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【読書感想】教育激変-2020年、大学入試と学習指導要領大改革のゆくえ

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 能力がある人たちが「階層の壁」を超えるための手段だったはずの「教育」が、「格差を助長し固定化する仕組みとして機能している」のが現状なのです。

 経済的に右肩上がりで、「それでも、努力すれば報われる」時代を生きてきた人たちが、いまの社会を動かしていて、「生きていくので精一杯」の若者たちを「君たちは努力が足りない」と責めている。

 お二人は、2020年度からはじまる「大学入学共通テスト」(新テスト)について、こんな評価をされています。

佐藤:新テストと現行のセンター試験との大きな違いは、国語と数学に記述式の問題を取り入れることと、英語で今の「聞く、読む」に加えて「話す、書く」力も試す、いわゆる四技能を評価することになる――の二点です。すでに述べたように、大学入試センターは、その改変を反映した新テストの「プレテスト」と、全国の高校二年生を対象に、二回行いました。結論を言えば、全体としてはいい問題だというのが、私の評価です。

池上:私も非常によくできていると感じました。少なくとも国語に関しては、画期的と評してもいいくらい。

佐藤:新テストをそんなふうに評価する人間は、ほとんどいませんでしたよね。だから我々は「異端」。(笑)

池上:最初に私が注目したのは、プレテストに先立って2017年5月に大学入試センターが公表した、国語の記述式のモデル問題です。出題されたのは、ある架空の城下町の「街並み保存地区」に指定されている地域に住むお父さんが、景観保護ガイドラインの住民説明会に出かけた。そこから帰って来たお父さんとお姉さんの会話を聞きながら、妹である「かおるさん」が、ガイドラインの導入について考える――というものです。町が作成したパンフレットも資料として添付されていたりして、従来の試験に比べ、深い読解力、表現力が試される問題になっていました。

 実際にこの問題が紹介されているのですが、ちょっと解いてみようとして、これは「ちょっと解いてみる」のは無理だな、とあきらめてしまいました。

 たしかに、読解力や表現力が必要であり、受験テクニックだけでは通用しない問題になっています。

 正直、これを解かなければならない受験生じゃなくてよかった……と、ホッとしたのも事実です。  

佐藤:繰り返しになりますが、プレテストの問題は学習指導要領から逸脱していないし、すごくいいアプローチだと思います。にもかかわらず、「文科省や国立の研究所のやることだから、間違っている」と難癖をつけるような風潮が、今回もみられました。

池上:今度の大学入試改革には、特に高校や中学の教育の現場に対するメッセージが込められていることを、しっかり認識すべきだと思うのです。

 戦後日本は、なんとか先進国に追い付こうという国家戦略の下に教育制度も整備して、見事な成果を上げました。しかし、ポストモダンの世の中になり、それを生き抜くために求められる能力は、以前とは違うのだということに、高等教育の関係者もようやく気がついたわけです。それを現場の先生たちに伝えて、教育の中身を変えていきたいのだけれど、なかなかうまく伝わらない。そこで実行したのが、入試問題自体を変えることでした。それを通じて、現場に「今必要な学力、教育とはなんなのか」を、あらためて考えてもらおうとしている。

 どんなテストで評価をしていくか、というのは、「今の大学や社会で求められている『能力』とはどういうものなのか」を示すメッセージでもあるのです。

 僕も子どもの頃から「ペーパーテストで人間の能力を評価できるのか?」と思っていたけれど、作る側にもなってみると、「このくらいは知っていてほしい、できてほしい」のです。

 変えることによる弊害を恐れるあまり、時代に合わないテストをやり続けることは、「教育の未来」にも悪い影響が出てしまう。

 過渡期に「新テスト」を受ける学生たちにとっては、迷惑千万なのでしょうが、やはりこれは「必要なこと」だと思います。

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