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「定期的にバイアグラ」性のアンチエイジングが寿命を延ばす理由――漢方医学では「男64歳、女49歳限界説」も #2 ヒトは何歳までセックスできるのか? - 「週刊文春」編集部

ヒトは何歳までセックスできるのか?――漢方医学では「男64歳、女49歳限界説」も から続く

【グラフ】わが国の寿命曲線の性差

 厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。(第1回より続く)

※「週刊文春」2012年7月12日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

「性の老化」を食い止める椎茸、キクラゲ、ウナギ

「私の周りでは60代、70代で子供をつくった男性がいます。その人たちは生まれつき腎気が他の人より多かったり、老いても経脈(気や血など代謝物質の通り道)が滑らかで腎気が充実している。また、養生に精通した人は、高齢でも子供をつくることができます」

 山本文郎さんは再婚で生活習慣を変えて、食生活を強く意識するようになった。このように、弱くなった腎を後天的に復活させて、老化を遅らせることができるという。

 例えば、腎気を補う働きのある食べ物がある。山芋、キャベツ、椎茸、キクラゲ、ニラ、栗、くるみ、ゴマ、黒豆、あわび、イカ、海老、ウナギ、海藻、自然塩、肉類などがそうだ。

「もちろん、旬の活きのいいものをバランスよく食べることが第一です。少量の酒は、血流をよくして痴呆を防ぐ。また、血流を良い状態に保つ意味で、小まめに体を動かし筋肉を養うことも必要です」(櫻井氏)


©iStock.com

 さらに、紀元前から中国では「不老不死」や「若返り」が研究されてきた結果、漢方薬に「補腎剤」というものがある。腎虚の症状に応じて、八味地黄丸、牛車腎気丸、六味丸などが処方される。

超音波で「射精」を観察してみると…

 限界年齢を解明するうえで、西洋医学の観点からも見てみたい。岡山県の川崎医科大学泌尿器科の永井敦教授は、変わった実験をしたことがある。

 03年、永井教授は超音波装置を使って前立腺治療のための画像を見ながら、ふと思いついたことがある。

“超音波装置を使えば、射精のメカニズムを見られるかもしれない”

 さっそく永井教授ら研究チームは実験を行った。29歳の健康な男性の肛門に、妊婦の膣に入れて胎内を見る超音波装置を入れ、その格好でマスターベーションをしてもらった。超音波は肛門に接する臓器すべてを映し出す。そして、勃起のプロセスを世界で初めて映像として捉えたのだ。

 今回、取材班はその映像をパソコン上で見せてもらった。まず、前立腺の血流がよく流れ始めた。前立腺の血流が悪いと前立腺肥大症になる。この血液は、陰茎の毛細血管にも送り込まれて、血管に血をみなぎらせる。つまり、勃起するのだ。

 すると、間を置かずに、精嚢から精子がみるみると集まりだしたかと思うと、レーザービームのようにものすごい勢いで尿道に向かって直線的に突き抜けていった。

「勃起」をしないのは、心臓や脳血管疾患への危険信号

「ほお」と唸ってパソコン上の映像から顔をあげてはみたものの、何がすごいのか判断がつかない。しかし、血流と精子の流れがわかったことが重要だと、永井教授は真顔で説明する。

「射精を繰り返す人は、定期的に血流を送り込むことによって、動脈硬化を防げるのではないか、という仮説が成り立ちます。実際、射精障害の人は血流が悪いのです」

 陰茎の動脈は体内で最も細く、動脈硬化の影響は陰茎動脈から始まる。血管を強く保てずに衰えてしまい、陰茎に血が流れない。すなわち「勃起」をしないのは、心臓や脳血管疾患への危険信号なのである。

 また、膀胱の筋肉に血液が行き渡らなくなると、尿がためられずに頻尿となる。これは動脈硬化や高血圧疾患の影響と見られ、夜間の就寝中に3回以上トイレに行く人は早死にするという研究結果がスウェーデンで発表されている。

「定期的にバイアグラ」アンチエイジングのための射精

「私はアンチエイジングのため、定期的にバイアグラやシアリスをサプリメント感覚で飲んでいます」

 55歳の永井教授は、そう言う。彼が医師会の講演で訴えるのは、「射精のすすめ」である。勃起障害治療薬を使うことで、血管の若さを保つ血管内皮前駆細胞が増える。動脈を若返らせることによって、脳の記憶力、排尿、性機能に良い効果をもたらすという。

 つまり、日常的に勃起させることが、限界年齢を延ばし、ひいては体の健康に結びつくという。これは体の「廃用性萎縮」に似ている。使わないと機能しなくなるという考え方だ。永井教授の机の引きだしには、バイアグラやシアリスといった錠剤がパラパラとしまいこんであった。

50歳から男は途端に老化する

 しかし、日本人の男は、限界年齢を延ばすどころか、下げていると疑われるデータがある。札幌医科大学の熊本悦明名誉教授から提供された「わが国の寿命曲線の性差」というグラフだ。

 日本人の平均寿命は、女性が男性より7歳長いことが知られている。男女差が7歳も離れている国は、世界でも珍しい。ところがグラフを見てわかるように、50歳までの男女差はあまりない。ところが50歳から80歳の間にだけ、男女の生存率に差が開く。そして80歳をすぎると、生存率の差が開くことがない。

 つまり、50歳を過ぎた途端、老化現象が始まる男性がいることになる。東洋医学でいう腎虚である。

「性の老化」を止めることが寿命を延ばす

 では、50歳から80歳の間に、女よりも早く男に現れる老化とは何だろうか。熊本氏はこう話す。

「この期間に多いのは、まずガンによる死亡ですが、ガン以外で大きな特徴があります。女性よりも早い時期に男性が心筋梗塞と脳梗塞という血管の障害で死亡する例が多いことです」

 前述した危険信号としての初期症状「勃起しなくなること」を放置した結果と言えるのではないか。もちろん他の原因もあるだろうが、永井教授のようにアンチエイジングとして動脈を若返らせておけば、予防はできたかもしれない。限界年齢は、努力によって引き延ばすことも大事だと言えるだろう。

「なぜEDになったか」を分析することが重要

 永井教授はこう言う。

「下半身の病気は、全身の病気に繋がっているのです」

 実は、東洋医学にも、「下半身は全体を代表する」という考え方がある。前出の櫻井氏はこう言う。

「EDは腎の問題ですが、補腎だけで解決するわけではありません。頭痛がしたり、咳が出たり、不安があれば、性機能は低下します。これは、肝・心・脾・肺・腎という機能が相互に繋がっているからです。EDといっても、胃潰瘍や鬱病が原因かもしれません。なぜEDになったかを分析することが大事なのです」

 一方、高齢で子供をつくった人には、特徴があるという。それは、全身が元気な点だ。体全般のケアをしておくことが、限界年齢を延ばす方法なのだ。

 紀元前、中国の黄帝は、1200人の側室がいて男10人分の精力があるといわれた。医学書『黄帝内経』には、黄帝が学者・岐伯にこう問う場面がある。

「今どきの人は50を超えると皆衰えてしまうのは、なぜだろう?」

 岐伯はこう答えた。

「昔の人は養生をよく心得、四時陰陽に応じて暮らしていたのです」

 二千数百年経った現代にも、岐伯のように活力なき世を憂え、元気な中高年を増やそうと立ち上がる医師や研究者はいる。次からは、彼らが見いだした対策を見ていこう。

次回は「日本男児肉食化の鍵」に迫る

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2012年7月12日号)

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