記事

まずは脱「忘」原発を

止まった。

北海道電力、泊原発3号機が定期検査入り - 家電Watch
5日、北海道電力の泊原子力発電所3号機(91万2千kW)が定期検査に入り、午後11時頃に運転を停止した。これにより、日本国内の商業原子力発電所は、1970年以来42年ぶりにすべて停止した

いつも通りに

いつも通りに止めなかったのは、浜岡だけ。残りは予定通り。全部止まっているのは、「予定通り再稼働しなかった」だけ。保坂区長が冷静に指摘する通り。

5月5日、「全原発運転停止」から「脱原発依存」に方向転換を - 保坂展人のどこどこ日記
 今日、5月5日、子どもの日に日本列島に存在する50基全ての原発の運転が止まる。42年ぶりの全原発停止は、世論が求め、政府の方針によって実現したプロセスではない。それどころか、再稼働にこだわり続け、あの手この手で「全原発停止」を回避しようとしたが、結果として不可能となった末の事態である。この先は、「夏の電力危機」のキャンペーンが展開され、「原発なしには夏は乗り切れない」と一部のメディアも声高に叫ぶだろう。

「人類はまだ原子力というものを手にしてない」からでは全くない。

人類はまだ原子力を手に入れてない! - アンカテ
原子力に関する一番重要な事実は「人類はまだ原子力というものを手にしてない」ということだ

この論調で行けば、人類は火も手にしていないことを、燃える実家をただ眺めるしかなかった私は身を以て知っている。「人類」というと大げさかも知れないが、消防団に出来たのは延焼防止ぐらいで、石油ストーブの灯油漏れから起こった火災が収まったのはほぼ24時間後、燃えるものが燃え切ってからだ。

もちろん、石油だって手にしていない。

2010年メキシコ湾原油流出事故 - Wikipedia
2010年メキシコ湾原油流出事故は、2010年4月20日にメキシコ湾沖合80km、水深1,522mの地点で掘削作業中だった、BP社の石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」で、技術的不手際から掘削中の海底油田から逆流してきた天然ガスが引火爆発し、海底へ伸びる5500mの掘削パイプが折れて大量の原油がメキシコ湾へ流出した事故。

画像を見る

被害の規模は、福島第一原発事故に勝るとも劣らない。死者の数に限ればずっと大きいし、禁漁になった海域に至っては本州の広さに匹敵する。

で、原油流出事故というのは、「1000年に一度」どころではなく、毎年のように起きているし、油井では毎年何十人も亡くなっている。

常々表明しているように、私自身は脱原発には賛成だ。しかしそれは

  1. 原発を止めれば安全になるからではないし、
  2. 脱核反応利用を意味するからでもない。

9.11で飛行機を避けたら自動車事故死者が1000人単位で増えたのは「リスクにあなたは騙される」にもあるとおり。脱原発は、性急であればあるほど死傷者を増やすだろう。しかしそれは統計にしか現れない。具体的に誰と誰が原発を止めたせいで死傷したのかはどこの誰にもわからない。

負の学習効果?それもないとはいわないが、本筋ではない。

Life is beautiful: 原発にこれ以上投資することに本当に意味があるのか考えてみよう
原子力のような「負の学習効果」を持つ技術よりも、さまざまな自然エネルギーを利用した発電方法の研究、省エネ・蓄電技術の研究、スマートグリッドの構築、家庭用電気自動車のバッテリーを活用したピーク需要対策、などに投資をした方が日本の将来のためには良いのでないのだろうか?

運行に必要な安全装置の高度化高額化は原発の専売特許ではなくて、旅客機もそうだ。A380787も予算と納期を大幅に超過している。

それでも「旅客機はやめて新幹線にしよう」だとか「いや飛行船にしよう」とかならないのは、結局のところ、旅客機をそれらで置き換えることはかなわないから。

それに対して原子力発電は、旅客機のような「かけがえのなさ」がない。今では疑問符がついた「安い」しか売り物がない。にも関わらず「かけがえがない」がごとく説いたのが、政府の最大の過誤ではないか。そのおかげで同じ原子力でもより安く安全な選択肢も巻き添えを食らった形になってしまった。「404 Blog Not Found:news - 大飯大丈夫?」で紹介したHTTRも、その安全性ゆえ核燃料サイクルには載せ難い(被覆燃料粒子から使用済み燃料を取り出しにくい)。研究が(中の人には申し訳ないが)片手間になった一番の理由はそこだと推察している。

しかし、これはあくまで原子力発電に限った話。核反応利用そのものに関しては、「かけがえのない」分野はいくらでもある。原子力発電より放射線利用の方がマーケットも大きいのは、医療という「かけがえのない」分野がそこに含まれているから。

404 Blog Not Found:書評 - 放射線利用の基礎知識
それにしても、驚いたのは放射線利用の市場規模の大きさ。冒頭を読んだ人ならおわかりのとおり、その額なんと8兆6000億円。原子力エネルギー利用の7兆4000億円より大きいのだ。もちろん広告や出版よりも大きい。これが合州国になると、エネルギーが900億ドル、放射線が3300億ドルで放射線利用が3倍近い。我々はすでに放射線のヘビーユーザーなのである

今後はこれに、「脱原発」という分野が加わることになるのだろう。しつこいようだが原発は止めただけでは安全にならない。安全に片付けるのにも、費用と技術と時間がかかるのだ。

一番まずいのは、脱原発でも続原発でもない、「忘原発」だと思うのだが、全炉停止にいたる過程は、そちらの方に進んでいるようにしか見えない。これでは不安も費用も増えるばかりなのだが…

あわせて読みたい

「原発」の記事一覧へ

トピックス

議論福島第一原発処理水の海洋放出は許容できるリスクか?

ランキング

  1. 1

    毎日の誤報「公正」は口だけか

    青山まさゆき

  2. 2

    NHK「しれっと」報道訂正に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  3. 3

    タクシーのマスク強制が嫌なワケ

    永江一石

  4. 4

    トランプ氏の側近3人 暗躍失敗か

    WEDGE Infinity

  5. 5

    JALの旅行前検査 医師が「ムダ」

    中村ゆきつぐ

  6. 6

    田代まさし闘病で収監延期の現在

    SmartFLASH

  7. 7

    タワマン強盗の恐怖を被害者激白

    NEWSポストセブン

  8. 8

    橋下徹氏 毎日新聞は訂正すべき

    橋下徹

  9. 9

    鬼滅旋風で頭抱える映画配給会社

    文春オンライン

  10. 10

    橋下氏「否決なら住民投票無効」

    橋下徹

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。