- 2019年06月21日 11:19
スーパー業界で不動の地位を築くオオゼキ 人気の秘訣は「お節介すぎる」接客だった - 土屋礼央のじっくり聞くと
2/2オオゼキの看板はすべて違う 店長が醸し出す雰囲気が店舗に影響

土屋:僕はいろんなオオゼキに立ち寄るんですが、店舗によって空気感や雰囲気が違うように感じています。
仲舘:各店舗の店長が醸し出す雰囲気が影響しているかもしれません。
土屋:店長の雰囲気ですか?
仲舘:はい。例えば、下北沢店の店長が「よそのスーパーにこんなものがあったけど、うちでも買えないの?」と、市場にいるチーフに電話して調達する。そうするとお店の品揃えが他の店舗とは変わって、雰囲気が変わります。看板ひとつとっても、それぞれの店舗で色が違うんです。
土屋:え? 看板の色ってそれぞれのお店で違うんですか!?

仲舘:色もデザインもみんな違うんです。土屋さんのイメージするオオゼキのカラーってありますか?
土屋:うーん…。黒い字で「オオゼキ」と書かれているのが印象的だと思っていましたが…。
仲舘:実は赤もありますし、青もあるんです。
土屋:それは知らなかった! 気づかなかった…。
仲舘:これは社長のこだわりです。「いろんな色が集まってるのがオオゼキだ」ということを表しています。
若手から幹部まで社長を名前で呼ぶファミリー感
土屋:以前、オオゼキの社長さんにお会いしました。元気な女性の方で、「あら!土屋君っていうの、よろしくね!」とパワフルで。社長がイキイキしていて、店全体にはすごくファミリー感がある。その時、「オオゼキはすごいなぁ」と思ったんです。

仲舘:実は「社長」と呼ぶと怒られるんです。
土屋:え!? では、皆さんはなんと呼んでいるんですか?
仲舘:石原坂寿美江という名前なので、もう100%、社員は「寿美江(すみえ)さん」と呼ぶんですよ。礼央さんがオオゼキからアットホームな印象を受けられたのは、そういう部分があるからかもしれません。
土屋:「社長!」と呼ぶより、「寿美江さ~ん!」の方が、意見も言いやすい感じがします(笑)。
仲舘:堅苦しさが取れますよね。若手社員でさえ「社長」と呼ぶことはありません。入社式の時に「私のことを寿美江さんと呼びなさい」と言っていましたから。
土屋:社長と社員のフランクな関係性があって、各店舗ごとの特色があって、現場には発注も任せる。オオゼキさんが激戦のスーパーマーケット業界のなかで選ばれる理由がわかるような気がします。とはいえ、赤字が出たりする場合もありますよね?
仲舘:正直に申しますと、赤字店舗はそんなにありません。全体的に見た時に、「雨の日が続いたから、売り上げが落ちてしまったな」ということはあるかもしれません。ただ、例え発注に失敗しても、工夫して全て売り切ってしまうことを心がけています。これはお客様にとってもすごくいいことだと思っています。
店舗の裁量で値下げ 顧客の様子をみながらスピーディに対応
土屋:工夫というのは半額シールなどを貼るということですか?
仲舘:いいことを聞いてくれました。オオゼキでは「緊急売変制度」というものがあります。本来、いくらで売るかというのは本部でコントロールするのがスーパーマーケット業界では常識ですが、オオゼキでは店舗の裁量で値段を変動できるんです。
土屋:勝手に決めちゃっていいんですか!?
仲舘:はい。100円のものが売れ残っていると「50円で」とチーフ判断で売値を変更できます。昔は20円まで値下げするようなこともありました。でも、それで本部に怒られることはありません。
土屋:「売り切ることを最優先に」が大事なわけですね。

仲舘:そういうことなんです。その日の売り上げはダメでも、明日またお客様に来ていただいて少しだけ儲けさせてもらえばいい。だからダメな時はもう一気に値下げしてしまえと。決断のスピードが早いことはオオゼキの魅力のひとつだと思います。
朝決めたことが夕方になったらコロッと変わる。お客様の動向を見ながら、値段や商品の並べ方に変化をつけていく必要があるので、朝と昼と夜、時間によって店頭の様子がどんどん変わっていくんです。
「クジラ5キロ仕入れて」にも全力で対応
土屋:「これが店にないから仕入れてよ」と頼んだら、翌日にはオオゼキに並んでいたという話を聞いたことがあります。
仲舘:はい。お客様からのご要望は100%全力で承ります。
土屋:100%! 応えたくても、「そんなものは売れないよ」というリクエストはありませんでしたか?

仲舘:過去に「クジラを5キロくらい買ってきてくれ」とお客さまに頼まれたことがあります。仲買さんに電話して取り寄せてもらって、日にちはかかりましたが何とか仕入れました。そのお客様には「仕入れることができましたが、見に来ていただけませんか」とご連絡しました。
土屋:そのお客さんが仕入れた後、来るかどうかは分からなくても、何とか要望に応えていこうと。
仲舘:その通りです。お客さまからのご意見が反映されているのは生鮮食品だけではありません。店舗オープン時の棚に並べられている商品はどこも同じです。絶対に必要な商品とトレンドを踏まえた品揃えです。
しかし、調味料の棚などはお客さまからご要望があった商品がどんどん追加されていきます。現在、店舗中央にある調味料のコーナーに並んでいる商品のほとんどはお客さまからリクエストいただいたものです。定番商品が並んでいるように見える棚も、実はお客さまに作っていただいているんです。

土屋:ビッグデータを解析して売れるものだけを仕入れることが販売業の主流だと言われる昨今ですが、オオゼキさんの場合は日々の積み重ねでそれがすでに出来ているわけですね。
仲舘:はい、そういうことです。
徹底的に「売り切ること」がオオゼキ成功の秘訣
土屋:ちょっと込み入ったビジネスの話を聞かせてください。
今のところ利用客側としてはいいことばかりです。一方でオオゼキさんは社員に給料をきちんと出している。正社員は多いし、社会保険料の支払いだってあるのにどうやって経営が成り立っているのでしょうか。企業だから儲けることも大事だと思うのですが。

仲舘:確かに、ほかの企業さんに比べてお金はすごくかかってます。ですが先ほども話に出た通り、私どもの一番の強みは売り切ることで販売のロスを徹底的になくしていくことで、最終的な利益だけはしっかり確保します。
土屋:薄利多売ということですか。
仲舘:そうです。日々、その連続です。
土屋:スーパーマーケットでは、一般的にどのくらいのロスが出るものですか?
仲舘:生鮮食料品や総菜のところで平均5〜8%のロスが出ていると思います。オオゼキでは2〜3%台を目指してます。
土屋:他の企業さんが5〜8%のところで2〜3%を目指すというのはすごく大変そうですが。
仲舘:ロスを減らすのは簡単です。「惣菜をたくさん作らず、商品をたくさん売り場に出さない」を実践すればいい話なんです。でもうちはたくさん出して売り切ります。
土屋:よく食べ、よく運動するみたいなことですね。人間としては健康的な感じがします。
仲舘:夜の時間帯も商品をしっかり揃える代わりに、ロスも出さないという形でやっています。すると、店員は現場に出たらとにかくハードワークをするしかないんです。一品でも多くお買い求めいただくことに対して愚直なまでに考え、動く。それがオオゼキで働く姿勢の基本です。
モットーは「余計なお世話をするスーパーになれ」

土屋:今の時代、どうやって会社を大きくするか、合理化するかがスタンダードな企業経営のイメージですけれども、オオゼキさんがやっていることの基本は『汗をかく』なんですね。世の中の流れと反対のような気もします。
仲舘:非効率です!(笑)。しかし、私どもの姿勢は今後も変わりません。寿美江さんは「お客様には余計なお節介をしろ」と昔から言っています。例えば、魚を求めるお客さまには「三枚おろしにしますか?」と毎回、尋ねなさいと。
声を掛けて、余計なお節介をたくさんすれば、お客さまはいろいろ話してくださいます。その意見を反映すれば居心地のいいスーパーに一歩近づきますし、そのお客さまにはリピーターになっていただける可能性が高まりますよね。
土屋:それはスーパーマーケットだからこそ心がけていることでしょうか。
仲舘:そうですね。スーパーマーケットで余計なお節介を焼かれると、意外と気持ちいいと思います。
土屋:デジタル化が進む中、人間同士の生のコミュニケーションが健在だというところに惹かれます。
最後に、オオゼキさんが近くにあるか否かで家賃の相場が上下するという話を最近、耳にしました。不動産曰く5000円くらい変わると。それだけ、大きな存在になっているわけですが、この先、オオゼキさんはどうなっていくイメージを持っていますか?
仲舘:もちろんお店の数を増やす努力は続けていきます。しかし、今まで通り、地域のお客様の台所であるべきだという想いは決して忘れません。「良い商品を安く提供する」という基本をしっかり続けていくこと。これがオオゼキの目指すところです。各店舗主義というのは会社が大きくなってもきっと変わらないと思いますし、変えてはいけない部分だと思います。
土屋:結局、お客さんに喜んでもらいたい、それが全てにおいての目標なんですね。これはもう、これからも通いつづけるしかありません(笑)。本日はありがとうございました!
プロフィール
土屋礼央
2019年7月29日には浅草木馬亭で「レオらくごvol.2「真夏のレオらくご~ホラー&怪談噺SP~」を開催。チケット好評発売中。 →ちけっとぴあ
・ TTREアルバム「ブラーリ」
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・Twitter - 土屋礼央 @reo_tsuchiya



