判についてTwitterでシェア(※)したことで事態は急展開を見せます。犬の元の飼い主から東京高裁に抗議があり、その数日後に岡口さんは長官室に呼ばれ、厳しく非難されることになります。この時は、どのような感想を持ちましたか?

あの時は、ツイートを本文だけプリントしたものを見せられて厳しく非難されましたが、すぐにはどのツイートの話をされているのかわからなかったですね。1日に20回以上つぶやく時もありますし、これってなんの話だったかな、とずっと考えていました。

※「このツイートで紹介されているのは、(中略)ペット情報関連のウェブサイト「sippo」の記事で、(中略)その裁判とは、公園に放置されていた犬を拾って育てていた者に対し、放置から約三ヶ月後に元の飼主が名乗り出て犬の返還を求めたが、返還を拒否されたため訴訟を提起したというものである」岡口基一『最高裁に告ぐ』岩波書店

ーこの時、林東京高裁長官からは「実際の事件の判決の内容を確認することなくツイートしたこと」について、批判されたとそうですね。

正直、この人は何を言っているんだろうと思いました。当事者の名前も事件番号もわからない過去の判決なので、私が読むことはできませんから。長官は判決を読んでいたので「ちゃんと読めばこういうツイートはできないんじゃないか」ということが言いたかったのかもしれませんが、私は読めないのでそんなことを言われても、とは思いました。

ー林長官からは「Twitterをいますぐやめなさい」と言われたとのことですが、その時は何を考えましたか?

驚きましたね。それまでの当局者は絶対に言わなかったことですが、こんな表現の自由を侵害するようなことは絶対に言ってはいけないんですね。初めての体験でしたが、心の中では「これは長官アウトだな」と思っていました。でも林長官はそういう高圧的なところがあるんです。でも、後から考えたら「あらゆる元凶はTwitterだから、止めさせよう」と最初から決めていたんじゃないですかね。

ー直属の上司からそう言われても、Twitterをやめなかった理由は何だったのでしょうか。

これはどう考えても、長官がアウトなんです。このゲームのルールでは向こう側が失点を重ねているわけで、展開を見ようと思ってそこで自分が引く必要はなかったですね。だから、その後に分限裁判まであるとは思わなかったですね。むしろ長官が「表現の自由」の侵害で完全にアウトなので、私がそこで譲歩する必要はないと思っていて。

あわせて読みたい

「岡口基一」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    満員電車ゼロ 小池知事は今やれ

    藤田孝典

  2. 2

    反権力は正義か マスコミに疑問

    BLOGOS編集部

  3. 3

    安倍嫌いでも協力を 医師が訴え

    中村ゆきつぐ

  4. 4

    橋下氏 感染数より死亡数を見よ

    PRESIDENT Online

  5. 5

    東京の緊急事態対応は「まとも」

    木曽崇

  6. 6

    キスも…慶応研修医の集団感染

    文春オンライン

  7. 7

    藤浪感染で残念な私生活が露呈

    NEWSポストセブン

  8. 8

    政治を動かした医学専門家の責任

    篠田 英朗

  9. 9

    よしのり氏 政府の持久戦を支持

    小林よしのり

  10. 10

    感染爆発の米NY 市長が問題発言

    Rolling Stone Japan

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。