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Netflixが"サービス初日"にやったこと

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1億人超の会員を抱えるNetflix(ネットフリックス)は、オンラインでのDVDレンタルサービスを世界に先駆けて始めた。約30人の創業チームが立ち上げた、記念すべきサービス初日の様子を紹介しよう――。(第2回、全3回)

※本稿は、ジーナ・キーティング著、牧野洋訳『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』(新潮社)の第1章と第2章の一部を再編集したものです。

大量のDVDを仕分けるネットフリックスの従業員=2009年3月10日、米ニュージャージー州(写真=AFP/時事)

■世界初の「オンラインDVDレンタル」

1998年春にはウェブサイトとバックエンドシステムが完成した。つまり、顧客はオンライン上で映画の在庫を検索して注文できるということだ。もっとも、最初はしょぼいウェブサイトだった。ユーザーが個々の作品を検索すると、白くて広い背景に小さな画像と短い説明が出てくるだけだった。

作品情報充実のためにネットフリックスが頼ったのが「オールムービー・ドット・コム」という映画ファン向けウェブサイトだ。ネットフリックスは当初、DVDジャケットのアートとタイトルを自らのウェブサイト上で使おうとした。だが、ハリウッドの映画スタジオに拒否された。そこでケースからジャケットを取り出してスキャンすることで対応した。映画スタジオから警告状が送り付けられてきたら? そのときはそのときだ。

ローンチ日が近づくにつれて、スタッフが増えていった。新しいプログラマーが採用されて折り畳み式長机はどんどん窮屈になり、マーケティング部門のクリスティーナ・キッシュのオフィスは新しい担当者を受け入れてぎゅうぎゅう詰めになった。

■ソフトウエア大手のベテランたちが集結

ドレスコードは緩いどころではなかった。オフィスで寝泊まりし、数時間睡眠で仕事に没頭していたCEO(当時)のマーク・ランドルフは、一晩床に脱ぎ捨てられたままになっていたジーンズとTシャツ姿で朝方オフィスに現れることもあった。もちろんジーンズとTシャツはしわくちゃだ。オフィスでの寝泊まりが常態化していたという点ではキッシュも同じだ。自宅までは山脈越えドライブが必要だったので、オフィスで寝るほうが楽だったのだ。

オフィス環境もひどかった。換気システムがきちんと動いていないなか、大勢の人間が小さなスペースにひしめきながら戦闘準備に入っていた。体臭が充満して息苦しいことこのうえない。オフィスの片隅では、廃棄処分待ちのDVDジュエルケースが山積みになっていた。

ネットフリックスの全チームメンバーが人生を懸けていた。白熱した議論をしているうちに怒鳴り合いになることもしばしばだった。大学を卒業したての若者が立ち上げる典型的なスタートアップとは違った。

メンバーの大半は大きなソフトウエア会社で管理職を経験したベテランであり、大幅な年収カットを受け入れてネットフリックス入りしていた。消費者相手の新ビジネスに飛び込んで、自分たちの知的DNAを受け継ぐ会社をつくるという共通の夢を実現しようとしたのだ。

■開始90分でサーバーがクラッシュ

98年4月14日――プログラムの1行目が書かれてからちょうど半年――ネットフリックスの準備は完了し、ウェブサイトが立ち上がった。共同創業者のリード・ヘイスティングス(現CEO)はウェブサイトのローンチに立ち合ったものの、オフィスの片隅にいるだけだった。大学院の2学期目に入っていた。過去6カ月間はランドルフと頻繁に意見交換していたとはいえ、オフィスを訪れることはまれで、新しいスタッフの大半とは面識さえなかった。

ウェブサイトがローンチとなるや否や、インターネットの運営に明るいコーリー・ブリッジスは以前から契約していたインフルエンサーを自由にさせた。彼らが自身のコンテンツで「ネットフリックス誕生」と発信すると、興味津々の訪問者がぞくぞくとバーチャル店舗に現れた。ウェブサイトは予定通りにきちんと動いていた。ただ、訪問者が増えるにつれてプログラマーのエリック・メイエは不安になっていった。

ローンチから90分後、サーバーが容量いっぱいになって……クラッシュした。メイエはスタッフを呼び、ぼろぼろのトヨタ製ピックアップトラック――経理担当グレッグ・ジュリアンが運転する車――で近所のコンピューター専門店フライズ・エレクトロニクスへ行かせた。サーバー修復に取り組んでいる間、新しいコンピューターを10台調達して容量をアップさせようと考えたのだ。

■注文が大量に入るのに閉店時間がない

一方、DVD倉庫ではプリンターが詰まり、大量に入ってくる注文をさばけなくなった。DVDが掛けられたペグボードは混乱状態になり、中途半端に処理された注文書はベンチの上で山積みになっていた。そんななか、作業員は狭い通路を行ったり来たりで大わらわだった。

サーバー修復に関わっていないスタッフは全員で注文処理に当たった。ウェブサイトが復活するたびに大量の注文が舞い込んでくる。これの繰り返しだった。深夜までに注文件数は100件以上に上り、発送しなければならないディスク数は500枚以上に達した。にもかかわらずメイエはウェブサイトを安定させることができず、なお四苦八苦していた。

ヘイスティングスはスタッフを前にして言った。「ウェブサイト上で何かメッセージを出すべきじゃないかな。『店が大変混雑しております。もう少ししてからご来店ください』とか」

これを聞いたマーケティング担当のテリーズ・スミスは思った。それはおかしいよ、ここはインターネットなんだから、店が混雑するなんてあり得ないでしょう――。この瞬間になってハッと気付いた。ネット上では閉店時間なんてあり得ないのだ!

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