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金持ち嫌いのフランスの大統領

 欧州の、とりわけフランスの大統領選の結果を各紙が社説で論じているのですが、これはと思う主張はないのです。かといって間違っている訳でもないのですが‥つまり、生産的な独自の意見が少ない、と。

 取り敢えず各社がどんなことをいっているのか見てみましょう。

<日経>
「仏新大統領に現実的な対応を期待する」

・新政権の試金石は対独関係。どの党が政権を取ろうと、フランスの最優先はドイツとの協調。
・独仏関係の揺らぎはEUの不安定化に直結。
・EU新条約などをめぐる独仏の溝が表面化すれば、債務危機への不安に油を注ぐ。

<朝日>
「欧州の転機―指導者が担う重い責務」

・財政健全化のために緊縮策を進めれば、有権者から批判され、民意に寄り添った政策に乗り出そうとすると、市場から制裁を受ける。
・オランド氏の社会的公正や平等を重視する姿勢には共感するが、その主張には危うさもある。
・財政健全化を遠ざけ、独仏連携を揺るがすような要求なら、たちまち金融市場の逆襲を受ける。
・財政規律への道筋と決意を金融市場に示すことと、雇用創出策を進めつつ必要な痛みを分かち合うよう人々を粘り強く説得することが新大統領として必要。  

<読売>
「仏大統領選、オランド氏は欧州危機回避を」

・サルコジ大統領の敗北を受けて、市場には危機が再燃するとの警戒感が出ている。
・オランド氏が、財政規律強化のための欧州連合新条約の修正にこだわれば、ユーロ圏の連携が
揺らぎかねない。
・オランド氏が経済成長に力点を置いたこと自体は妥当だが、有力な手だてがあるわけではない。
財政を健全化できるかどうかも疑問。
・大衆迎合的な政策は、市場の信認を一層低下させる可能性がある。

<毎日>
「緊縮一辺倒の修正迫る」

・選挙結果は、独仏が主導してきた緊縮路線に修正を迫りそう。
・景気低迷時にもかかわらず財政緊縮に過度に軸足を置いたこれまでの独仏の戦術を転換するにはよい機会。
・これ以上緊縮財政頼みの対応を続けるのは、反ユーロ感情の高まりにつながり危険。
・財政出動路線に転換せよ、というのではない。それでは市場で信用不安が再燃する。
・必要なのは財政再建と同時に欧州統合の深化を進めること。財政の統合に向け、ユーロ共同債の導入など信用を相互補完する仕組みを早く作る必要。


 この4社の主張に共通する点は、オランド新大統領に対し、現実的に対応して欲しいとお願いをしている点でしょうか。そうしないと、市場のしっぺ返しを受ける恐れがある、と。

 ということで、日経は、ドイツとの協調路線を継続しろと言い、朝日も、独仏連携を揺るがしてはダメだと言う。一方、読売と毎日は、経済成長に力点を置くこと自体は適切と考えているようなのですが、現実問題として、経済成長に力点を置きつつ緊縮策も続けるというのは大変難しいことであるのです。つまり、経済成長と緊縮策は基本的に相反するものであるので、言うことは容易いが、実現は困難だと。

 結局、フランスとしては、このまま緊縮策を続けるのか、或いは一時緊縮策をお休みするのか、の二つから選ぶしかないのです。

 ただ、何故オランド氏が選ばれたかと言えば、経済成長にも力を注ぐと言ったからであり、そうなると緊縮路線を一時休止するのが当然と言えば当然。もし、その公約を破ることになれば、国民は裏切られたと思うでしょう。だから、オランド氏としては、公約の実現にも力を注ぐ必要がある訳ですが、そうなれば緊縮策は一時休止となり、そして、そうなれば今度は市場からしっぺ返しを受け、再びフランス国債の利回りが上昇を始めることになるでしょう。

 で、そうやってフランスで長期金利が上がることになれば、却って景気回復の冷や水をかける結果になってしまうので、オランド氏としても市場の意向を無視する訳にはいかない、と。

 結局、緊縮策一辺倒ではいけないとは分かりつつも、だからと言って緊縮策を止めることも市場との関係で許されない、と。

 このことに関して、市場関係者の多くは、幾らオランド氏が公約を実現したくても、市場の意向を無視することはできないだろう、と予想しているのですが‥そして、私も、その方が賢明な対応だと思うのですが‥彼はこんなことも言われているのです。
 This is a guy who is anti-rich.
 「この男は、金持ち嫌いだ」

  He doesn't own his own apartment.
 「彼は自分のマンションを持たない」

 He probably made no more than $100,000 a year in 2010 in income.
 「2010年の年間収入は多分10万ドル以上はなかった」

  He has actually said, I don't like the rich.
 「実際彼は、自分は金持ちが嫌いだと言っている」

 And he has also said that, you know, every country has a soul, and the soul of France is equality.
 「そして、全ての国には精神があり、フランスの精神は平等である、とも」

  He is really dedicated equalizing the wealth base in France.
 「彼は本当にフランスの富を平等化することに身を捧げている」

(以上、PBSのNEWSHOURより)

 まあ、だからこそ彼は、年収が100万ユーロ以上の者の所得には75%の税をかけるなんて言っているのでしょうか?

 サルコジ氏と違って聡明であることが特徴であり、また、サルコジ氏と違って地味であるのが特徴とも言われるオランド氏。しかし、その聡明さがあだとなって現実を軽視するようなことを続けると、皆が恐れているようにユーロ危機が再燃する恐れもある訳です。でも、聡明であるが故にそのことも当然分かっているはずのオランド氏。

 もし、市場がオランド氏の政策に対しノーという答えを突き付けたとき、彼はどうして切り抜けて行こうと思っているのでしょう?

 本日も言いますが、ギリシャなどが一時ユーロから脱退する対応策が一番現実的で摩擦も少ない方法だと思うのですが、聡明なオランド氏の頭のなかにその選択肢はないのでしょうか?

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