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レスター退団のFW岡崎に、最終節、大歓声が贈られた理由【岡崎慎司/挑戦の心得②】


ワールドカップロシア大会後、代表引退を表明する選手が相次いだなか、岡崎慎司は2022年のW杯を目指すと宣言。コパアメリカで、約1年ぶりに日本代表に選出されたストライカーの魂を伝える短期連載「岡崎慎司 挑戦の心得②」。

「周りの要求に対応するだけで、自分らしさが消えてしまっているような感じがする」

以前、岡崎慎司は、ある日本人選手についてそんなふうに話したことがあった。高いポテンシャルを持ちながらも、クラブでそれを発揮できない選手は意外と多い。特にレベルが高い欧州舞台では、陥りやすい穴がそこにある。

レアルマドリードへの加入が決まった久保建英へのメッセージを求められた岡崎は「大事なのは自分の道を貫き通すこと。でもそれは意固地になるわけではなく、いろんなことを柔軟にこなしながら、やらなくちゃいけないこともあるけれど、最終的には自分が勝負したいところ、したいプレーで勝負することがもっとも大切」と話した。

結果至上主義。ゴールを決めるストライカーだけが王様になれる。どんなに汗をかき、献身的なプレーをしても「得点」という数字には敵わない。得点力のないFWに居場所はない。

「ノンストップオカザキ」と、プレミアリーグ優勝への貢献を高く評価されながらも、「献身性を褒められるのは、危険信号」と岡崎は考えていた。「献身性や運動量だけでは、ポジションを確保することはできない」という危機感があったからだ。実際、タイトル獲得後にクラブは二人のストライカーを補強する。岡崎慎司では物足りないという考えの表れだった。そういう現実と対峙しながら、岡崎は考えた。

「今までやってきたことを継続しながら、ゴールを決めよう」

ゴールだけに執着する選手は、数多く存在する。実際、守備をさぼったとしても、得点を決めれば、評価は高くなる。自陣に下がり守備をして、体力を消耗するよりも、高い位置でチャンスを待った方が、得点には近づくかもしれない。しかし、岡崎はプレミアリーグで手に入れた自分のスタイルを貫いた。なぜなら、「守備」は岡崎にとっての「自分らしさ」のひとつでもあった。そして、豊富な運動量、走り続けるというのも彼がプレミアリーグで生き残るうえで欠かせないパーツだからだ。

「プレミアリーグでの印象は『遠い』というもの。味方もゴールも遠い。その距離を埋めるのが足の速さであり、ジャンプ力であり、いわゆる身体能力の高さ。でも、そんな身体能力がない僕は、その遠さを埋めるために、『走り切る』スタイルを継続し続けた」

岡崎が感じた『遠さ』が生まれる理由のひとつは、プレミアリーグでは組織的に戦う思考が浸透していないことが挙げられる。豊富な資金力でフィジカルをはじめサッカー選手としての能力にたけた選手を集められるプレミアリーグでは、緻密な戦術サッカーは存在していなかった(ここ数年、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラやリヴァプールのユルゲン・クロップなどの戦術的な監督が登場し、プレミアリーグのサッカーにも変化が生じ始めている)。

しかし、二兎を追うとする岡崎を理解してくれる指揮官は少なかった。先発で試合を落ち着かせる選手として、重宝しつつも、後半途中に交代させられた。得点が必要な状況で岡崎にはチャンスは与えられなかった。「ストライカーとして信頼されてはいない」という感覚を抱くのも当然だろう。けれど、自身の存在がチームに効果をもたらし、得点や勝利を生んでいるという強い確信があったからこそ、岡崎はブレることなく、自分のやり方を死守し続けた。

そして、2017-18シーズン。開幕2戦連続弾と好スタートを切り、シーズン前半だけで6得点を決めている。しかし、2018年は負傷のため、ほとんどプレーできずに終わった。ワールドカップロシア大会のメンバーには入ったものの、出場した第2戦で再び負傷し、ワールドカップ三大会連続ゴールはならなかった。

「運動量もあって、守備もする。そしてゴールを決める。自分が目指していたプレーが形になったのが、2017-18シーズンだった。それはプレミアリーグで新しいストライカー像を示すチャンスだったと思います」

2019年5月。岡崎は契約満了でレスターシティを退団した。最終節。途中からピッチに登場した岡崎へは、スタジアムを埋めたサポーターから、大歓声が贈られた。毎シーズン降格争いをするようなチームにプレミアリーグタイトルをもたらしたレジェンドの一人として、シンジ・オカザキの名はレスターの歴史に名を刻むだろう。

指揮官たちとは違い、サポーターは岡崎のチャンレジを理解していたように感じた。

豊富な運動量、献身的な守備、走り切る姿勢。そして、ゴールも奪う。

岡崎が自分らしさを貫けたのは、チーム状況で生かせるよう「自身の武器」を変化させる柔軟性を持っていたからだ。

そんな岡崎が、森保ジャパンで見つけた「やるべきこと」とはなにか?

コパアメリカ初戦、ディフェンディングチャンピオンに0ー4で敗れた日本。中2日で迎える第2戦で、岡崎はどんな仕事ができるのだろうか? 

Shinji Okazaki
1986年兵庫県生まれ。2018年、ロシアワールドカップのメンバーに選出され、W杯3大会連続出場を果たす。2019年、キリンチャレンジカップのメンバーに選出され、森保体制での代表初招集。コパ・アメリカ2019のメンバーにも選出された。国際Aマッチ 116試合 50得点 (2019年6月9日現在)。


Text=寺野典子

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